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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第37話:脱出!




「うわあ! 何!?」

「主人失って気でも触れたか!?」


 赤い牢獄の全面が激しく波打ち、揺れる。

 魔法少女達を捕らえたカプセルが次々と割れ、解放された彼女たちは力なく横たわる。

 そして、至る所からニョキニョキと突起が生えてきたかと思うと、詩織たちに向かって一直線に伸びてきた。


「アームブレード!」

「フレイムナックル!」


 剣で、拳で、それを次々と切り、殴り潰し、猛攻を耐える二人。

 だが、それも束の間。二人は瞬く間に消耗し、全身をネバネバした触手で拘束されてしまった。

 見れば、他の魔法少女達も同様に触手の渦に飲まれ、蜘蛛の巣の如く縦横無尽に張り巡らされた無数の触手に縛り付けられている。


「くっ……! ダメだ……! 力が出せねぇ!」


 パワー自慢の響とはいえ、散々エネルギーを吸われ、消耗し尽くした現状では、触手による拘束も脱出することが出来ない。


 二人がもがいていると、赤い空間に“雨”が降り始めた。


「きゃあああああ!!」

「ぐああああ!!」


 ウメボシイソギンチャクゼルロイドの“食事”が始まったのだ。

魔法少女を捕らえ、家畜の如くエネルギーをチマチマと搾り取るような、カラインがやらせていたそれとはまったく異なる。本来のゼルロイドとしての食事である。

 高純度のマイナスエネルギーと、酸の雨が降り注ぐ。

 バラバラになったカラインの残骸は、あっという間に溶け、床へと染み込んでいった。


「ひい!! このままじゃ私たちもああなっちゃいます!!」

「でも……打つ手がもうねぇぜ……!!」


 辺りを見渡すが、もう戦う力を残した魔法少女はいない。

 香子も辛うじて身動ぎし、抵抗しようとしているが、やはり、心身共にボロボロの彼女にも余力はない。


(先輩……! ごめんなさい……。私たちももうすぐそっちに行きます……)


 万策尽き、詩織が悲痛な覚悟を決めた時。

 突然、壁の一角が激しく崩落したかと思うと、巨大な円盤のようなものが姿を現した。

 そして、その穴から飛来する二つの影。


「ブレードホーク! レイズイーグル!」


 詩織の声に応えるかのように、魔法少女達を絡め取る触手の網を次々と切断し、打ち抜いていく二機。

 レイズイーグルは香子の元に向かうと、内部に貯蔵された彼女の余剰エネルギーを噴射し、回復を図る。

 ブレードホークは酸の雨をものともせず、再び襲ってくる触手を迎え撃ち、切り刻んでいく。


「いけーっ!! ブレードホーク!」


 パートナーとの再会に、詩織の戦意が再び湧き上がる。

 当然だが、侵生対の高速掘削マシンが引き連れてきたのは二機だけでない。


「助けに来たぞ! ……ってなんじゃこりゃ!? 痛っ!」


 マシンから勢いよく飛び出してきたものの、降り注ぐ酸に怯み、転げ落ちる男。

 詩織と香子の前で無残な死を遂げたはずの蒼であった。

 酸によって溶ける皮膚が白い光を噴き出しながら、溶けた傍から再生していく。

 傍から見ると、全身に光を纏いながら現れたようだ。


「先輩!!」

「そ……蒼!! 蒼――――!」


 香子がまるで息を吹き返したかの如く叫び声をあげ、彼女の瞳に、光が戻る。


「すまん! 遅くなった! おっと!!」


 香子が勢いよく駆け寄り、飛びかかるように蒼に抱き着く。


「もう蒼に会えないって思った……。本当に死んじゃったかと思った……!! 蒼!!」

「笠原……。心配かけて悪かったよ……。ちょっと待って痛い! やっぱ痛いよこの雨!! ハゲる!!」


 やはり、と言うべきか、再生能力があるとはいえ、痛みへの耐性は所詮生身の高校男子なのであった。


「よく分からんが、感動の再開は後だ! 早くここから逃げないとみんな溶かされちまう!」


 捕えられていた魔法少女をまとめて担ぎながら、響が掘削マシンへと走っていく。

 上空ではブレードホークが奮闘しているが、やはり数の暴力をもって、じわじわと蒼達へ襲い掛かって来る触手が増えてきた。


「アームブレード合体! でりゃああ!!」


 さっきまで詩織に自身の形見だの、墓だのと扱われていたブレードを呼び戻し、飛来する触手を切り捨てる蒼。

 蒼が加わったとはいえ、劣勢に違いはない。

 

「みんな! 掘削マシンに乗ってくれ! キャリアースペースに10数人は乗れる!」


 蒼が手直にいる魔法少女二人に肩を貸し、マシンへと運んでいく。


「動けない奴はウチが担いで行く!」


 消耗しているとはいえ、やはりパワー型。

 意識のない魔法少女を両脇に抱え、さらに背に一人おぶった状態で、蒼を抜き去っていく響。

 赤の魔法少女のパワーを間近で観察できた蒼は、感嘆の声を上げて見とれている。

 肩を貸された魔法少女達は少し居心地が悪そうだ。




 響が把握している限りの全員を、何とか掘削マシンに載せ、緊急発進。

 蒼がコクピット内のケーブルをブレイブウィングに接続すると、マシン先端のドリルが白いエネルギー粒子を纏いながら勢いよく回転を始めた。

 赤いトンネルは少しずつ再生し始めていたが、マシンはそれをガリガリと破壊しながら進む。

 車体のほぼ全体が天然スペースチタニウム製なのだから、この突破力も納得だ。

 やがてトンネルは岩盤に変わり、蒼が敵の体内から脱出に成功したことを告げる。

 赤い球体。ウメボシイソギンチャクゼルロイド幼体が追ってきたが、これは蒼のエナジーキャノンと、後を追って脱出してきたサポートバード達がこれを蹴散らした。


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