その3 「箱の中身はただのアダプターだけど」
「ただいまー」
真っ暗な玄関に挨拶。返事は無い。
就職と同時に一人暮らしを始めたため、家に帰っても誰もいないという生活にも慣れていなかった。
やはり一人は寂しい。誰か側にいてくれる人が欲しい。そんな事を日頃から思っているから俺はこの怪し過ぎる品を買ってしまったのだろう。
だがこうなったら祈るしかない。本当に俺が買ったのはスマホを女の子に変える夢の装置なんだと……!
鞄をベッドに放り投げて着替えもせず段ボールをテーブルの上に置いて準備は万端。
期待を膨らませながらカッターで切り込みを入れていく。そして蓋を開き、いよいよご対面……。
「えっと……これは……?」
中には真っ黒なケーブルとそれに繋がったスイッチのような物体が一つ。あとは説明書であろう紙切れが一枚入っているだけだった。正直これで女の子を出せるとは思えない。はぁ……やはりパチモンだったのか……。
半ば絶望した状態で紙切れを手に取る。しかし書かれれていた内容に俺は驚愕した。
『Andr◯id・iPh◯ne対応 スマホ→美少女変換アダプター』
嘘……。マジで!?
取り敢えず続きを読むことにする。俺の手は震えていた。
『ご購入ありがとうございます。本商品はお手持ちのスマートフォンを美少女に変換できるアダプターです。少女の容姿や性格はスマホのデザインや性能に依存します。ですが使い方次第で貴方への態度は変化します。そう、貴方はこれからスマホ少女を育てていくのです!』
ジョークじゃないよな? 本当なのかこれは……。
見たところよくある説明書の構成になっており、事実と異なるといった注意書きも無い。
不安は残るものの、手順が書いてあるのでその通りにやってみることにした。
「充電の所に挿してスイッチを入れるだけ……か」
呆気ないほど簡単だったが、スマホにケーブルを挿してボタンを押すと美少女に変わるらしい。
にわかに信じがたいが、もしかしたらという希望を胸にボタンに向けて手を伸ばす。
ゴクリと生唾を飲む。そして指先に力を入れて……。
カチッ
押したが反応は無い。しかし数秒後、やっぱ駄目かと思った瞬間――
「うわっ!? まぶ…………し……!?」
突如放たれた閃光に目が眩む。そしてモーターのような駆動音が鼓膜が破れるほどの大きさで鳴り始める。
状況が全く分からない。一体今何が起きているんだ。
目をつむり、耳を両手で塞ぎながら収まるのを待つ。
数分経っただろうか。
爆音が静まり、光も同時に収まったようなので俺はゆっくりと目を見開いた。
すると……なんと……。
目の前に女の子が座っていた。