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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第43話:巨体! 魔法少女部 対 マンボウゼルロイド 




 夜の闇に包まれた海岸線を照らす黄色い光。

 その中心を巨大な怪鳥が走っている。



「ティナ! 詩織! どうだ!? 敵は居そうか?」


「いえ、今は何も……」


「私もまだ感知できてません」



 パワードディアトリマに跨った3人は今、SST保養施設を円形に包囲するゼルロイド軍団の下を潜り抜け、その外縁をなぞるように敵の母体を探していた。

 索敵係の二人は目を閉じ、全神経をゼルロイドの発見に注いでいる。

 時折彼女達に気付いて襲ってくる中型ゼルロイドは、パワードディアトリマと響が迎撃する。



「しかし何だこいつら……そこそこデカいくせにてんで弱いぜ?」



 群れを構築していたのは全長3mほどの全身にとげを備えた、ぱっと見ハリセンボンのような姿のゼルロイドだった。

 しかし、ハリセンボンとは違い、そのトゲで攻撃してくるでも、膨れて突き刺さってくるでもない。

 えらく怠慢な動きでフヨフヨと体当たりを仕掛けて来るだけである。

 マイナスエネルギー照射のような攻撃もしてはいるが、まるで痛くもかゆくもない。

 詩織のエネルギー場で中和され、コンバータースーツがマイナスエネルギーを遮断しているおかげもあるだろうが、それにしても微弱過ぎる。

 その身体もパワーをオミットされた響の拳一発で粉々になるし、パワードディアトリマの噛みつきや体当たりでも木っ端みじんである。

 一体何を恐れていたのかと思う程の弱さに響は拍子抜けしていた。


 しかし、いくら雑魚と言えどもこの数である。

 あの弱った蒼たちにこの大群が殺到しては、ただでは済まないだろう。

 一刻も早く敵のボスを探し出し、叩き潰さねばならない。

 パワードディアトリマの大口径シグナルランプが照らし出す夜闇の先を響は睨み据えた。




■ ■ ■ ■ ■




「サイドバルカン!」



 蒼の腰に装着された連射砲が青白いエネルギー弾を雨のようにまき散らす。

 その弾幕に捕えられたゼルロイドが破裂し、消滅していく。

 だが、その火網をすり抜け、一匹、また一匹と至近距離まで漂ってくる。



「アームレーザー! アームブレード!」



 接近する個体は腕の連装レーザーとブレードで迎え撃つ。

 そしてまた遠距離の個体群をバルカンで薙ぎ払う。

 皆が母体の撃破に成功した時、残った群れを一気に殲滅するため、香子にはギリギリまでエネルギーを温存、回復させなければならないのだ。

 そして蒼もまた、極力エネルギー消費の少ない武器の使用を避け、最低限度の装備で戦っている。

 敵が極めて弱いのが救いだ。



「はぁ……はぁ……蒼……。大丈夫……?」



 地面に座り込み、荒い息をする香子。

 その様子に蒼は一抹の疑問を覚えた。



「お前、何か回復が異様に遅くなってねぇか?」


「……」



 本来、魔法少女は戦闘中にあっても、エネルギー場からの供給により、怪我やエネルギー切れから迅速に回復できる。

 ラグナロクバニッシャーのような超大技を使ったとしても、普通は30分も待てば復調するはずである。

 しかし、2度目の発射からもう優に30分、1発目から見れば1時間を超えているが、未だに香子は立ち上がることもままならない程だ。



「ごめん……」


「どうした? おっと! アームレーザー!」


「ごめん」


「だからどうしたんだよ? サイドバルカン!!」



 蒼は敵を迎撃しつつ、香子に何度も尋ねるが、彼女は「ごめん」の言葉しか発しない。

 蒼は釈然としないものの、今は敵から彼女を守ることが優先事項なので、ひとまずはそっちに集中することにした。

