第5話 〜おじ様からの試練〜
「ふぁぁ〜」朝だ。時計を見ると7時を指していた。まだレンとまーくんは寝ている。私はグッと体を伸ばし、一呼吸おいた。朝食の準備をしなければ。昨日まーくんが大量の食材を窃盗してきたから材料は十分にある。朝は軽めに食べやすく、栄養のあるものにしなければ。地球の食材は私たちの故郷のものとほぼ同じだった。ロイドプラネットの食材は全然違うものだが、あの惑星の食べ物はどれも美味しかったなぁ。地球の食材はどんな味がするのか。見た目が私の知っているものと同じだったため、同じように調理することにした。まずはサラダを作ろう。野菜を洗ってからキャベツを千切りにしてレタスを食べやすい大きさに分ける。「あれ?」ミニトマトを使おうとしたが無い。まーくんが準備し忘れたのかな?まぁないなら仕方ない。朝食の準備が終わる頃に、レンとまーくんが起きてきた。「おはよー!」私は元気よく挨拶する。「おはよ〜」2人はまだ眠そうに返事を返した。「朝食今できたわよ。」私はテーブルに料理を置いて席に着いた。「おぉ!こんな健康的な朝食何年ぶりだろう。」まーくんが感動したように話す。「リン料理できたんだね。」レンがキョトンとした表情で言ったので私は自慢げに返した。「当たり前でしょ?私を誰だと思ってるの!」朝食を済ませ、一段落着いた後に私たちは今日の予定について話し合った。「今日は地球の街並みを見てみたいわ!まーくん!案内して頂戴!」私は目を輝かせてまーくんの方を見たが彼は不服そうな顔をしていた。「俺外のこと知らないんだけど…それにめんどくさいし外出だるい。」「引きこもりはやめなさい!今日は絶対外を冒険するわよ!」私は無理矢理まーくんを外へ連れ出すことにした。「ははは…」レンの静かな笑い声を背に、玄関の扉を開ける。ガチャ。「眩しい!」咄嗟にまーくんが目をつぶる。「光に慣れて無さすぎでしょ!そもそも昨日も出たでしょ!」いちいち突っ込んでたら持たないかもしれない。私はある程度のことは流すことにして歩き出した。
「オススメのお店とかある?」「知らん。」即答された。まぁ外に出てないから当たり前か。とりあえず色んな店をまわってみよう。私たちは近くにあったお店に入った。コンビニやゲームセンター。スーパーマーケットや飲食店。私が知らないようなお店も沢山あった。「すごいわ!地球って色んなものがあるのね!」「そう?こんなものじゃない?」「他の惑星からしたらここは夢の惑星よ!」「そんなか。」「えぇ!」まーくんとそんな会話をしながら歩道を歩いていると、前の方で人だかりができていた。「どうしたんだろう?」レンが真っ先駆け寄る。私とまーくんもすぐに後を追った。ザワザワ。「なんだこれ…?」レンや周囲の人間たちがそう呟いている。私が身を乗り出して見ると、そこには緑色のネバネバとしたスライムのようなものが地面をゆっくりと這いずっていた。「えっ?生きてるの?」私が口を開いた瞬間、そのスライムは私の顔を目掛けて飛んできた。「キャーーー!」私も周囲の人たちもパニックになる。私は顔にくっついたスライムを無理矢理剥がして地面に叩きつけた。「なんなのよ!もう。」周囲には私とレンとまーくんしか残っておらず、不穏な雰囲気が漂った。「すごい…新種の生物か?それとも突然変異…」まーくんがブツブツと何か言ってるが私は先程顔面にベトベトした物体が引っ付いたことで少し不機嫌だったのでスライムに対して怒鳴りつけた。「なんなのよあなたは!どういうつもり?!」「いやいやこんなのに話が通じるわけ━━━」レンが呆れたようにスライムに近ずいたら突然、スライムの中から小型の機械が飛び出してきた。突如に正面にホログラムが流れる。「やぁ、リン、レン。順調に進んでいるかね?」そこに映ったのはおじ様だった。「おや、どうやら聖尊を味方につけたみたいじゃな。」「あんたがプランクトンって人か、色々聞きたいことがある。まずなんで俺の事を━━━」まーくんの話を遮るようにおじ様は話した。「君のことは調査済みじゃ。