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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第13話:疾走! ガンスプリンター 対 バスタークロス




 SST本部、地下格納庫。

 新装備の試運転&お披露目が行われていた。

 お披露目と言っても、観客はティナを含む魔法少女達と宮野、御崎、そしてSST技術部の数名だけだが。


「先輩でっかーい! ロボみたいですよ!」

「だろ! ブレイブウィング・ストロングフォーメーションだ!」


 大型サポートバード、“パワードディアトリマ”と合体した蒼は、文字通り見上げるほどのサイズになっていた。

 1対のキャタピラとレッグユニットが蒼をこれでもかとリフトアップし、両腕と合体した、巨大なパワーアームと、大楯が威圧感を倍増させている。

 それだけではなく、ショベルアーム、多重シールドジェネレーター、冷凍エナジーキャノン等のサポート武装も備えており、戦闘の他に、火災や地震など、災害現場での救助活動等にも使用可能だ。

 その用途で用いられる日が来るかは不明だが……。


 ところで、今までのフォーメーションと大きく異なる点が、ブレイブウィングのウィングパーツが蒼の背中ではなく、パワーアームに結合していることである。

 なにせ片方だけで390kgに達するパワーアーム。空気圧による動力装置が付いているとはいえ、蒼の腕では持ち上げることすらできない。

 ウィングパーツの重力制御機能を使用することで初めて、重いアームを自由に振り回すことが可能となるのだ


「ほれ。このくらいの鉄塊なら片腕で持てるぞ」


 1tはあるであろう鉄のキューブをアームで挟み、持ち上げて見せる蒼。

 まるで蒼が凄まじいパワーを発揮しているように見えるが、実際にはアームの動力機構とブレイブウィングの重力制御機能が凄まじい性能を発揮しているのである。

 その場の各々が新装備のパワーや、その技術に感心する中、一人腕を組み、不服そうな響。


「ウチ的にはなんか違うんだよなぁ……。それじゃお前、建設重機の運転手と変わらないじゃんか」


 彼女としては、蒼にはウィングに頼らず、あの腕を振り回してほしかったようだが、そんなことが可能な人間は響しかいないだろう。




■ ■ ■ ■ ■




「高瀬くんの後だと見劣りしちゃうかもだけど……。こっちのマシンも完成したわよ」


 御崎が格納庫の隅を指さす。

 そこに並ぶ2台の車。

 片方はSUVのルーフに大型のエナジーキャノンを装備した「バスタークロス」

 もう一方は小型スポーツカーに一回り小さなキャノンを載せた「ガンスプリンター」

 どちらも御崎命名である。


 以前、バスタークロスがキメラゼルロイド戦で初陣を飾った時、砲塔は未塗装、SSTのロゴも片側のみという、いかにも未完成な状態だったが、今回は塗装もロゴも万全だ。

 さらに、リザリオスに包囲された際、打つ手がなかった反省から、車体前面に内部装甲を増設。シールドジェネレーター、旋回式超小型バルカン砲も追加装備し、小型の敵なら自力で排除できるように改良されている。

 無論、エネルギー増幅器も改良され、出力も十分である。


「こんなこと言うのも不謹慎だけど、早く敵で試したいわね」


 ガンスプリンターに乗り込んだ御崎が、ルーフのキャノン砲を旋回させながら笑う。

 これまで敵に対して有効な攻撃手段を持たなかったSSTが、初めて装備した本格な戦闘装備なのだから、御崎のはしゃぎようもよく分かる。

 彼女の役割は一応基地司令なのだが、陣頭指揮を執る気満々だ。


「俺も早くこのパワーを試したいですよ! 不謹慎ですけど!」


 蒼もまた、鉄塊を握り潰しながら、やる気を漲らせている。

 えてして、こういった備え万全の時に限って、望むことは起きないものなのだが、この2人が幸運なのか、それとも敵が不運なのか、基地内にけたたましいブザー音が鳴り響いた。




“ビー! ビー! ビー!”

