歴史の裏側 つきあい
「もうあの国とのつきあいもこれで5年になりますね」
「ええ、昔はこんな事は予想できませんでした」
私は、知り合いと話をしながら思いをはせる。
数年前、魔術大国である我が国は小さな隣国と同盟を結んだ。
なぜなら、敵対してもとても敵わないと思ったからだ。
だって、どんなに小細工して内側から国を壊そうとしても、すぐ見破られるのだ。
スパイを送っても、数時間後には送り返される。
旅人の荷物に爆弾をまぎれこませても、数時間後には解体されて送り返される。
悪評を流そうと思ったら、そうする前にその企みを暴露されていた。
調査して証拠を集めたとかそういうなまぬるい感じではない。
予知夢でも見たかという速度で対処されてしまった。
恐ろしくなった我が国は、敵対し続ける事ができなくなってしまったのだ。
「いまだに不思議だが、一体どんな手を使って我が国の行動を予測していたのだろうな」
「まるで想像つきませんね」
「もうあの国とのつきあいもこれで5年になるな」
「ええ、昔はこんな事は予想できませんでしたよ」
「そうか、普通はそうだよな」
もう、この国とあの国が敵対関係になる事はないだろうか。
隣国の交流が本格化して数年、俺はほっとした。
スパイを送り込んできたり、爆弾を送り込んできたり、色々してくれたが、全て対処する事が出来た。
それもこれも、俺の特殊能力のおかげだな。
なぜか死んだら過去に戻るという力があったから、その力をつかって、様々な事に対処してきたのだ。
あの国の要人達は、さぞ不思議がっているだろう。
しかし手の内をさらす馬鹿はいないさ。
もうあと数年、国と国の関係がもっと強固になるまでは、この力が必要になるかもしれないのだから。
「魔石の輸出について話し合いをしなければなりませんね」
「魔術触媒の輸入もな。貿易担当の方は、毎日忙しいな」