ホラー時々マジホラー
「いやぁ中々怖いな」
「輝嘘は良くないぞ・・・全然怖がってないじゃんか・・・ぎゃぁぁ!」
「浩史はビビりだな・・・」
輝と浩史は2人で放課後の学校の中庭でホラー映画を見ていた。
普段は特撮、アニメ等しか見ない輝だが今回は違う。
輝はホラー映画はたしなむ程度にしか見てはいないというかほとんど見ていないが今回は例外的に少し気になるのがあるので浩史を誘った。
しかし浩史は超がつくほどのビビりだ。
浩史の反応を見るためにも誘ったと言われても嘘とは言えない。
実際面白い反応が沢山出てくる。
2人は仲良く隣り合わせで見ている。
ちなみに沙也希はクラブのため不在。
そのため2人仲良く見ているのだ。
2人ベンチに座り寄り添いながら見ている姿は少しシュールなものもある。
辺りは夕焼けに変わりつつある。
それなのに2人はロマンスの欠片すらないのがすごい。
「あの、何を見ているのですか?」
「ぎゃぁぁー!え、だ、誰?」
「・・・あれ?美神?遅いなぁ帰るのが」
後ろから話されたので浩史は今までにないくらい驚いていた。
その様子に若干美神すらもびくついているのは見て取れた。
美神は輝のスマホをじっと興味ありな顔で見つめている。
「なぁ良かったら見るか?あと浩史・・・手握っとくか?」
「いらんわ!・・・というか誘って大丈夫なのかよ」
「私は大丈夫ですが・・・では途中からですが見せていただきます」
美神の目を見ると少し興味の目をしているのを受け取れたので輝は誘ったのだ。
意外にも余裕そうな顔で答えた。
このことが後々後悔する原因になることとはまだ知らない。
(しまった・・・つい輝が居たから乗ってしまった・・・私ホラー系苦手なのに、でもありたりなものなら余裕で)
ああ言った反面実際は美神はホラー系は苦手だ。
しかし自分の興味を優先させたせいで自ら墓穴を掘ることになる。
見ると言ったので美神は輝の隣に座り見ている。
順番的には浩史→輝→美神といった順だ。
ベンチが3人がけなので見れる技だ。
スマホを持っているのが輝なので自動的に真ん中になるのは普通だろう。
映画は中々良いところまで来ている。
在り来りな演出がこの映画には中々無いので一瞬怖くないなと思っていたがここからどんどん怖さを増していた。
この映画独特の演出が面白さを掻き立てている。
浩史は既に輝の手を固く握っている。
見事に怖いのだろう。
痛いくらい固く握っている。
「あの、浩史・・・痛い」
「怖いんだよ!悪いかー!」
「痛さで怖さの欠片もないんだが」
これは本音だ輝の右側からとてつもなく強く握られると興味は嫌でも隣に行ってしまう。
映画に集中ができない。
左にいる美神は全く怖がっていないように輝は見える。
(やっぱり得意なんだな・・・)
そう輝は思った。
しかし実際は輝の思う逆だった。
(なにこれ・・・在り来りな演出が全くない!怖い・・・怖いよぉ)
本当は泣き叫びたいくらい怖くて仕方ない。
まだギリギリ耐えているが次怖いのが来てしまったら決壊するくらいダムがもろくなっている。
「・・・大丈夫か?顔青いぞ」
輝がそう言うと美神は一気にハッとした様子でびっくりした。
「そんなわけないじゃない!バカ」
「ならさなんで徐々に近づいているんだ・・・熱いっす」
恐怖で知らず知らずのうちに輝の元に近づいていたのだ。
「っー!」
美神は声にならない声を上げ鳴いている。
実際怖いのは図星がつかれたのでああ言ってしまった。
映画も最高潮に達してきている。
それは怖さにも比例している。
独特の雰囲気なため話が全く読めないのが恐怖を煽ってくる。
さすがの輝も少しびくついてしまう場面もでてきた。
(やっと良い場面だな・・・いった!)