『大型ウボーム魔獣出現! ゼルロイド反応あり! 大城市東部の再開発エリアです!』




 ウボームも、まさか敵がここまでやる気満々とは思うまい。

 しかも出現場所は広大かつ、住民が少ない再開発中のエリア。

 試験戦闘には極めておあつらえ向きの戦場である。


「先生……」

「高瀬くん……」


 蒼は響を、御崎は香子をそれぞれ横目で確認し、互いに見つめ合った。

 視線で「自分がやる」と牽制し合う。

 ふと、御崎が右手をゆっくりと天にかざす。

 蒼もそれに追従し、右手を掲げる。


「あら、やる気みたいね」

「こういう時にはコレに限りますからね」


 二人はそのまま腕を力強く振りかぶり、互いに向けて勢いよく振り下ろしながら叫んだ。


「「じゃんけんポン!!」」




■ ■ ■ ■ ■




「ちぇー」


 ガンスプリンターの助手席でふてくされる蒼。


「今日は私たちの技術を世界に示させてもらうわよ!」


 豪快なエンジン音を響かせ、地下トンネルを疾走していくガンスプリンター。

 以前も通ったSST本部へ続くトンネルだが、いつの間にか分岐路が格段に増えている。

 御崎曰く、どこにゼルロイドやウボーム魔獣が出てもすぐ駆け付けられるよう、近隣のトンネルや高速道路と繋げたらしい。

 以前は2~3時間かかっていた大城市中心部までの移動も僅か30分まで短縮されており、敵の出現に対して迅速に対応できるように改善されている。


「7番バイパスを抜けたらすぐに該当エリアよ! 気を抜かないでね!」

「ま、負けた以上はしっかり裏方こなしますよ……っと!」


 蒼は戦闘時用シートベルトを重ねがけする。

 同時にセンターパネルに埋め込まれた操作盤に軽く手を置き、補助装備、火器の制御を買って出たのだった。


「笠原さん! 変身お願い!」

『はい!』


 御崎の指示に応え、後ろを走るバスタークロスから飛び出した香子が、青い粒子を纏い、ガンスプリンターに並走する。

 地下道の出口が見え、眩しく輝くその先で、大きな黒い影がゆらゆらと動くさまが見て取れた。

 敵は真正面にいる!


「トンネルを抜けたら一発打ち込むわよ! 準備!」

「了解ですよ、と」


 蒼がエナジーキャノンを操作し、増幅器に香子のエネルギー粒子を吸入させる。

そして、炉心のエネルギーとそれを混合、圧縮していく。


「トンネル抜けるまであと5秒……4秒……3……2……1……。 今よ!」

「発射!!」


 小綺麗なトンネルから、いかにも開発中の砂利道へ飛び出したガンスプリンター。

 背負う砲から放たれた青い光線が、辺りを徘徊していた大型キメラゼルロイドに見事命中する。


「グオオオオオオオ!!」


 突然の衝撃に、咆哮をあげながら倒れる敵。

 全高15m程度、外見はドルドラスに似ているが、下半身はカニを思わせる8本の甲殻に覆われた足、腕からは大きなカニのハサミが生えている等の相違点がある。

 おそらく……いや、間違いなくカニ型ゼルロイドとドルドラスのキメラだろう。


「カニドラスと言ったところね……」


 御崎が独特のネーミングセンスを発揮し、蒼がコメントに困る中、バスタークロスもトンネルから飛び出してきた。

 真正面に横たわるカニドラスを躱し、砲塔を旋回させ、起き上がろうともがく敵に次々とエネルギー砲を撃ち込んでいく。

 香子も宙を舞いながら援護攻撃を行い、カニドラスの足を的確に打ち抜き、破壊する。


「おっと! 私たちも負けてられないわよ!」


 御崎は車を勢いよく旋回させ、再び敵へ突っ込んでいく。

 蒼もそれに合わせて主砲を操作し、敵の頭部に狙いを定める。


「ゴオオオオオオオ!!」


 だが、ドルドラスの再生能力とカニのそれを併せ持つキメラゼルロイドは、受けた傷を修復させながら、ゆっくりと起き上がってきた。

 そして、雄叫びと共に口から、腕の大ばさみから火炎を噴射してきたのだ。


「うわ!!」


 突然の出来事だったが、御崎は素早いハンドル捌きでその火炎放射を回避。

 ハンドルの射撃スイッチを押し込み、ロックオンした頭部目がけて、青撃を叩き込み続ける。

 その見事ながら無茶苦茶な挙動に、右へ、左へと振り回され、蒼は軽く目を回してしまう。


 敵の注意がガンスプリンターに向いている隙に、バスタークロスは敵の胸元に照準を合わせ、ガンスプリンターのそれよりも一回り大きなキャノンにエネルギーを充填していく。

 SSTが想定した、理想的なコンビネーション攻撃である。


『御崎さん! エネルギー充填完了です!』


 バスタークロスから飛び込んでくる、御崎の部下からの通信。

 見れば、敵を挟んだ向こうで停止し、攻撃の機を伺うバスタークロスの姿があった。

 ルーフに装着された大型エナジーキャノンの砲身やエネルギーケーブルが青く発光し、エネルギーが飽和状態までチャージされていることを示している。

 カニドラスは疾走するガンスプリンターを追うことに夢中で、迫る危機に全く気付いていない。


「私がコイツをそっちに向かせるから、その瞬間にぶち込んでやりなさい!」

「ええっ! どうやって!?」

「こうするに決まってるでしょ!」


 カニドラスの火炎放射の一瞬の隙をつき、車を勢いよくUターンさせる御崎。

 丁度敵に向かっていくような形だ。


「高瀬くんシールド!」

「ああ! はい!」


 御崎の簡潔過ぎる指示に、忠実かつ迅速に従ってスイッチをオンする蒼。

 再び迫る業火に、シールド全開で突っ込んでいく。

 蒼単独時のそれを上回る強度のレーザーシールドが車体を覆い、灼熱の放射を貫いていくガンスプリンター。


「股下抜けるわよ!」

「やっぱりそうなるんですね!!」


 未舗装の白い砂利道を蹴りつけながら、カニドラスの足の間をアクセル全開で駆け抜ける。


「今よ!」


 ガンスプリンターを追うべく、ぐるりと後ろを向いたカニドラスの胸元目がけ、バスタークロスの「エナジーブラスト」が放たれた。

 カニドラスは突然の攻撃に全く対応できないまま、上半身を消し飛ばされ、そのまま黒い粒子をまき散らしながら崩れ落ちていった。


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