マグロ丼クエスト
とにかく俺はマグロ丼が食べたい!!
俺の名前はふじわらしのぶ、マグロ丼が食べたくなった冒険者だ。
俺は何故かマグロ丼が激烈に食べたくなったので冒険者になった。
待っていろ、マグロ丼。絶対に食べてやるからな。
俺は得意の武器・百鬼斬首刀を片手にギルドに入る。
「あのー、ご職業は?」
受付のお姉さんに声をかけられた。
わかっている。お前も食べたいんだな、マグロ丼が。
「剣闘士だ。ここに来ればマグロ丼が食べられると聞いた。マグロ丼はどこだ?」
俺はイレーヌという名前のギルドの職員に食堂へ案内された。
冒険者ギルドの食堂は一階の奥にあった。よく見ると別の経営者がやっている食堂で、ギルド長と話合いをしてギルドの関係者が優先的に使っている施設らしい。
イレーヌから聞いた話だった。食堂には浅黒い肌のおっさんと同じくらいの年齢の女性が額から汗を流しながらは働いていた。
「ええと。マグロ丼でしたら多分、ここで食べられると思いますよ」
「ふむ。ではマグロ丼を食べるとするか。イレーヌよ、お前も一緒にどうだ。おごるぞ?」
俺は心が広い男だったのでイレーヌにマグロ丼をおごってやろうと思った。
「それじゃ、ごちになりまーす!」
俺は券売機で二枚、マグロ丼の食券を購入した。それから二十分後、マグロ丼が出てきた。マグロの色は醤油の色がついた赤、漬けマグロというヤツだ。俺はワサビを全体に乗せながらどんぶりを駆け込んだ。
もぐもぐもぐ。
「美味い!やはりマグロ丼は最高だ!」
俺はマグロ丼を完食した後、イレーヌに別れを告げて家に帰った。
「ふうう…。マグロ丼、美味かったな。でも家ですぐに作れるような食べ物を外で食べる必要があったのか?」
俺はその日、おでんを食べた後におでんの汁をご飯にぶっかけておでん飯にして食べてから寝た。
次の日、俺は引き寄せられるかのように冒険者ギルドに向った。
目的はもちろんマグロ丼、もう俺はマグロ丼無しでは生きてはいけない身体になっていたのだ。
俺はまた食券を買ってカウンターに手渡す。
「おや、今日もマグロ丼かい?」
「ここのマグロ丼は最高だからな。今日はご飯増量のチケットも持ってきた」
俺は店主にご飯増量券を渡す。店主は大盛りのご飯の上にさらにご飯を乗っけてくれた。
マグロの増量を注文しないのが俺のセオリー、漬けマグロ六枚で俺は飯の大海原を抜ける。
ばくばくばく…抜けた!
俺はお茶を飲んだ後、店を出た。マグロを食った後はどうしてこんなに気分が最高なんだ!?
俺は家に帰る前に魚屋さんに行ってマグロの刺身が無いか確かめた。
狙いは赤身の切り落とし、トロは要らない。なぜならばマイ・フェイバリッド・マグロ丼とは赤身のみのマグロ丼だからだ。
「親父、マグロはあるか?」
「またマグロ丼ですかい?しのぶさんも好きですね…」
俺はマグロの刺身を買って早々に家に帰った。
マグロに限らず生魚とは腐りやすい。俺は刺身のサクを筋に沿って削ぎ切りにすると漬け汁にいれる。
醤油とみりんと酒を2・1・1の割合で煮て作った物だ。
「マグロ丼タイムまで時間がある。少し休むか」
俺はマグロ丼の具が完成するまで寝る事にした。
起床。俺は温かいご飯の上にマグロを乗せて一気にかっこむ、もぐもぐもぐ、うまうま。やはりマグロ丼は美味い。もはや至高メニューに仲間入りは確定だろう。俺は満足して寝た。
次の日、俺の住む城塞都市ツナシティに傭兵団が攻めてきた。
「我が名はイソノ・カツオ!この都市にある秘宝”ウミヘイとナミヘイのBL像”は我らが一族の宝だ。命が惜しければすぐに持って来い!」
その時、ギルドのメンバーは地下から出てきた悪魔と戦っていたので誰も出て行けなかった。
俺はギルドにマグロ丼を食べに行くだけの男だったので当然、この事件に関与するつもりはない。
「しのぶ、お前だけが頼りだ。年間ご飯増量パスポートをつけるからよ!」
食堂の主人が俺に手製のパスを渡した。
俺が金子で動くような男とでも?
「行く」
俺は自慢の柳葉刀”百鬼斬首刀”を担いでカツオの前に現れた。
「カツオ、宿題は終わったのか?サザエに密告するぞ?」
ザンッ!俺は柳葉刀を地面に立てる。
「クッ!姉さんの名前を出せば俺が引き下がるとでも?」
サザエの名前を出されたカツオは露骨に怯えていた。
「そんな事より俺と共にマグロ丼を食おうぜ!」
「しのぶ…ッ!」
俺はカツオの仲間たちと一緒に食堂に向った。
「親父、今日は奮発してたくわん入りのマグロ丼だ。こいつらにも食わせてやってくれ」
親父はすぐにマグロと細切りにしたたくわんを白米の上に乗せて出してくれた。
「美味い!ただたくわんを乗せただけなのに!何でこんなに美味いんだ、しのぶ!」
カツオとタラオとイクラは花が咲いたような笑顔でたくわんマグロ丼をかけこんでいる。
「たくわんにはマグロの生臭さを抑え、醤油ダレを美味しくする力があるからな。こうしてごま油を垂らしたり、柚子胡椒で味変すればいくらでも食えるぜ!」
俺はカツオたちにナミヘイとウミヘイが抱き合っている像を返した。
「すまん、しのぶ。俺たちが間違っていた。何か礼をさせてくれ!」
カツオたちはその場で土下座をする。
やれやれそういうつもりでマグロ丼を食わせてやったつもりじゃないんだけどな…。
俺はこいつらをどう説得して帰ってもらうかと考えているとダンジョンの入り口から多数のけが人が出てきた。
「しのぶ、大変だ!悪魔たちが攻めて来るぞ!!今すぐ住人たちを避難…しのぶ?」
俺は百鬼斬首刀を片手にダンジョンに入り口に向かう。
「フン。食後の運動にはちょうどいいぜ」
「しのぶ、俺たちイソノ族も共に戦うぜ!」
カツオは戦斧を手に胸を叩く。
「しのぶ、今晩はウチでマグロ丼パーティーだ。生きて帰って来いよ!」
食堂の店主夫婦も俺を応援してくれている。俺は鼻から息を吐きながらダンジョンの中に入った。
「地獄の悪魔どもめ、マグロ丼の美味しさを教えてやるからな!」
かくして俺は悪魔たちとの戦いに勝利し、マグロ丼を食べてから寝た。