隣を見ると最早抱きついているに近い浩史が居た。
輝は片方の空いている手で浩史を離そうとしたが動かない。
「怖いんだが!」
「こっちは痛いんだよ!」
片方に意識いっぱいだが隣に居る美神のことを急に思い出したので見てみると静かに震えている。
「あ、だ、大丈夫か・・・大丈夫じゃないな」
輝は浩史の握っている手を思いっきり離し浩史の握っていた手でスマホを持ち片方の腕で美神を抱き寄せた。
その行動で恐怖でいっぱいだった感情に安堵と羞恥の感情が急にドカンとでてきてきた。
「ビビるくらいなら見ない方が良いんだが聞いたのは俺なんだからちゃんと始末はするよ」
「え、っー!や、やめなさ・・・ごめんやっぱりありがとう」
声はデクレジェンドのように小さくなってきている。
ダムは崩壊し静かに泣いていたのを気づいた輝なりの行動だ。
美神はこう言っている反面実際満更でも無い様子だ。
少し嬉しいと言えば嘘では無い。
「・・・離さないで」
「・・・わかったよ」
その一言で美神を更に抱き寄せた。
見ると美神に聞いたのは紛れもない輝自身なので罪を償うつもりでやった事だ。
しかし美神は別の意味で心臓がはち切れそうだ。
恐怖では無い・・・恋愛的な意味でだ。
「・・・え、う、嘘!聞こえてたの!」
「こんな間近で言われたら気づくわ!」
「っー!う、うぅ」
また声にならない声を上げじっと輝を見つめるしかできない。
その時の浩史は後で聞いた話。
「非常に帰りたい気持ちでいっぱいでしたよバカップル!」
との事だ。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
映画は何とかエピローグまで迎えた。
(これで終わったか)
輝はそう安堵していたが急なホラーシーンが現れさすがにビビった。
「うわ、これは怖いわ」
「ぎゃぁぁぁぁああああ!」
美神が輝に思いっきり脇腹に抱きついた。
さすがに可哀想なので腕を使い離さないように静かに抱きつけるが
急なホラーシーンはさすがに無理は無い。
さっきまで安堵していた気分を一気に壊してくるシーンなので本当に怖がっていた。
腕の中で美神が小刻みにビクッと動いている。
「大丈夫か・・・まぁ悪いのは俺なんだが」
「うぅ、怖い・・・怖いよぉ」
「わかったよ、ほら撫でてやる」
優しく美神の頭を撫でながら落ち着かせていく。
この場面を見られたら普通に何か言われそうだが今はそんなことを言ってる場合では無い。
「あれ、誰か忘れているような・・・浩史!」
「ポ・・・ポ」
ホラーが苦手な浩史はあのシーンで気絶してしまった。
泡を吹きながら倒れている。
「あ、あぁ・・・よしこいつ起こすから先帰っておいてくれ」
浩史の頬を叩きだいぶ無理矢理だが起こそうとしている。
しかし目を覚まさない。
「・・・あの」
「・・・何だ?」
美神がモジモジした様子で聞いてきた。
顔にだいぶ恐怖をしている顔があるので何となくご要望がわかる。
「こ、怖いのよ・・・怖い」
「・・・わかったよ、今日は一緒に帰ってやるから・・・家どの辺りだ?」
今の自分にはこれが限界の償いだ。
「でも少し待っててくれ・・・ちょっとこいつ起こすから校門前に待っててくれ」
「わ、わかったわ」
輝はぽんぽんと頭を叩いたが起きない。
美神は多分まだ時間がかかるだろうと察しがついたので先に校門へ行くことにした。
美神は逃げるように校門前に来たのはいいものの怖い。
いつもなら何もせずにも待てるが今回に関してはホラー映画のトラウマがあるので逃げるように輝がやっているゲームを開いた。
「うぅ、早く来てよぉ〜」
いつもならミスをしないところでもミスをしてしまう。
心做しか指も震えている。
それのせいで精密なプレイが出来ない。
ミスばかりしてしまうので1度ゲームを消しそのゲームの攻略情報に切り替えた。
しかし意識が上手くのめり込めないのでゲームより恐怖がくる。
何か動かさないと怖い。
怖さで校門前に蹲り輝の来るのを静かに待っていた。
時間が遅いので生徒も中々来ない。
いつもの賑やかさを失った校門前は不気味さすら帯びている。
「たーだいまー」
ゆっくりと不気味さを帯びている声で美神の肩を静かに叩いた。
「きゃぁぁぁー!」
甲高い声が辺りに響く。
叩いた瞬間肩が大きく動きあの声が出たようだ。
美神が涙目で後ろをじっと振り向くと輝の姿がある。
「あ、あんた来てくれたの・・・本当に・・・バカー!」
「げふぅー!」
美神の鞄が輝の頭にクリーンヒット。
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下校中ずっと校門前のことについての恨み節を言ってくる。
実際最低なことなので反論が余りできない。
ずっと俯いたまま恨み節を言う姿は少し愛らしさがある。
「本当に最低・・・最低」
「悪かった・・・少しからかいがいがあるからつい」
「うぅ、本当に本当に」
美神は徐々に輝に近づいてきている。
怖さで人の温かさを求めているようだ。
「あの、熱い・・・熱いのだが」
「今日だけは・・・お願い」
「はぁ、わかったよ・・・今日だけな」
2人は仲睦まじく美神の家へ向かっている。
(今も怖いけどこの安心感・・・なんで)
少し輝の安心感にもう少し甘えたい美神であった。
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ちなみに浩史はあの後起こされ帰って行ったようだ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)
浩史を起こしたあとの会話。
「お前・・・まじで」
「わかった・・・ちゃんと埋め合わせはするよ」
「それよりあの氷川さんの顔見たか?」
「さすがに罪悪感が強くて見れないわ」
「確かにな鼻をすする音すら聞こえてたしよっぽどだ」
「ちゃんと氷川さんを甘えさせて上げろよな」
「はい・・・じゃあな」
「そうだな・・・楽しめよ、俺は今日だけは別の門から帰るは」
「お気遣いありがたいや」