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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第45話:相部屋の恋人




「3人のエネルギーに呼応して発生した白いエネルギーが人型になって高瀬くんに話しかけて、そのエネルギーの組成は高瀬くんのそれとそっくり」


「ほんの一瞬だけ地球内部の反応を検出できたのですが、エネルギーの発生源は途轍もない地下深くですね。魔法少女のエネルギー場の元となる光が生み出されていると思しき深度、すなわちプレートよりも遥かに深くから来ています。外核……いえ、下手をすれば内核由来かもしれません」


「高瀬くんのエネルギーは原油みたいなものなのかもしれないわね。それならエネルギーの総量に対してプラスエネルギーが少ないのも合点がいくわ」


「その辺どう思うの?」

「その辺どう思います?」


「いや、どうとか言われましても……。ていうかもう先生達ミスターブラックとか関係なく普通に出て来るんすね……」



 朝、SST保養施設の座談スペースで詰め寄る御崎、宮野と、困り顔の蒼。

 あれから政府要人との会議を経て、大急ぎで取って返してきた二人の目の下には来い隈が出来ている。



「そもそも俺のエネルギーじゃなくて、みんな同じ性質のもの持ってるんですってば。宮野さんも御崎先生も、そこの3人も、ティナちゃんも」



 蒼曰く、濃度、出力の違いこそあれ、全ての人は彼の体内、及び地球内部から発現したエネルギーと同質のそれを備え持っている。

 事実、今蒼が試作中の武器にそのエネルギーを用いて起動する小型の遠近両用小型火器があるのだが、これはSST一般職員でも使うことができるのだ。



「あの光が出て来たとき花とかめっちゃ元気になってたよな。地球の奥深くには命の源が眠ってて、それが何らかの意思を持って語りかけてきた。みたいな?」



 蒼の椅子の背もたれに肘をついて身を乗り出しつつ、響が話に加わる。

 彼女はこういう不思議な話が好きなようだ。

 宮野はこれ幸いと彼女に話を振る。



「あの魔方陣に触れたとき、どんな感覚でしたか?」


「とにかく温かったな。触れてるところから全身がポカポカしていく感じで、それでいて暑くないんだ。言葉では言いづらいんだが……。心が暖められるような感覚っていうのか? 強さとか、優しさに包まれるような……」


「佐山さんって結構ポエマー?」


「ちげぇよ!! ホントにそんな感覚だったんだって! アイツらにも聞いてみろよ!」



 御崎の冷静なツッコミに顔を赤く染めつつ、仲良くアイスを咥えている詩織達を指さす。

 朝風呂に入るのを制止されている3人はやや鬱陶しそうだ。

 誰が答えるか目配せしあった後、詩織が口を開く。



「まあ確かにそんな感じでしたよ。勇気とか、愛とか、そういうのがみなぎるような感覚は確かにありました。近いものは……あー……いえ、何でもないです」


「いや、そこまで言うなら全部言えよ! 気になるだろ!」



 響が囃し立てると、詩織は香子のほうを一瞥し、「ノーコメントで」と言い直した。



「え!? 何? アタシ関係?」



 当の香子は困惑している。

 その様子を見て、御崎は何となく察したようで、詩織に向かってしきりに頷いた。

 詩織もまた、「そういうことです」とばかりに頷き返す。



「なるほど。高瀬君の胸に抱かれて眠っている時に似た感覚……と」



 同じく、全てを察した宮野が一々声に出しながらキーボードを叩き始めた。

 詩織と御崎がバキッと音を立てんばかりの勢いで固まる。

 響も「おーおー! それだそれだ! こいつと寝てると何か元気になるよな!」と能天気に笑い出す。

 いよいよ香子が怒るのではないかと、ヒヤヒヤしながら振り返る詩織。

 しかし香子は眉を顰めるでもなく、キョトンとした表情を浮かべている。



「え。もしかしてアタシに気を使ってたの!? べ……別にそんなことで怒らないわよ! むしろ変に意識されるほうが恥ずかしいって!」



 詩織の言動の意図に気づいた香子が顔を真っ赤に染める。

蒼も心なしか気恥ずかしそうな様子だ。

 


