ツン時々デレ
「はぁ、なんか行くの嫌だが行くか」
美神の様態が心配なので結局保健室に行く。
多分連れてきた時のことを未だに根に持たれているであろう。
しかしそこまで男は腐っては居ないためここに来ている。
保健室のお見舞いは原則 (I西高校)
保健室の扉を叩く。
名前を言う。
要件を伝える。
それがルールだ。
ルールを守らないほど輝の人間は腐ってはいないのでちゃんとルールを読み
「すみません!1年Y組の橘輝です、氷川美神のお見舞いに来ました」
すると保健室から声が聞こえた。
「あ、あなたが、連れてきた方ですか、今回は特別権力で、あなたの入室を許可・・・します」
声がガラガラで死にかけの動物の鳴き声みたいな声だ。
「大丈夫ですか?先生!」
さすがに心配になる。
しかし保健室に入ると明らかに人で溢れている所がある。
もしかしたらと思い近くまで行くと案の定だ。
「大丈夫ですか氷川さん?」
「怪我してない?」
「我らが氷川さんがー!」
この言葉を聞き美神の事だと瞬時に理解出来た。
もうこれは自分の場面は無いなと思い保健室を去ろうとする際に
「あなた・・・あの人に・・・来て欲しいって・・・言われてましたよ・・・だから・・・居て・・・あ・・・げ、て」
「大丈夫ですか!のど飴買いに行きましょうか?というか死にかけなので!」
その声で美神は輝が居ることを理解したらしい。
自らの優しさが身バレを作る原因になるとは皮肉なものだ。
「輝!来なさい!」
「うわ!あ、はい」
「何よその反応!失礼じゃない」
もう逃げれない。
多分説教だ。
でもここで逃げたら今以上に何されるか全くわからない。
仕方なくベットの仕切りや出入口となってあるカーテンを開け美神の姿を見つけた。
カーテンを開けるのが本当に苦痛で仕方ない。
美神の周りにはたくさんの人がいる。
よっぽど愛されている証拠だ。
心做しか男子が多く感じる。
美神は指を折り戻しを繰り返している。
その行動の意味がわからずじっと見つめていると痺れを切らしたのか
「早く来なさいよ」
「あ、そう言うことね」
「本当にバカね」
とても呆れた様子で輝をじっと見つめている。
簡単なハンドサインすら分からないのはもうバカの末期だと思ってしまう。
「ははは、でご注文はなゃらほい」
と言うと美神は唐突にスマホを見せてきた。
スマホのホーム画面を見ていると一つ見覚えのあるアプリがある。
「あれ?これって」
「最近始めたの・・・良ければキャラが強いか見て欲しい」
「攻略サイトとかあるだろ」
「輝に見てほしいから・・・」
それを聞いた時みんな一瞬時が止まった感覚だ。
その時みんながざわついた。
ほとんど告白まがいなので無理は無い。
「輝に見てほしい?告白じゃないの」
「ちくしょう輝、羨ましいぞ」
「なんであいつなんだよ」
そんな言葉が聞こえるが無視しキャラクターを見た。
見た瞬間キャラのことがわかり説明に行動を移した。
ゲームになると本気になるのはいつもの事だがここまで真剣になるとは美神自身分からなかった。
「・・・まぁ難しいキャラだけど慣れれば強いぞ・・・慣れるまでが大変だが」
「そういうことね・・・だから昨日やられまくったのか」
「というか珍しいな、美神がゲームするってというかするんだ、どういう風の吹き回しだ?」
急に美神の顔が赤くなったのがわかった。
1番聞かれたくないゲームを始めた理由を聞かれる。
不純な理由で初めてしまったことを激しく後悔している。
それを隠しとうそうとしたが顔は正直だ。
煙が出るくらい赤い。
「・・・あなたがやってたからお試し程度にやってみたの」
結局本音を吐露してしまった。
とても恥ずかしいこと限りない。
ブランケットで顔を抑えたいが周りの人に輝が好きだということを自らバラすような真似のためそれもできない。
「このゲームお試しでやるのだいぶ勇気いるぞ・・・まぁ俺はどうでもいいが仲間できた分嬉しいな」
