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第2話 予想外

「師匠!! 今日もお願いします!!」


 あれ? どこかで間違った?


 何でヴァロンに師匠扱いされてるんだろう。

 おかしいな。

 普通嫌うと思うんだけど。


 私が人生で得た教訓その一、男は女に負けることを異常に嫌う。


 剣道をしていた時、そこそこ才能のあった私はやる気のない男子くらいなら瞬殺できた。

 大体、その後、よほど悔しかったのか、私を嫌い嫌がらせをしてきたのだ。

 実力では勝てないので、陰湿な嫌がらせである。

 今思い出してもムカつくので、細かく思い出すのはやめておこう。


 とにかくその教訓を考えると、王子は私を蛇蝎のごとく嫌わないとおかしいと思うんだけど。


 それがなぜ師匠扱い? 

 おかしいでしょ。

 婚約者が子弟関係ってどう言うことなのよ。


「わたくしはあなたみたいな雑魚の師匠ではありませんわ。なぶるのにちょうどいい相手だから、戦ってやっているにすぎません。勘違いしないでください」


 私的には絶対に嫌われるであろう、憎たらしいセリフを口にしたが、


「分かっています……まだ僕では師匠の弟子になる資格はありません。しかし、もっと強くなって師匠を超え、婚約者として相応しい男になってみせます!!」


 そんな男らしいセリフを男らしい表情で言うものだから、不覚にも一瞬だけドキッとしてしまった。


 待て待て、相手はまだ10歳の子供。

 何ドキッとしてんのよ。


 ヴァロンって最初はヘタレで長所も少ないんだけど、主人公と触れ合うことで徐々に男らしくなっていって、そのギャップが凄い魅力的なキャラ。

 そんなところが今出てたかもしれない。


 ……出ちゃダメでしょ。

 それは主人公との関わりで出すものだから。

 何で悪役令嬢の私との関わりで、隠された一面出しちゃってんのよ。


 まずい。

 悪役は主要な登場人物に嫌われてこそ悪役。


 このままヴァロンに好かれるなどもってのほか。


 もっと嫌われるために虐げる!



 2年後……


「やったー! ようやく師匠から一本取れました!」


 とヴァロンは私から一勝して無邪気にはしゃいでいた。

 この二年間彼は必死に練習し、凄く成長した。

 弟子の成長を見て、私の胸には感動する気持ちが湧き上がり、思わず目から涙が……


 流れてくるかっー!!


 私は悪役令嬢! ヒーローを強くして感動はしない。


「師匠! やりましたよ! 僕強くなりましたよね!」


 笑顔でそう尋ねてくるヴァロン。


 そしてヴァロンが私を嫌っている様子は微塵も見えない。

 日に日に懐かれているような感じすらする。

 どういうこと? 罵倒なんて何回したか覚えてないくらいしてるのに。


 ドMなのヴァロンって? 

 いや、そんなキャラ設定なかったと思うけどなぁ……


「女子であるわたくしに、一回まぐれで勝ったぐらいで満足ですか? 随分と目標意識が低いのですね。そんなんだからあなたはダメなのです」


 というと、流石に褒めてくれるのを期待していたのか、ヴァロンはシュンとしていた。


 ぐ、す、凄く可哀想だ……

 で、でも駄目、私は悪役令嬢……心を鬼にしないと……でも……


「ま、まあでも頑張りは認めますわ」


 思わずそんなことを言いながら、ヴァロンの頭を撫でてしまった。

 ヴァロンはパーッと太陽のような可愛い笑顔をうかべた。


「はい、もっと頑張ります!」


 し、しまった。かわいそ過ぎて思わず褒めてしまった。


 今のは悪役としてあるまじき行為だった……は、反省せねば。


 その日は徹底的になぶったけど、ヴァロンはずっと嬉しそうだった。やっぱりこいつはマゾなのかもしれない。



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