「とにかく、アレが何だったのかは分かりませんよ。出現条件も不明ですし、データも取れてませんし……」


「そうですか……。まあ後は蒼くんの閃きとウチの研究部署に任せるとしましょう。皆さんは残る3日を有意義に使ってくださいね! では!」


「新里さんはちゃんと課題終わらせるのよ!」


 そう言うと、宮野と御崎は床に開いた穴にスルスルと消えていった。

 「まるでからくり屋敷ね……」と香子が呟いた。




■ ■ ■ ■ ■




「ねえ蒼」


「なんだよ……」


「呼んでみただけ」



 ダブルベッドで並んで寝そべる蒼と香子。

 ティナとの4日間が終わり、香子との3日間、すなわちこの合宿最後の3日間が始まった。

 既に出されたコミュニケーション課題は全てクリアし、香子とのシチュエーション課題を残すのみである。

 もはや宮野達も課題がどうのこうの言わなくなっているので、クリアすることに意義があるのかは疑問だが、そこは全員根が真面目な魔法少女部である。

 組体操や合唱など中学校の宿泊研修のような内容から、天体観測やキャンプファイヤーといった青春の一ページのような内容まで、時に文句を垂れつつ、時にワイワイと楽しみながら、彼らは課題を消化していった。



「色々あったけど、この合宿楽しかったよね」


「そうだな。変な課題も多かったが……ティナちゃんも楽しんでたみたいで良かったよ」


「なんか蒼最近ティナちゃんばっかり気にしてない?」



 香子が横に転がり、蒼の肩に膨れっ面を乗せる。



「まあな。ティナちゃん色々気負い過ぎてるとこあるからさ……。年相応に楽しく過ごしてほしいんだよね」


「うーん……。確かにあの子そういうとこあるわよね。無茶しがちだし、強い敵にも躊躇わず立ち向かうし……。どっかの誰かさんみたいにね!」



 そう言いながら、香子は蒼の胸をツンツンと強く突く。



「痛てて!」


「アンタさ、再生するけど体は普通の人なのよ? なのに毎回無茶してさぁ……」



 蒼は香子の頭に手を置き、「ごめんごめん」と言いながら優しく撫でる

 「もう……」と膨れつつ、彼女は心地よさそうに彼の手の感触に身を任せた。

 やがて、香子は蒼の体に腕を回し、足を彼の左足に軽く絡ませる。

 それに応えるように蒼は体を横に向け、香子をぎゅっと胸に抱きしめた。



「こうやって添い寝するのもあの夜以来だな」


「意外と二人きりになれる機会なかったもんね。えへへ……」



 まるで子猫が甘えるように、香子は蒼に頬擦りする。

 二人はお互いの額を合わせ、じっと見つめ合った後、ゆっくりと優しい口づけを交わす。



「蒼……好きだよ」


「俺もお前のこと好きだぞ」



 頬を薄っすらと紅潮させた二人が、再び顔を近づけた時、部屋のテレビから「ブー」という間抜けな音が大音量で流れた。

 二人は驚きのあまり互いの頭をゴツンと勢いよくぶつけてしまった。



『はーいその二人。部の合宿中に不純性交友は禁止よー』



 テレビから御崎の声が聞こえてくる。

 顔を真っ赤にしてベッドから飛び退く蒼と香子。

 その裏では「しかし御崎さん! お二人が肉体関係を持った場合、あのリンクがどうなるのか気になります!!」と叫ぶ声が響いていたが、「スパーン!!」という快音と共に沈黙した。



『さて、コレが最後のコミュニケーション課題よ。まあ簡単なものだから楽しんで頂戴ね』



 彼女の声と共に天井の穴から落ちてくる小冊子。

 やはりこれまでの3人に比べて明らかに雑になっている。

 それを知らない香子は「アタシは蒼と何をすればいいのかしらね~」等と言いながら冊子を拾い上げ、表示をめくった。



「うっ……」



 直後、香子は嫌そうに顔をしかめる。

 何だ何だと蒼が覗き込むと、彼女の手元から折りたたまれた嫌に黄色っぽいボロボロの紙がバサリと床に落ちた。

 冊子かと思われていたそれは、「肝試し」と書かれたペラ紙と、行先が書かれた地図の折り込みだったのである。


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