しかし輝は想像のニブ男だった。
全く気にしていない。
むしろ容量の事を気にしている始末だ。
「・・・バカ」
小声で少し不貞腐れた様子で美神は答えた。
自分の気持ちがバレていない安堵かそれとも気づいて欲しい面倒くさい乙女心かは知らない。
その様子にみんな狂喜乱舞している。
その中には元中の人も居るので余計だ。
「ほ、保健室では静かに・・・本日10回目」
「は、はーい」
しかし楽しい時間はあっという間だ。
保健室の時計を見るともう帰らないと行けない時間だ。
「じゃあ行くか」
「そうね」
「そうだな」
みんなが帰っているので輝もどさくさに紛れ帰る作戦に出たが美神にはお見通しなようだ。
「あの、放課後教えてね・・・ゲーム」
その目は少し寂しさを持っている。
ブランケットに包まりじっと見つめる姿は小動物に近いものがある。
「おう、わかった」
なんかR18系の寝盗られにありそうな言葉を言ったせいか周りの男子生徒から。
「恨めしい!恨めしいぞ!」
「なんなんだよあんな!あんな顔するのかよ!」
「あ、あぁ!俺生まれ変わるよ!」
みんなが羨ましいそうに見ているのがとても居心地悪い。
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下校前に美神が教室に戻ってきた。
「輝?今良い」
「別に無理って言っても無理やり来るだろ」
「人聞き悪いことを言わないで・・・ねぇこのキャラの使い方を教えて欲しいのだけど」
「ふぁぁぁあ、OKちょっと見とけよ」
1度あくびをすると美神のスマホを取りゲームを始めだした。
「まず技構成からだな・・・この技はこの対面で使えて・・・技は場面を見極めて・・・なぁさっきからずっと俺の顔を見てる?」
図星だ。
少し教えてる姿がイケメンに見えてしまったのでつい見つめてしまったのだ。
バカとは言えども視線を感じないことは無い。
「そ、そんなことないじゃない!自意識過剰過ぎない!」
「本当かな?」
「本当よこのバカー!」
美神は図星つかれて顔を急速に赤くし顔を隠してしまった。
体を丸めてそれ以降動かない。
その姿は小動物っぽさも兼ね備えているのでめちゃくちゃ可愛い。
何を言っても動かない、完全に拗ねた。
乙女心を全く分からない輝は頭を抱え悩んだがひとつの技を考えた。
「わかった、からかったことは悪い、だから早く上がらないと教えれん」
「・・・バカ」
また小声での呟きだ。
ここで技の発動だ。
輝は美神の顔に近づきじっと見つめた。
ささやかな仕返しのつもりだ。
10数秒くらいたっただろう美神は涙目の顔を上げたらどんどん顔を赤くしだし。
「・・・!?何見てるの!このバカー!」
「お前がやってきたことの仕返しだ・・・悪く思うなよ・・・こっちだって恥ずかしいのはあるんだ」
輝は少し顔が赤い、恥ずかしがっているのだろう。
声も少し心做しか震えている。
「・・・!?」
輝の照れ顔は美神にとっては致命傷を作るくらい破壊力が高い。
「っーーーー!」
声にならない声が聞こえる。
美神からだ。
「そんなに面白いか?俺の顔」
「そんなことないわ・・・寧ろ・・・かっこいいよ」
デクレジェンドがあるのかどんどん声が小さくなってきている。
しかし最後まで全て聞きとれた輝は再度顔を赤くしてしまった。
良く考えるともう夕焼けが出てきている。
美神の照れ顔が夕焼けという最高のトッピングで飾り付けられているので尚直視できない。
「かっこいい、俺のことが・・・」
「っー!ば・・・うぅ・・・でも調子には乗らないで!」
いつもの口癖の「バカ」が出ていない。
多分もう緊張と焦りでのためだろう。
(あいつは俺のこと好きなのか?それとも嫌いなのか・・・どっちなんだよ)
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)