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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第6話:転入生は異次元少女




 ティナが光風高校にやって来た。

 ウボームに故郷を滅ぼされ、SSTに保護された異次元人としてである。

 そのせいで、ティナは初日から注目の的。

 授業風景を撮影すべく、マスコミのカメラが廊下を埋めている。

 普通そういった情報は伏せておくものだが、彼女のあまりに特徴的な角、そして髪や瞳の色等、異質な要素が多すぎるため、SSTは隠し通すことを不可能と判断。

 最初から彼女の出自を明らかにし、あえて注目を集めることでウボームの奇襲を防ぐという寸法である。

 何より、攻められると意外と脆弱なSST本部と違い、大城市、中でも光風高校は最新鋭の対ゼルロイド防衛機能を備えるため、匿うには最適な場所なのだ。

 また、未だ何をしているのかあまり知られていないSSTとしても、彼女を看板娘とし、ゼルロイドや異次元軍から日本を守るというイメージを定着させる狙いもある。


 現状、報道は白熱しているが、ひと月もすれば落ち着き、光風高校も普段の静けさを取り戻す見込みである。仮に熱が冷めなくとも、恐らくSSTが圧をかけて報道を鎮静化させることだろう。


「わー! ティナちゃん可愛い~」

「勉強分かる? 教えてあげようか?」

「放課後遊びに行こうよ~」


 報道陣だけではない。

 光風高校の同級生たちも白熱している。

 なにせ異次元からの転入生。しかも可愛らしい。

 男女関わらず大人気となり、教室で、食堂で、廊下、校庭、etc…。あらゆる場所で取り囲まれている。

 一応、クラスメイトの詩織がお目付け役兼ボディーガードとしてついているが、人の波に流され、ティナの傍に近づくことが出来ないようだ。


「うわ~大人気だなティナちゃん」

「本人怯えてるけど大丈夫なのかしら……」


 その喧騒を一つ上の階から眺める蒼と香子。

 何とかしてやりたいが、二人が行ったところで何が出来るでもない。

 今の二人としては、この異次元少女ブームが早く去ることを祈るばかりである。


「おいーっす! 今食堂空いてるぞ! 昼飯食いに行こう!」


 ティナが食堂から中庭に移動したため、丁度、食堂が空いたようだ。

 響からの誘いがかかったので、二人は揉みくちゃの二人を放置し、魔法少女部上級生組は食堂へと歩き去っていった。




■ ■ ■ ■ ■




「しかしあいつも大変だなぁ! ウチらこんなとこでノンビリ飯食ってていいのかね?」

「行ってもどうにもならんだろ……。まあ1~2週間もすれば騒動も収まるだろうし、それまでは辛抱してもらうしかないわな」


 蒼はラーメン定食、香子は和風スパゲティ、響はカツカレーと牛丼のセットを注文し、人気の少なくなった食堂でゆったりと食事をとる。

 なにせガラガラなので、6人掛けのボックス席を広々と使うことが出来るのだ。


「そういえばさ」


 響がカツカレー頬張りながら、蒼の方を向く。


「ウチのサポートバードとスーツはいつできるんだ? 結構楽しみにしてるんだけど」


 響が魔法少女部に入ってから早2週間。

 サポートバードやコンバータースーツ、腕時計型デバイス等のサポートアイテムは未だ完成していない。

 詩織や香子のそれは1週間とかからず完成していたのだが、それに比べると響のアイテムは妙に遅れている。


 蒼はドキッと肩を跳ねさせ「あんまり大声で言うなよ……」と辺りを軽く見渡してから、人がいないのを確認し、頭を掻きながら話し始める。


「設計はしてるんだけどさ……。俺、パンチ主体の戦闘ってのを考えたこともなかったから、武器のイメージがイマイチ湧かないんだよ……」

「確かにアタシ達殴る、蹴るで戦ったこと殆どないわね」


 蒼の体はあくまでも普通の高校生。その強度を考えれば、殴る、蹴るではゼルロイドに全く歯が立たない。むしろ危険極まりない。

 そんな蒼からすれば、拳で戦う武器など想像もつかない。

 想像がつかないということは、武器の形状や使い方も思い浮かばないということだ。


「一応国内外のパンチ強化系武器調べて設計してみたんだけど、なんかしっくりこないんだよなぁ……」


 タブレットを取り出し、“設計図”フォルダを開く蒼。

 レイズイーグル、ブレードホークの仮設計図がそれぞれ2枚ずつしかないのに対し響用サポートバードのそれは既に10枚近く、蒼の苦戦が伺える。


「うーん……ウチにはどれも良いように思うけど」


 シンプルに巨大な拳を備え、エネルギーを纏った打撃を繰り出すもの、ブースターやシールドで攻防をバランスよく強化するもの、変わり種では、手甲鉤や、デュエリング・シールド等の変わった武器をモチーフとしたものもある。


「響が良くても俺が使いこなせるか分かんねぇもん。お前のエネルギー場ってクセが強すぎるんだよなぁ……」


 光線系の武器はおろか、ブレードにすら一切強化がかからず、打撃とシールドにのみ極めて強力なバフがかかるという響のエネルギー場の特性も設計の難しさに拍車をかける。

 あくまでもサポートバードは蒼が魔法少女を支援するための強化装備であり、響だけが使いこなせても意味が無いのだ。

 一応ブレードに関しては、アームブレードV2を使えば、蒼のエネルギーのみで敵を切断することが可能なのだが、それではただの劣化ブレードホーク&ブレードフォーメーションに仕上がってしまう。

 となると、結局拳の武器となるのだが、格闘技経験はゼロ、喧嘩も殆どしたことのない蒼が巨大なゼルロイドを相手取り、拳の応酬が出来るかと言えば、無理な相談である。


「そういうわけで、もう少し待ってもらいたいんだよね」


 手を合わせ、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる蒼。

 そんな蒼の話を、牛丼をまるでお茶漬けを啜るかのような速度で平らげながら聞いていた響。

 空の丼をテーブルにドンと置くと、


「つまりさ、蒼が格闘技マスターしたらいいんだろ?」


 と、あまりにも画期的で、脳筋的な解決法をズバリと言い放った。

 ポカンとする蒼と香子。


「お前ら詩織と一緒に基礎体力トレーニングしてるらしいじゃんか。それに格闘技のトレーニング混ぜたらいいじゃん。蒼も強くなれて、サポートバードも完成して、ウチも強くなれる。完璧だろ?」


 だが、間違いなく正論であった。


「大体お前素が弱っちいじゃん。そんなだからゼルロイド相手に単独白星取れないんだろ」


 響の悪意のない罵倒が蒼に突き刺さる。

 これまで彼が向き合ってこなかった事実。自身のひ弱さと向き合うときがとうとう訪れたのだ。

 響の強力無比の近接攻撃と、防御力。

 身に付ければ、周囲を破壊できない市街地戦や、光線の効果が薄い敵、守りの固い敵との戦いで必ず役に立つだろう。


「分かった。そのトレーニング、受けて立つ!」

「よし! それじゃあ今日、4人で近接格闘術のトレーニングだ!」

「ええっ!! アタシも!?」


 思わぬ巻き添えを食った者、全く知らないままに巻き込まれている者を加えつつ、魔法少女部の活動に新たな項目が追加されたのだった。


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