第39話:4人目の部員
“謎のウィングヒーロー再び! 魔法少女と共闘!?”
“巨大ゼルロイド 対 魔法少女&装翼勇者”
“対ゼルロイド防衛チーム SST発足!”
「こんな感じでどうかしら! 明日の各社のトップニュースになる予定よ!」
侵生対本部会議室。
蒼と詩織に向かって、御崎が嬉しそうにニュース記事のサンプルを見せている。
深夜の2時に。
「どうって言われましてもね……。お好きにどうぞとしか」
「眠いっす……」
蒼も、詩織も寝ぼけ眼である。
巨大ゼルロイドを撃破した後、例によって侵生対本部へ護送された魔法少女部+α。
疲れ果てた蒼達は治療を受けたのち、医務室のベッドで気分良く眠っていたのだが、突然飛び込んできた御崎に叩き起こされたのだ。
ちなみに、香子は疲労が限界を超えていたらしく、全く起きる素振りを見せなかった。
「何か気が付かない!?」
お前がまずこっちの機嫌に気付けよと思いつつ、霞む視界で新聞記事に目を通していく二人。
「ああ、SST……。侵生対の存在公にするんすね」
「ああ~」
「「ではおやすみなさーい……」」
「いや、ちょっと待ってよ!!」
彼女が見てほしかった部分をサクッと探り当て、早急にベッドへ戻ろうとする二人の前に回り込む御崎。
「もっと感動しない!? 世界を守るためにひっそり戦ってきた秘密組織が、人々を守るために立ち上がるのよ!」
「「……」」
何が悲しくて死ぬほど疲れた日の夜中に、テンションが壊れたアラサーに絡まれなければならないのか、欠伸なのか、溜め息なのか分からない吐息を漏らしつつ、一旦席につく二人。
「なんでこんなタイミングで防衛チームなんか組織してるんすか。眠いですけど」
「それはね、今回のカライン騒動、巨大ゼルロイド騒動を受けて、秘密裏に戦ったり、設備を売り込んだりするのが煩わしいと思ったからよ」
「これでもっと大っぴらにゼルロイドと戦ったり、魔法少女を支援できるわけですね!」
「俺たちの戦いはこれからだな!」
「「おやすみなさーい」」
「ちょっと!」
「御崎さん。今日はこの辺にしておいてあげましょうよ……」
流石に見かねたのか、宮野が部屋に入ってきて、興奮する御崎を制止した。
眼の下に巨大な隈が出来ているあたり、SSTの組織、公表のため、彼もまた色々と戦っていたのだろう。
宮野に軽く会釈し、二人は会議室を脱出した。
「なんか中途半端に目が覚めちゃったわ俺……」
「同じくです……。小腹も減りました」
会議中はあんなにも眠かったのに、いざ廊下を歩いていると眠気が引く。無駄な会議あるあるである。
「確か食堂にカップラーメン自販機あるって言ってたな。夜食と洒落込むかい?」
「太るのは嫌ですが……。今日はカロリー使いまくった気もしますし、ご一緒しますよ」
■ ■ ■ ■ ■
「むぉ? お前ら起きてたのか」
節電のため、殆どの電気が消えている食堂の一角に先客がいた。
カップそばをずるずると啜りながら、焼きおにぎりをもさもさと頬張っている。
「響さん!」
「おお! 赤の魔法少女の人! 怪我は大丈夫かい?」
二人も好みの夜食を買い、響の座るテーブルに相席する。
「おかげさまで体力、気力ともにバッチリ回復したよ。助けてくれてありがとな。詩織と……」
「俺は高瀬 蒼。よろしく」
「ウチは佐山 響ってんだ。よろしくな!」
カップ麺越しに握手を交わす二人。
「しかし、お前すげぇ武器持ってんだな。魔法少女でもないのにアレだけデカいゼルロイドをボコボコにしちまうなんて」
「まあ、殆ど笠原のエネルギー場のおかげだけどね。褒めてもらって光栄だよ」
「高瀬先輩は凄いんですよ! 強くて、私たちの戦いを支援してくれるし、私たちの強化装備なんかも作ってくれるんです! あと、無茶苦茶再生します」
「い……いや、俺単独では敵に押されっぱなしだけどな」
あまり持ち上げられるのに慣れていないのか、蒼は気恥しそうに麺を啜る。
「そういえば、お前らどういう関係で一緒に戦ってるんだ? このデカい基地のチームか何かなのか?」
「いえ、私たち光風高校の魔法少女部って部活動のメンバーなんですよ。三人で仲良く大城市の平和守ってます」
「え!! お前ら光風高校なの? ウチも光風高校だよ」
「「え!?」」
魔法少女部にめでたく4人目のメンバーが加わった瞬間であった。