 蒼が「大事なことだから、お前のタイミングで俺だけにでも教えてくれよ?」と言うと、香子は力無く頷いた。




■ ■ ■ ■ ■




「いる!! この先にすごく大きいのがいます!」



 一方、母体撃破任務組はとうとう敵の発生源をティナの感知圏内に捉えた。

 それにやや遅れ、詩織のエネルギー場にも敵の存在が捉えられる。



「500mくらい上空をゆっくり飛んでる……それに、途轍もない大きさです! そろそろ見えるかもしれません!」



 閉じていた目を見開き、その目を皿のようにして夜空を見渡す詩織とティナ。

 響はパワードディアトリマに指示を出し、シグナルランプを上空へ向けさせた。

 星一つ見えない程に雲が垂れこめた夜空に、赤い光芒が伸びていく。

 直視すればただでは済まないほどの輝度を誇るそれが照らした夜空に、それは浮かんでいた。



「な!? なんだありゃあ!?」



 響が驚愕の声を上げた。

 赤い閃光によって浮かび上がったのは、銀色に輝く宇宙船のような物体だった。

 その大きさはまさに規格外。

 長さは500m、幅は200m以上あるだろう。

 以前戦った超大型ゼルロイド、ウメボシイソギンチャクゼルロイドの10倍近いサイズである。

 よく見ると、その一部分から、トゲトゲした物体が次々と飛び出している。

 間違いなくあのゼルロイド軍団の母体であった。

 特徴的な、かつ見覚えのあるフォルムに、詩織が大声で叫んだ。



「マンボウ! マンボウですよ先輩!!」



 その正体は、超巨大マンボウ型ゼルロイドだったのだ。

 


「マンボウだろうが何だろうがウチがぶっ潰してやるぜ! 詩織!」


「了解です! コンバータースーツチェンジ!」


「変身合体! パワードディアトリマ!!」



 詩織から変身を交替した響の体にパワードディアトリマが変形、合体していく。

 背負ったブースターから赤い粒子を噴き出しながら、響は超巨大マンボウの上へ飛び上がった。



「オラァ!!」



 大型重機に匹敵する大重量を持つ鉄塊の拳が、巨体に撃ち込まれる。

 その一撃でマンボウゼルロイドの体組織が数十メートルにわたって裂け、銀色の大地がひび割れだらけになった。



「っしゃぁ!もう一発!! オラァ!!」



 さらにもう一撃を加えると、マンボウゼルロイドは苦しそうに悶え、グングンと高度を落としていく。

 恐るべき巨体でありながら、肉体の脆弱性はマンボウと共通しているようである。

 2撃の手ごたえで大した敵ではないと判断した響は、一度大きく飛び上がり、両腕にありったけの力を込めていく。

 彼女の腰の宝玉から溢れ出した光が両腕に伝わり、同時にパワードナックルが周囲のエネルギー粒子を激しく吸引し始めた。

 凄まじい熱量が巨大剛腕を真っ赤に加熱させ、深夜の空を夕焼け色に染めあげる。

 背中のブースターを勢いよく吹かし、響は敵めがけて急降下を始めた。



「これでトドメだあああ!! ボルカニックメテオナックル!!」



 赤く燃える流星が銀色の巨体に突き刺さり、まさしく隕石の直撃のような熱と閃光を生み、そして耳をつんざく轟音が人気のない海岸線に広がっていった。

 史上類を見ない巨大ゼルロイドは、体全体に広がるクレーターを穿たれ、火球の爆発により跡形もなく吹き飛んだ。

 その爆発は周辺を漂っていた子マンボウゼルロイドをも次々と消し去り、衝撃波は海を揺らし、低く垂れこめた雲を吹き飛ばし、小規模な地震を発生させた。

 SST保養施設にもそれは伝わり、一部の窓ガラスが弾け飛んでしまった。

 それを合図とばかりに、蒼と香子の合体必殺技が3度目のエネルギー旋風を巻き起こし、残る子マンボウゼルロイドを一匹残らず消滅させたのだった。



「よっしゃああああああ!!!!」



 星が煌めく夜空をバックに、響の勝利の雄叫びと、パワードナックルの冷却音が嵐の音のように響き渡っていた。


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