表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅い果実  作者: 酒田青
紅い果実とその他の短い幻想ホラー
11/58

 首が奇妙に右斜めに曲がった犬が、僕の方へ歩いてくる。

 茶色い雑種犬。巻いているはずの尾は、途中で千切れている。

 犬は、首を曲げたまま、僕に笑いかける。口許が痙攣している。めまぐるしく眼球が動く。

 僕は後退りする。

 犬は、笑顔を絶やすことなく僕に歩み寄ってくる。

 僕はまた後退りする。

 首の曲がった犬は、その姿のまま僕に駆け寄ろうとする。

 僕は走り出す。

 全速力で逃げる。犬の笑顔を避けるために。

 その背後から、犬の爪が激しく地面を弾く音が聞こえる。

 息遣いが聞こえる。

 熱い呼吸を足元に感じる。

 僕は、泣きながらスピードを上げる。

 ハアハア、ハアハア、ハアハア。

 犬の息は離れようとしない。

 僕は叫ぶ。助けて、と。

 次の瞬間、道の両脇に並んだ家々から、バタンバタンという音が聞こえる。

 見ると、ドアというドア、窓という窓が次々に閉ざされていく。

 僕は叫ぶ。助けて、と。

 辺りは静まりかえっている。

 ハアハア、ハアハア、ハアハア。

 犬の息遣いだけが、すぐ後ろから聞こえてくる。

 僕は徐々に力つきてゆく。

 筋肉の突っ張りを無理に引き延ばしながら走る。だけどどうしようもなく減速していく。

 僕は悲鳴を上げる。

 犬は、追い付いた。

 犬の曲がった首が僕の右足に延び、よだれの引いた口が僕のふくらはぎに向かって開いてゆく。


 《了》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