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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第30話:蒼 対 響 プロレス対決




 温泉のあるフロアを突き当りまで歩いたところにあるトレーニングルーム。

 その真ん中に鎮座するのは二人のための特設リング。



「うおお!! これはなかなか本格的じゃねーか!」



 響が目を輝かせ、リングに上がっていく。

 リングコスチューム代わりに水着を着用し、照明を背に受けて仁王立ちしている。




「ほら! 蒼も上がってこい!」



 ロープから身を乗り出し、クイクイと蒼へ手招きする。

 が、蒼はどうにも気が乗らない。

 あの怪力少女と互いの悪態をつき合いながらプロレスをやれというのだから、碌な目に遭わないのは目に見えている。



「行ってあげなさいよ」



 蒼が後ろから聞こえた声にはっと振り返ると、香子、詩織、ティナが立っていた。



「先輩達が喧嘩プロレスするって聞いて飛んできましたよ!」


「この世界の格闘技……興味あります!」



 目を輝かせながら蒼の背をグイグイと押してくる後輩コンビ。

 友情パワーですよ友情パワー!と鼻息を荒らげる詩織の勢いに負け、蒼はリング際に追い込まれていく。

 そのまま響に腕を掴まれ、リングに引き上げられてしまう。



「はっはっは! 無駄な抵抗は止めるんだな! 大体この合宿に乗ったのはお前だろ? 今更それから逃げるようなマネするんじゃねー!!」



 かつてないほどテンションが上がり、何やらポーズを決めつつ、蒼を勢いよく指さす響。

 昨晩見せられたプロレスのマイクパフォーマンスのようだ。



「あーもう! 分かった分かった! やればいいんだろやれば!」



 蒼もジャージを脱ぎ捨て、水着一枚になり、響の眼前に立ちはだかる。



「やっとやる気になったか! このヒョロガリ野郎! プロレスの流れは分かってんな?」


「何となくだけどな! 毎晩毎晩プロレス番組流しやがって!! 自分のことに集中できねぇだろうがよっ!」



 腕を鞭のように捻り、鋭いチョップを響に繰り出す蒼。

 バシィ!という音とともに、響が軽くのけ反る。



「へへへっ……。中々悪くないじゃねぇか。だが、まだまだ鍛えが足りねぇなぁ! 機械に頼ってばっかだもんなぁ!」


「ぐはぁっ!?」



 響の反撃チョップを食らい、蒼はロープまで弾き飛ばされる。

 「おいおい手加減してんだぜ?」と勝ち誇る響の姿を見ながら、蒼はこの勝負に乗ったことを激しく後悔した。



「先輩! 何やってんですか! 反撃ですよ!」



 いつの間にかセコンドの位置についた詩織がリングを叩きながら叫びかけてくる。

 香子は何が何やらといった感じで頭を抱えていた。



「そうは言っても……ゲホッ……基礎パワーから違うじゃん! 俺が明らかに不利だろ!」


「だったら手数ですよ! 連続チョップです!」


「連続チョップ……か」



 ロープを支えに、何とか起き上がった蒼が、ゆっくりと響の元へ歩いて行く。



「お前の能力ピーキーすぎて一緒に戦い辛いんだよ!!」

「肝心な時居ねぇし! 寝相悪いし! 変な時に乙女スイッチ入るし!」



 と、文句の一言一言に力を込め、チョップを次々と撃ち込む。

 「うっ! うっ!」っとそれっぽい呻き声をあげながら響が後ずさりする。

 だが、彼女は即座に立て直し、「そりゃ悪かったなぁ……」と反撃の構えをとった。



「お前も大概だろ! 撃たれ弱いし! すぐ筋肉痛になるし! 朝起きりゃ人の股に顔突っ込むわ……寝間着脱がせてきやがるわ!!」



 猛烈なラッシュを胸に食らい、凄まじい眩暈に襲われて崩れ落ちる蒼。



「何ですってぇ!?」


「先輩……。えぇ……」



 顔色を変えてリングまで寄って来る香子と、ドン引きする詩織。



「違う……誤解だ……」



 大きく息を吐き、気合で体を持ち上げながら、弁明する蒼。

 そのまま思い切りロープに体を沈めていく。



「後半2個はお前のせいだろ! 朝っぱらから汗臭いんだよ!!」



 跳ね返る勢いで、響目がけてラリーアートをぶちかました。

 流石の響も「うぐっ」と声を上げ、マットに倒れこむ。

 蒼はそのまま彼女の片足を掴み、腹の上に圧し掛かる。

