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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第40話:光の女




 オピスたちが大城市への再侵攻を7日後に定めた同時刻。

 奇遇なことに、魔法少女部の共同生活も残り7日になっていた。

 そして、既に彼女達はこの生活にかなり飽きが来ていた。

 


「あー……いよいよ暇だ……」


「正直もうやること無いですよね……」


「アタシ海水浴に飽きるって人生初めてかも……」



 食堂で扇風機に当たりながら怠ける赤青黄色。

 初めは美しいロケーションや、宮野の出す課題、海水浴、釣り、虫取り、温泉、その他諸々を楽しんでいた彼女達だったが、2週間もすれば飽きるのは当然だ。



「しかし蒼とティナは昨日から部屋に籠って何やってんだ? 時々出てくるけど、何話しかけても上の空でいい気分しねぇぞ」



 昨晩皆で夕飯を食べ、各々の部屋に戻った後、蒼とティナに何かがあった。

 そして今に至るまで、2人は殆ど出てこない。

 朝食も昼食も抜きである。



「蒼のあの感じ……何か猛烈に考え事してるわね。新装備考えてる時なんかあんな風じゃない? あいつ昔からああなの」


「先輩もティナちゃんもまともに食べてませんよ。何か差し入れに行ってあげましょうよ」


「そうだな。せっかく作ったんだしおにぎりでも持って行ってやろうぜ」



 響は徐に立ち上がると、食堂のカウンターに置きっぱなしになっていた二皿のおにぎり盛り合わせを持ち、ティナの部屋へと小走りで駆けていく。

 詩織と香子も腰を上げ、その後に続いた。



 響が「差し入れ持ってきたぞー」と足でドアをノックすると、ガチャリとロックが解除される音が響いた。

 両手が塞がっている響に代わり、詩織がドアを開ける。

 同時に濃密な花の香りが辺り一面に広がる。

 それに顔をしかめつつ、3人が部屋に入ると、部屋の床一面に謎の魔法陣が広がり、怪しげな光を放っていた。

 蝋燭や線香、無数の花……。傍から見れば黒魔術の儀式か何かである。



「ああ……。みんなおはよう……」


「おはようございます……」



 そしてその魔法陣にスキャンケーブルを繋げてパソコンと睨めっこする蒼と、分厚い本を捲りながら魔法陣を書き足していくティナ。

 二人とも寝不足なのか、目の下に大きな隈を作ってゲッソリしてる。



「ちょっと! 何やってんのアンタたち!?」


「いや……対ダークフィールド用の魔法陣二人で考えてた……」



 蒼が言うにはこうだ。

 昨晩、ティナと添い寝しながらウボームのダークフィールドを始めとする魔法陣を用いた術に関して話していると、ふと「それ俺達でも再現できるんじゃね?」という考えが脳裏をよぎった。

