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最終章
「先生、次の患者さんお呼びしてもよろしいですか?」
看護婦が診察室にやって来て言った。丸い黒の回転椅子を見つめていた僕は目を上げた。
「ああ、たのみます」
僕は精神科医。医院を経営している。毎日、僕を頼って患者がやってくる。僕の診察室に来て、黒い回転椅子に座り、僕をじっと見つめ、僕が何を言うのかびくびくとした顔で待っている。
次の患者のカルテをめくる。その後、ふと、後ろの窓に目をやる。今日も、雪がしんしんと、降り積もる。
【付記】
本稿は、トラウマにおける精神力動の変容を記述した学術論文である。と同時に、「執筆」という行為を通じて、筆者自身の内面を解剖し、再構築を試みた、極めて個人的かつ実験的な治療小説である。
本小説が、多くのサイコセラピストないしはトラウマを抱える患者にとっての道標になることを願ってやまない。
【終】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なお、本作はフィクションです。作中の医学的見解や解剖、診断等は、物語の演出上の構成であり、実際の医療現場や医学的根拠とは関係ありません。




