第三十三話
調子に乗って連投していたら、ストックが心許なくなってしまいましたので、一日2回投稿に頻度を減らします。
次の更新は12時です。
アルビニア王国に着いて数日、私とアルフレート殿下は各方面に挨拶に周り、結婚式の準備もするというハードスケジュールに追われていました。
幸いなことに、国王陛下も王妃陛下も私のことを気に入って下さり、良い娘が出来て嬉しいと仰せになられましたので、一番不安だった点は解消されています。
この先も上手くやっていければ良いのですが――。
「……という訳でエルムハルトくんがどうしても、と熱望しているらしく父上にも根回しをして彼とミリムに招待状を出すことになった」
「――っ!? そ、そうですか。それはなんとも……」
驚きました。
修道院に送られていたはずのミリムをエルムハルト様は呼び戻してまで私たちの結婚式に出席しようとするなんて。
あのとき、会ったときの様子ではミリムと結婚することはあっても私たちどころか両親とも引き離したいと言っていましたのに。
「まぁ、彼には彼の事情があるんだろう。たったの数日であの娘を何とか出来るとは思えんが……」
エルムハルト様の事情。
リーンハルト様に代わって公爵家の嫡男になられたと聞きましたが、それと何か関係があるのでしょうか。
公爵家としては隣国の王族とも仲を深めたいと思うのは自然かもしれないですが。
「それでも、もしものことがあれば――」
「そうだね。公爵家とは縁を切るどころじゃ、済ませられない。無理やり出席したいとゴネたのだ。遅刻と無礼だけは許さない。これは僕だけの意見じゃないよ。アルビニア王国の威信も関係しているからね」
アルフレート殿下の言わんとしていることは分かります。
国として、エゼルスタ王国と対等な付き合いをしていこうと思っているからこそ、侮辱や不敬に対しては厳しくせねばならないのです。
寛容さも大事ですが、今回の件はわざわざ招待状をねだっていますから――結婚式を台無しにすればその罪は大きくなるでしょう。
「まぁ、僕たち以上に戦々恐々としているのは君の両親かな? ミリムにあんな教育を施しておきながら、関係ないという話には出来ないし。それを避けるためにわざわざ修道院に彼女を送ったのだし」
「そうかもしれませんね。父も予想外だったでしょう。エルムハルト様が彼女を連れ戻しに行くなんて考えていなかったはずですから」
両親については言わずもがな。今回の件で胃が痛くなっているでしょう。
そもそも、奔放な方が良いとミリムに何の教育もしなかったことが発端なのですから、一番二人の罪が重いと殿下は思われているのですから。
「素敵な式にしたいと準備しているところに、こんな話を出してしまってごめん。取り敢えず、憲兵たちを君の妹とエルムハルトの近くに配置しておこう。何かあったら、迅速に動けるように」
厳戒態勢を敷くというアルフレート殿下。
ミリムを躾けると自信満々だったエルムハルト様ですが、大丈夫なのでしょうか。
もしかしたら、私たちの心配が杞憂になるかも――と考えようとしたのですが、妹との日々の思い出がそれを邪魔しました。
「そういえば、この国の生活にはもう慣れたかい? いや、君は順応力も高くて言葉もこの国にずっと住んでる人と変わらないくらい流暢だから、あまりにも馴染み過ぎて見えるからね。逆に心配なんだよ。無理をしていないのか」
不穏な空気を察知されたのか、アルフレート殿下は話題を変えられます。
私がアルビニア王国の空気に慣れたかどうか、気を遣われているみたいですが……。
「正直に申しますと慣れているのかどうか分かりません。式まで日にちがないので、その準備に追われていて……、そのことで手一杯ですから。冷静に自分の状態を見直せないというか」
アルビニア王国に来てすぐに、両陛下にご挨拶して、そこから毎日のように王家と縁の深い貴族の方々が挨拶に来られて、対応していましたので、余計なことを考えることが出来ませんでした。
「やっぱり君は凄いなぁ。普通は疲れた顔を見せるものだけど、涼しい顔をしながら自分を見つめ直そうとするんだもの。新しい環境で」
「そんな大層なことではありませんよ」
「いや、僕は君が王太子妃になってくれることが嬉しいよ。理想の女性なんているとは思わなかったから。……付いてきてくれてありがとう」
手を握りながら、ジッと透き通った瞳で私のことを見つめるアルフレート殿下。
私の方こそお礼を申し上げたいのに……。
連れてきてくれてありがとう、と――。
シャルロットは幸せに向かって前進しています。
無事に結婚式を終えられると良いのですが……。
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