 そしてティナに魔法陣に関して教えてもらううち、魔法陣をデータとして解析できることに気が付いたというのだ。

 そこで、ウボームが展開したダークフィールドへデータを流し込み、それを蒼のエネルギーで上書きしてやろうという作戦を思いついたらしい。

 興に乗ってしまった二人はそれから不眠不休で魔法陣を書き、解析しを繰り返していたらしい。



「先輩凄いじゃないっすか! それが実現したらもうウボーム魔獣なんか目じゃないっすよ!」


「ああ、それに成功したら君らみんながパワー万全で戦える空間の出来上がりってわけよ。だからもうちょっと待っててくれ……。もうちょっとで……」



 蒼はその言葉を言い切ることなく、バタリと倒れ、そのまま寝息を立て始めた。

 そして、やがてティナもそれに釣られるように倒れた。



「はぁ……全く世話の焼ける……。ティナちゃんって蒼に似たとこあるわね」



 香子がティナを抱き上げ、ベッドに寝かせてやる。

 一方の蒼は「無茶する前にウチらに一声かけろよな……ったく」と悪態をつかれながら、響に背負われて食堂へ運ばれていった。




■ ■ ■ ■ ■




「んで、コレどうするよ」


「勝手に弄ったらダメよね……多分」


「でも何かさっきから輝き増してませんか? 放っておいたら良くない気がするんですけど……」



 残されたのは、怪しく光る魔法陣。

 作った主が倒れても尚それは輝きを増し、蒼のパソコンは何かよく分からない文字列を猛烈な勢いで読み込んでいる。

 それどころか魔法陣に置かれた花の茎や葉が伸びたり、並べられた蝋燭の炎が大きくなったりと怪奇現象が生じている。

 詩織が蝋燭を吹き消そうとしたが、炎は消えるどころか揺らぎもしなかった。



「ちょ……ちょっと触ってみるか? あ、なんか温い」


「ちょっと佐山さん! 迂闊に触らない方が……」


「あ、ホントだ。なんかポカポカしてますね。ていうか体温まりません?」



 香子の警告よりも早く、詩織はその魔法陣に手を置いていた。



「新里さんも辞めときなさいって! 蒼達が起きるまで待ちましょうよ!」


「まあそう言わずにお前も触ってみろよ。なんか元気出るぞ」



 香子は少し不安そうな表情をしていたが、やがて好奇心に負け、魔法陣の線の一つに指を置いてみた。

 香子が指を置いた箇所から青い波紋がジワリと広がり、魔法陣の白い輝きがさらに増した。



「確かに温かいかも……。温かくて、何か安心するわね」



 魔法陣は彼女達の手から漏れ出る3つの光を取り込み、ついには目も当てられないほどに眩い光を放ち始めた。

 その異様な事態に、3人は慌てて飛び退き、いつでも変身できる体勢を取った。



「ななななな……なんかヤバそうな雰囲気出てません!?」


「だから迂闊に触れない方が良いって言ったじゃない!」


「お前も触ってたじゃねーか! ていうかどうすりゃいいんだ!?」



 魔法陣から白い光が四方に伸び、床を伝って際限なく広がっていく。

 部屋に散りばめられていた花はますます生命力を増し、ティナの部屋の床を、壁を、天井を覆いつくしていく。

 蝋燭の炎が柱のように燃え上がるが、それは何も焼くことなく、唯々辺りを明るく、温かく照らす。

 やがて、魔法陣の中心から白い球体が浮かび上がると、女性のような姿を形成した。

 目の前で起きていることが全く理解できず、3人は思考停止状態で固まっている。


 白い光の女は3人の方を向くと、何かを話し出した。

 だが、何を言っているのか全く分からない。

 敵意は全く感じず、それどころか高濃度のプラスエネルギーを照射されているような感覚が少女達を包み込む。



「はっ!? 私は一体何を……!? うわぁ!!」



 眠っていたティナが飛び起き、身の回りで起きている異常事態に愕然としている。



「おい! 何事だ!?」



 食堂のソファーで寝ていた蒼も目を覚まし、廊下を凄い勢いで走ってきた。

 蒼がティナの部屋に飛び込むと、白い女と目が合った。

 光の女は蒼の姿を見ると、慌てるように彼に向き直り、今までより一層忙しなく口を開け閉めし始める。

 それはまるで、何かを懸命に伝えようとしているように見えた。



「カオス……? 盾……? 何言ってんだあんた!?」


「アンタこの人が何言ってるのか分かるの!?」


「分かんねぇよ!? 単語しか聞き取れない! あとなんか美声!」



 そんな問答を繰り返しているうちに、蝋燭の灯が弱まっていき、それと同時に魔法陣の光が失われていく。

 光の女の姿もボロボロと崩れ始め、何かを蒼に叫んだのを最後に、跡形もなく消滅してしまった。



「思い出せって……何を……?」



 蒼の疑問が、花に埋もれた部屋に響いた。


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