電車時々満員
「はぁはぁはぁ・・・疲れた」
「あらぁそんなに疲れたの?私は元気だよ」
そう言うとミリヤは目の前のコンビニで買ったジュースを飲み干す。
「そりゃ寝てたからだろ!」と叫びたいがもう輝の中には叫べる体力すらないため諦めてミリヤのムードに付き合った。
色々とあったが輝特有の気合いで耐え抜き電車から降りることが出来たのだ。
そのせいか電車を降りて駅内をうろつくと一瞬で体力がなくなった。
こうして今2人は近くのコンビニでジュースを飲んでいる。
「とりあえず・・・快速に乗れば着くんだよな」
「そうよ〜」
「・・・もうそろそろ行かなくちゃみんなに心配かけるし行くか」
「は〜い」
輝はコンビニで買った飲み物を鞄に入れプラットフォームに歩き出した。
駅内人がとても多いため歩くのでさえ精一杯の状況だ。
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「予測はしてたが、人多いな、それも死ぬほど」
輝は快速が出ると聞いているプラットフォームに向かうとそこは人で溢れかえっていた。
この光景に色々な感情がごちゃ混ぜになるがここまで来たら腹を括るしかないとわかったのか輝はプラットフォームに足を踏み込ませた。
その輝に続くかのようにミリヤも歩き出す。
「ミリヤ、気をつけてな」
「は〜い」
少し不安が募っていくが今はミリヤを信じなくてはいけない。
だが輝よりも運動神経等はよく輝が不安なのはミリヤの突発的に起こす行動をしないかの方が不安だ。
「・・・え?」
「・・・はぐれないようにするためだ・・・」
輝はやはりミリヤのことが不安で仕方ないためミリヤの手を掴み前へと進ませた。
しかしもう一つだけ輝にはこの行動を行った意思がある。
どちらかと言うと後者の方が意志的には大きい。
(このままはぐれると俺も寂しいし、何よりミリヤが何があるかが)
そう思いながらミリヤを輝の近くへと近づけた。
「・・・大丈夫か?」
「・・・あらやだぁ・・・輝ちゃんったらイケメン・・・」
ミリヤの顔を見ると明らかに今までの余裕が嘘みたいな表情だ。
今までの輝では起こさない行動を輝自身の手で起こしたことによりミリヤはドキドキがいっぱい。
「とりあえず、これで学校に行けるから・・・あとは来るまで」
「・・・うん」
いつもの余裕のあるミリヤは今ここにいない。
いるのは乙女な顔をして顔を赤くしているミリヤだけだ。
(突発的に起こしたのは俺のほうか・・・やっちまったな)
改めて自分の愚かさを知る良いきっかけとなった。
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学校に着く頃にはもう二限となっていた。
輝は遅刻した時に貰う紙を今授業の担当をしている先生に渡しいつも通り席へと行った。
「あらあら、今回は長い寝坊なのね」
美神がニヤニヤした顔で見ている。
しかし今の輝には正当な理由があるおかげで精神的にかなり強くなっているのだ。
「ちげぇよ・・・ほらこれが理由だ」
「・・・遅延なのな・・・それもかなり大きめの」
輝が遅延証を美神に突き出すと少し悔しそうな顔をして美神を見て心底気持ちよくなった。
(我ながらだが性格悪いな)
遅延証を見ると美神はまた机の方へ向き直し授業に身を預けた。
オンオフをきちんとしているのは見ていてすごいと言うしかないと輝はこのとき思ってしまった。
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二限が無事終わりみんな各々次の用意をしたり仮眠をとったりと独自の休み時間を過ごしている。
輝の休み時間は・・・
「ひっかりー!まーた遅刻なの?」
「だから遅延だって!」
輝の周りにはいつものごとく要、沙也希、浩史が集まってきた。
「まぁ輝の乗っている線って結構運休多いしまぁしょうがないのかな」
「それでも多いだろ輝の遅刻は」
「うるせ、まぁでも運休は確かに多い」
輝の乗る線はかなり人が乗ったりしているためもあるのか運休率もそれなりに高い。
だが高校生活初めての運休ということは墓場まで持っていく話にしようとこの場で決まった。
「まぁ災難だったな」
バシンバシンと輝の背中を浩史は叩きながら笑っている。
