自分戦争のおわらせかた
黒い煙を出して矢印の黄色いペイントが胴体に書かれた味方の戦闘機が落ちていく。
始まった戦争も四年が過ぎ。今、祖国がどうなっているのかさえもわからない状況で敵が戦争が終わったとスピーカーやらビラで宣伝してくる。
大国の戦争は終わっていたとしても、自分自身の戦争はいまだ終わらない。
「今さら剣を持ってどこ行くんだ?」
「シュコットか。どこ行こうが俺の勝手だろ」
「……仇討か? ゲーテ」
「…………」
俺の家族は敵戦闘機の銃撃で殺された。
戦争中では良くある話だ。戦友のシュコットも同様に妹を亡くしている。
それでも許せないのは、赤十字の書かれたマークめがけて銃撃を加えたやつだ。
――国際法違反。
それを承知で攻撃した奴がすぐ近くにいると最近になって知った。さっき落ちた味方の戦闘機はその時迎撃に飛んでいたやつの機体だ。機関砲に石をかませておいて知らずに引き金を引くと爆発する。その結果があれだ。だが、シュコットにはこのことを伝えていない。
「いくら仇討ちとはいえ、刺し殺したらそれこそ戦犯になっちまうぞ!」
「それでもいい。どうせ、俺にはもう生きることは許されちゃいないんだ」
「……ゲーテ」
「家族はみんな死んだ。俺一人がこの世界にいる」
「それは俺も――」
「違う。俺は部隊も全滅している。一度じゃない。唯一残っているのはお前だけなんだよシュコット!」
「…………」
そう。俺とこいつの二人だけ。
部隊は空襲、奇襲で全滅。
部隊のためにも、家族のためにも主犯を殺す。
自分自身の戦争にケリをつけるためにもいかなきゃいけない。
「もう行くよ……」
「…………」
そう言って、俺は主犯のいる空港に一人歩き始めた。