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桜 変わった自分と変わらない真実
「鈴木くんだっけ?離してくれないかな。」
「鈴木くんってお前、ふざけてんのか!?」
「えーと俺、記憶喪失みたいで、高校生の記憶なくなっちゃったんだ。」
相手はとても動揺してるように見えた。
そのまま1分くらい沈黙が続いた。
「全然頭の整理がつかないが、とりあえず見に来いよ!!」
「ちなみに部活って、教室はどこ?」
「そんなのグラウンドに決まってるだろ!!」
後ろを振り向くとそこには大きなグラウンドがあった。天然芝のフィールドでまるでプロが練習でもしてそうなぐらい整備されていた。
遠くからコーチのような人が歩いてきた。
「担任の先生から説明は受けたよ。えーとそれよりそっか自己紹介からか、サッカー部コーチをしています。梶谷と申します。」
「サッカー部のコーチの方が僕にどんな用件でしょうか。まさか僕がサッカー部とか言いませんよね?!僕は二度とサッカーをするつもりはなかったはずなのですが。」
その時の俺は変わった自分を信じたくなかったのかもしれない。