 響の両肩がマットにつき、抑え込みの状態になった。



「新里! カウント!!」


「はっ! はい! ワン! ツー!」


「ぬんっ!!」



 2カウントで響が思い切り腰を振り、蒼を弾き飛ばした。



「はぁ……はぁ……。やるじゃねぇか。今のはちょっと驚いたぜ」



 肩で息をしながら立ち上がる響。

 その顔は真っ赤であった。



「誰のどこが汗臭いってコノヤロー! お前デリカシー無さすぎんだよ!!」



 瞬く間に猛烈なフライングクロスチョップを撃ち込み、そのまま蒼を抑え込みにかかる響。



「うぐっ……! うぐぐぐぐ!! お前が先に仕掛けてきたんだろうがよぉ!」



 しかし、蒼も身を捩り、仰向けにされまいと体を起こす。

 腰にしがみ付く響ごと体をうつ伏せにすると、今度は蒼が響を抑え込む形になった。

 ふとももで響の両腕を抑え、彼女の自由を奪いにかかる蒼。

「んんーーーー!!」と響の叫びが上がる。

 だが、蒼程度の体重では彼女のパワーを抑えきれず、あっさりと押し返されてしまった。



 飛び退いた勢いで、お互い一旦距離を取る。

 響の顔はますます赤くなっていた。



「てめぇ! 人の顔に何押し付けてんだ! 変態!」


「知らねーよ! そんな器用なマネ出来るか!!」



 はぁはぁと荒い息をしながら、牽制し合う。

 蒼はスタミナ切れ、響はセクハラ攻撃の連続で心臓の鼓動が激しくなっているだけ。

 蒼の圧倒的不利なのだが、傍から見ると接戦の様相だ。



「しかし、お前案外戦いがいのあるヤツだったんだな。初めはクール気取りのナヨナヨしたタイプかと思ってたのによ!」


「誰がクール気取りのナヨナヨだ。逆に響は初めの印象とギャップがなさすぎなんだよ! この脳筋!」


「言ったな!」


「言ったわ!」



 体当たりのような勢いで両手を組み合い、ロック・アップの体勢になる二人。

 地力に勝る響が一気に上位を取り、蒼は片膝をつく。



「力比べでウチに勝てると思うなよ……!!」


「ぐ……ぬぬぬ……! 負けるかあああ!!」



 蒼の胸から、白い光の線が皮膚を伝って手足に伸びていく。

 やがて彼の四肢が発光を始め、響の手をゆっくりと押し戻し始めた。



「おお!?」



 驚嘆の声を上げる響。

 何せ、本来なら力負けするはずのない相手である。

 そんな彼が、自分に勝るとも劣らないパワーで反撃してくるのだから、驚くのも道理。

 「張り合いが出てきたなぁ!」と、手に最大限の力を込め、蒼の抵抗を捻り潰そうとする響。

 だが、蒼の手足の光は輝きを増し、その猛烈なプレスにすら耐える。



「ちょっとズルいかもしれないが……! 俺が持ってる力なんだから許容範囲だろ!」


「よっしゃ! お前がその気ならウチだって! 変身!」


「えっ!? ちょっと待っ……」



 ズガーン!という轟音と共に、急ごしらえのプロレスリングが砕け散った。




■ ■ ■ ■ ■




「痛てて……」


「いや~悪い悪い! 何か興に乗っちまってさ!」



 蒼の背中に軟膏を塗りながら笑う響。



「一般人に魔法少女の力使うヤツがあるかよ……。全く……」


「おいおい。蒼だって一般女子高生に謎パワー使ってきたじゃねーか。おあいこだ、おあいこ」


「まあ……それ言われるとぐぅの音も出ないんだがな。しかし……。エネルギーで底上げしても変身前のお前と互角かぁ……。若干悔しいかもしれない」


「だろ? だろ!? お前は結構いい筋してると思うし。ちゃんと鍛えないか? そうすりゃ、ウチくらいはねじ伏せられるようになると思うぜ?」



 グイグイと迫ってくる響を「まあ段階的にな」と、受け流し、蒼はベッドに横になる。

 そこに「横いいか?」と、響が並んで寝そべってきた。



「なんか、ちょっとお前と近くなれた気がするぜ」


「そーかい」



 近くなった相手に魔法少女パワーでフィニッシュホールド決めてくる奴がいるのかと、若干不貞腐れたふうに蒼が応える。



「あ……あのさ……」


「ん?」


「ありがとな」


「……。なんのこっちゃ?」


「いや、実はさ……」



ピーーーーーーー!

ピーーーーーーー!



 響が何かを言いかけた時、蒼の腕のデバイスからゼルロイドの出現を告げるアラームが大音量で鳴りはじめた。


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