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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第56話:小森由梨花 恐怖の改造儀式




 ウボームの根拠地、元セルフュリア共和国王都。

 その大聖堂で、おぞましい儀式が行われようとしていた。



「放してっ! もうやめてよ! もう……十分でしょ!! 元の世界に返して……返してよ……!!」



 台座に拘束された紫の魔法少女、小森 由梨花。

 リザリオスに拉致されてから、拷問を受け、リザリオスに嬲り者にされ、新型魔術の実験台にされてきた彼女の心は既にボロボロだった。

 今が一体いつなのかも分からない。

 自分のいた世界がどうなっているのかも分からない。

 家族が、友人が、街の人々が、今この瞬間ゼルロイドによって危機に瀕しているかもしれないのだ。



「彼がああならなければ、あなたを使う必要はなかったのだけど、ごめんね♪」



 由梨花を見下ろしながら、面白そうにウィンクをして見せるオピス。



「私を……私をどうするつもりなの!!」


「うーんとね。端的に言うと、あなたには私たちの操る怪人になって、ある人を殺してもらうのよ」


「なっ……!? ふざけないで! お前たちの思い通りになんてならない!」


「うーん♪ 良いわぁ……。その意気よ。まあ、頑張って頂戴ね」




 オピスが指を鳴らすと、由梨花が縛り付けられた台座に魔法陣が浮かび上がり、怪しげな光を放つ。



「それじゃあ、また用事ができたら呼ぶわ。元気で可哀そうな、良い怪人になるのよ。じゃあね♪」



 由梨花の絶叫響き渡る大聖堂に背を向け、オピスは鼻息混じりに立ち去ろうとする。

 その目の前に、一つの影が立ちはだかった。



「ザルド様の命令は無かったように思うが」



 ウボーム軍アマト侵略部隊“元”参謀、デューだ。



「あら? ザルド様ならアレくらいのことだったら許可してくれるわよ」


「あの女を改造するためにどれほどのマイナスエネルギーを消耗するか分かっているのか!? 既にフェルが集めた分は使い切っているのだぞ!」


「はぁ……煩いわねぇ。碌な成果も出せないでクビになったボンクラは黙ってなさいよ。私の方がよっぽどザルド様に貢献してるわよ」



 突然悪辣な言葉を使い始めたオピスに面食らいつつも、デューは彼女をさらに問責する。



「その割に、貴様の立てた怪人の作戦はあっさりと破られたようだが? 挙句、貴様が対策不要と断じたあの男の手でフェルも死んだ。この責はどう取るつもりだ?」


「ザルド様は許してくれたわ。あなたと違って私は必要とされてるから、そのくらいの失敗でクビになったりはしないの。ま、頑張ってザルド様のお眼鏡に適った働きをすることね。せめてフェル程度には」


「……貴様! あの小娘程度に……だと……! このウボーム軍設立当初よりのザルド様の右腕にして……」


「はいはい。さよなら~」



 息巻くデューを軽く受け流し、隙をついてオピスは姿を消した。

 あとに残されたデューは、壁を叩き、苛立ちに満ちた瞳で、大聖堂の大扉を睨んでいた。




/////////////////




 一方、ウボームと対峙する最前線基地、SST大城支部では、対ウボーム用の新装備が着々と整い始めていた。

 蒼と共同開発しているマジフォンや携行小型武器だけでなく、より大型で戦略的なものもいくつか試験配備段階に入っている。

 例えば、その最たるものが、超次元観測レーダーである。


 以前、魔法少女達が捕らえられ、蒼が人質にされたあの戦いで、蒼から分離したブレイブウィングが天に開いた穴へと突入し、敵が現れる異次元空間の境界面の観測を行っていた。

 そのデータを利用し、我々のいる次元と他の次元を繋ぐエネルギートンネルを感知することができるのが、超次元観測レーダーである。


 これが万全な状態で稼働すれば、ウボームが現れる2~3日前には襲撃の場所、時間まで予見できる見立てである。

 それをSSTの戦闘車両、蒼率いる魔法少女部、そしてマジフォンで繋がった街の魔法少女達が最適な配置で待ち構え、先制攻撃を加えることができれば、いかに強力なウボーム魔獣、及びキメラゼルロイドといえども容易に撃破できるようになることだろう。

 そして、逆にこちらから敵の本陣へ攻撃を仕掛けることも可能になるはずだ。

 大城市の至る所に、次元の向こう側を攻撃するための地対空ミサイルが配備され、反撃の準備は既に終わっている。

 

 蒼のシャイニングフィールドも加わり、いよいよウボームは襲るるに足りない存在へと成り下がりつつあった。

 もはやSST大城支部も、目下の関心はウボーム殲滅後のこれら高額かつ高性能な装備の利用方法に移りつつある。

 そして事実、ウボームと大城市の最後の戦いは刻一刻と迫っているのだった。


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