「ねぇねぇ輝聞いてよ・・・美神輝がなかなか来なくてしんぱ・・・うゴゴゴゴゴ」
「馴染さん・・・この話は他言無用と」
「ごめんなさいごめんなさい、だからこのぐりぐりをやめてー」
要のお腹に美神が手をぐりぐりと動かしている。
多分この攻撃を受けると考えたら痛みで考えたくなってきた。
「・・・まぁ美神が友達として接せれる人が増えただけ俺は良いけど」
「いててて、まぁ私もこうして話せれる人は友達だと思うよ」
要はぐりぐりされたお腹を優しく撫でながらそう答えた。
美神は輝と要の一言が未だよくわかっていないらしくぽかんとした表情を浮かべている。
だが数秒経てばやっとどんなことだったかわかったらしいような反応をしだした。
「ま、まぁ私も馴染さんとは友達になりたいです」
「うふふ・・・なら私達もついに友達ね!美神さんよろしく、そしてここにいる男子二人も良いやつだからなかよくしてあげてね」
要は話の主導権を半強制的に沙也希と浩史に与えた。
沙也希は女性恐怖症そのためかさっきから何一つ話していない、浩史は女性との触れ合いをしていないためキョドる。
「・・・よ、よろしく・・・ね」
案の定ながら沙也希はとてもビクビクしている。
その様子に美神は少し少し申し訳なさそうな顔をしている。
「あははは、よろしく美神様」
「様付けはやめて欲しいわ」
「・・・すみません」
浩史は緊張がピークに迎えたのかいつも輝たちと話す時の雰囲気が出てしまった。
そのせいで美神を裏で様呼びしていることがバレてしまい浩史は死んだ魚のような目をしてぼーっと立っている。
「まぁ左から浩史、沙也希といった順、悪い奴らではない、多分」
輝は輝なりの努力のため何とかあのまま続くと浩史の精神が崩壊する話を無理やり変えた。
美神は小さく頷ききっと了承したのだろう。
休み時間はあっという間だ。
気づいたら次の授業のチャイムなっていたのでみんな各々の席へと向かった。
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輝はスマホに保存している生徒会の予定表を見た。
こういう時クラブのように紙で簡単にまとめられている予定表なのがありがたい。
「・・・あぁ今日ある感じか」
そう小さい声で呟き鞄を持ち歩き出そうとすると美神が話しかけに来た。
「肩書きナシなのによく行くわね」
「私なら絶対に行かないわ」と付け足して話すと輝は軽いため息をして
「まぁ俺は重い肩書きはいらないし単純に美神が心配だからだよ」
「そういうものなね・・・まぁ別にとやかく言うことはしないけど」
そう言うと美神も生徒会室に向かう用意を始めた。
「なら俺は先行っておくよ」
「あら、わかったわ・・・じゃあまた生徒会室で」
輝はそう言うと教室を出ようとした。
だが思わぬ来訪者が来てしまったのだ。
トランプで言うところのジョーカーだろう。
「輝ちゃーん、なかなか来ないから迎えに来たわよ〜」
「ミリヤー!」
突然のミリヤの来訪に輝はビビってしまった。
美神は輝に対してかなりの独占欲があると思うので(輝の感覚)かなりやばい。
「え、輝とミリヤさんってこんなに仲良かったの?」
「あ、あぁこれは・・・その」
言い訳を考えているせいかあきらかに怪しい話し方になってしまった。
「だって私たち家隣同士だもの」
「え?」
「なんなら今日も2人で一緒に行ったし」
ミリヤの暴露のせいで美神の顔がどんどんなにか腑に落ちない顔に変わりつつある。
どんどんその様子に輝は汗が止まらない。
悪いことはしていないのに汗が止まらない。
「・・・あぁ・・・まぁミリヤの言っていることは全て・・・事実です、はい」
「へぇー」
美神の後ろを見ると烈火のごとく燃えている。
その煉獄は美神の今の感情だろう。
「じゃ、じゃあ先行って起きますね、美神さん」
輝はさっきの殺気のせいか変に敬語になってしまった。
ミリヤは笑顔で手を振り余計美神の闘争本能?に油を注いでしまうような行動を行った。
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この事のせいか帰るまで少し美神との距離がいつもより近いような気がしてしまったのは言うまでもない。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・`)