詳しいことはいえないがのぉ、退屈はさせんから、とりあえず付き合っておくれ。」「…」まーくんは不満そうな顔をして黙り込んだ。「ところでじいちゃん、一体どうしたの?」「そうじゃったそうじゃった。実はのぉ〜お前たちが心配でのぉ〜ちゃんとやっていけてるか確認しに来たんじゃ。ろくに準備もせずに旅立たせてしまったからのぉ。困っておるじゃろ?」おじ様はにっこりした笑顔で尋ねた。「まぁ何とかやってるわ。」「それなら良かった。それでな、わしからプレゼントがあるんじゃ。」「プレゼント?」「あぁ。わしの試作品を定期的に送り込む。地球を荒らす程度の戦力しかならんとおもうが有効活用してくれ。もしお金や資源に困ったら、倒しても構わん。ゲームのようにアイテムが出てくるぞい。試しにそこのスライムを倒してみぃ。」私は半信半疑で電撃をスライムに放った。ズギャン!すると、スライムは地理になり、お金がその場に散らばった。「すげー!!」それを見たまーくんとレンが大喜びしていた。男子はすぐこういうのにハマってしまう…。そう呆れているとおじ様が追加の説明をしてくれた。「わしもゲームが好きでなぁ。ただ資源を渡すのもつまらないと思って、RPG形式にしてみたんじゃ。まずはな、わしが送った試作品を地球で暴れさせる。そして逃げ惑う地球人にお前たちが救いに手を差し伸べる。お前たちを信頼して無防備になった所を一気に潰す。なんて戦略もいいのではないか?」私は疑問に思った。おじ様の技術力なら地球を壊すだなんて造作もないこと。わざわざこんなまわりくどい方法でやる意味なんて…それに地球は壊さないと決めたんだ。でもそれを言い出す勇気はなかった。「それではな、わしは失礼するぞ。頑張りたまえ。」おじ様が喋り終わった途端、小型の機械は破裂し、その直後に上空から大量のスライムが降ってきた。ベチャベチャベチャベチャ!「ひぃぃ〜!」レンは悲鳴をあげた。私もこの状況に困惑している。「やるしか…ないわね。」私は気持ちを入れ替えて戦闘態勢に入った。ズガーン!いつものように放った電撃は、少し威力が高かったような気がしたが、次々と敵が襲いかかって来たため、気にしないことにした。「くらえぇ!」ボワァン!レンは飛び上がって上空から火の玉を放つ。周囲のスライムたちが一瞬で塵となった。フワッ。まーくんが大きめの岩を浮遊させてスライム目掛けて投げる。ドゴォン。「やるじゃない!」私も負けてられたいと電撃を連続で放った。ズガガガガン!「うわっ!」レンの顔にスライムが張り付いた。どうしよう。攻撃してしまったらレンまで巻き添えを食らってしまう。「任せて!」まーくんは力を込めて念力をスライムに使った。自然とレンの顔からスライムが剥がれてそのまま地面に叩きつけられた。ビチャ!「ありがとう。助かったよぉ…」残りのスライムは一体だ、勢いよく飛びかかってきた。「甘いわね!」ズバン!私はタイミングを合わせて電気ショックを与えた。スライムはその場でビリビリと痺れた後に塵と化した。「ふぅ…」初の実践だったが何とか上手く立ち回れた。不慣れな部分が見え見えだったが初戦だから仕方ないよね。「これ全部現金か!」まーくんが颯爽と地面の硬貨に駆け寄る。よく見ると百円玉や五百円玉が大量に散らばっていた。流石おじ様だ。こんなこと出来るのはおじ様くらいしかいないだろう。ありがたく全てのお金を回収して、家に帰ることにした。
「いやぁ。一時はどうなるかと思ったよ。」レンは椅子にどっかりと座って安堵の息を漏らす。「早速私たちの活動の価値が出てきたわね。」「でも疲れたよぉ。」まーくんは外に出てなかったからか、大分ぐったりしている。まぁ仕方の無いことだろう。私はまだ元気があったので、夕食の準備に取り掛かることにした。その日は賑やかに食事をして夜を過ごした。おじ様からの試練を乗り越えながら上手く地球で生活していく。地球壊すつもりがないことはおじ様にはまだ言えそうにない。仲間を全員集めるまでは潜伏期間だそうだから、今は地球ライフを満喫することにした。今日はよく眠れるだろう。