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第四十二話(アンナ視点)

 困りましたね。  

 まさか、ミリム様の身代わりとしてシャルロット様とアルフレート殿下の挙式に出席することになるとは。

 いくら主の命令とはいえ、バレたらタダでは済まないでしょう。

 

 エルムハルト様はまだ15歳になられたばかり。

 公爵家の跡取りになったことで一種の万能感に酔いしれたのでしょう。

 ミリム様の人となりも分からずに、自分なら出来ると信じていたのですから。

 

 その結果がこれです。

 ミリム様は私の着ていた服を着せられて、馬車で眠っております。

 起きても馬車から出ないように手紙を残したとエルムハルト様は仰っていましたが、嫌な予感しかしませんよ。


 ミリム様が間違ってこちらに来られたら全てが終わりなのですから、私は両手両足を縛って拘束しておくようにと進言したのですが、エルムハルト様ったら、「ミリムさんの美しい体が傷付いたらどうするのですか?」と言って聞いてくれませんでした。


 こうなったら、彼女が起きないことを祈るばかりです。   



「おや、公爵家はリーンハルトくんが跡取りではなかったのかね(通訳)」


「どうもお騒がせしてすみません。兄は我が家を継ぐには不適格だと判断されたものですから」


 結婚式に出席する公爵家と縁があるアルビニア王国の有力者たちに、エルムハルト様は得意のスマイルを見せながら丁寧に応対していました。


「こちらの仮面の子が君の婚約者かね? 大層な美人さんだったが、悲惨な事故に遭ったと聞いたよ(通訳)」


「ええ、それはもう、酷い有様でして。ただ、姉の結婚式にどうしても出席したいと言うものですから。私も何とかお優しいアルフレート殿下のお許しを頂いた限りでして」

 

 ペラペラと嘘を並べるエルムハルト様。通訳を通じての会話ですから、饒舌になっても問題はないのですが……。


 案外、仮面での出席に対して嫌な顔を見せる者が居なかったのは、事前にアルフレート殿下が周知してくださったからでしょうか。


 エルムハルト様は笑顔で話しながら、私に小声で「アルビニア語で挨拶とスピーチをする」ように要求しました。

 この場にミリムの声を知る者が居ないからなのでしょうが、どうにもリスクが高い気がします。


 ……はいはい。わかりましたよ。


「わたくしはエルムハルト様の婚約者、ミリム・アーゼルです。今日という晴れの日をこのような形で出席しなくてはならない不運を嘆いていました。……しかし、そんなことは姉が幸せになることと比べると些事です。大変、見苦しい格好とは存じますが、お集まり頂いた皆様に姉に代わって感謝の気持ちをお伝え申し上げます(アルビニア語)」


 なんとなくミリム様の声色に寄せて付け焼き刃のアルビニア語でスピーチをする私。

 まったく、エルムハルト様は無茶ぶりをなさる。

 ご自分は片言レベルなのにも関わらず、なんの見栄を張りたいのか、発音まで気をつけろとは……。

 

 いや、拍手とか良いですから。本来、目立ってはいけないポジションなのですから。

 エルムハルト様も得意気な顔をしないでください。ピンチなんですよ、今……。


「いやー、驚いたぞ。()()の婚約者が才女だとは聞いていたが、妹もなかなかどうして優秀じゃないか(アルビニア語)」


 あー、あー、私の語学力が間違っていて欲しいです。

 今、目の前の金髪碧眼さんは、()()って仰っていませんでした?

 アルビニア国王の子は三人、長男のアルフレート殿下、長女のアイリーン殿下、そして次男のアウレール殿下。

 ということは、この方はアルフレート殿下の弟――


「「アウレール殿下!」」


 私の挨拶を聞いて、拍手をしながら近付いて来られたのはアルビニア王国の第二王子、アウレール殿下でした。

 これは良くない展開です。よりによって王子様が私に興味を持たれるとは。

 対応を間違えると面倒なことが起こってしまいそうです。


「これから親戚になるんだ。どうだい? エルムハルトさんもミリムさんも、式まで時間があるし、ちょっと話さないか? エゼルスタ王国の話を聞かせてくれよ(通訳)」


 エルムハルト様、断るのです。

 理由は何でも良いので、断りなさい。

 変に目立ってしまうと嘘がバレるリスクが――


「ぜひお話させてください。公爵家の跡取りとして、殿下と交流させて頂きます」


 これは、駄目ですね。完全に跡取りモードになって浮かれています……。

 再就職を心配するどころではなくなってきました――。

アンナ、逃げてーっていう回でした。


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