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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第35話:囚われの赤




「ウチは響。よろしく……なんて言ってる場合じゃねぇか」


 そう言いながら、苦笑いする赤い衣装をまとった少女。

 赤やオレンジを基調とした、動きやすそうな、というより露出の多い服。

 そこから覗く健康的な褐色の肌。

 そして腰に輝く深紅の宝玉。

 彼女こそが赤の魔法少女。佐山 響(さやま ひびき)である。

 響は詩織や香子が囚われている場所の向い、やや上方にあるカプセルの中で、両手両足を壁に埋め込まれたような姿勢で拘束されていた。


「響さんも魔法少女なんですか? 随分すごい姿勢で捕まってますけど大丈夫ですか?」

「ああ、正直大丈夫じゃねぇ。動けないわ、力は吸われるわ、気まぐれで半殺しにされるわで散々だ。でもまあ、他の連中に比べたらウチはまだマシな状況だ」


 響の位置からは、この空間に囚われた魔法少女達の様子が良く見えるらしく、カラインが何をしているのかが大体分かるそうだ。

 現状、殆どの魔法少女が香子と同じように力を吸われ、ほぼ裸に近い状態でぐったりとしているらしい。

 回復力と耐久力が自慢の響は、多少エネルギーを吸われたり、マイナスエネルギーで分解された程度なら、心身ともにすぐ復活できる。

 しかし、多くの魔法少女は最初の「食事」で戦う力を失い、あとは僅かに回復しては吸われ、回復しては吸われを繰り返し、やがてカラインの姿に怯え、二度と抵抗しなくなってしまうという。


「あの黒い奴、魔法少女のエネルギーをマイナスエネルギーで分解した時に出る物質が大好物らしくて、それが目当てでウチらを捕まえてんだ。それに、恐怖や苦痛の感情すらもこの空間に吸収させててな、忌々しいが、ウチらは家畜兼ゼルロイドの燃料源ってところだ」


 脱力気味に話すが、彼女の瞳には、激しい怒りや嫌悪感が滲んでいた。


「この空間……やっぱりゼルロイドで出来てるんですか?」

「ああ、多分な。実際、壁はウチの攻撃で分解できた。まあ、結局脱出には失敗しちまってこのザマだけどな」


 自嘲気味に笑いながら、埋め込まれた手足をモゾモゾと動かして見せる響。

 その壁はまるで生き物のように動きながら、彼女の四肢をよりガッチリと固定する。


「ちなみに、黒い奴は今外に出てんぞ。定期的に外に出ては、獲物を連れてきやがる。悪趣味な奴だ」

「脱出するなら、今ってことですか?」

「さあな。仮にお仲間を見捨てて行くとして、ウチらを関知して壁から攻撃してくる触手や、飛び回ってる赤いのを掻い潜って、クソみてぇに固くて何メートルあんのかも分からねぇ壁をくり抜いていける自信があるならやってみな。失敗したらウチみたいなことになるがな」


 「お仲間」と言われ、ふと香子に振り返るが、香子は未だ焦点の定まらない目で虚空を見つめている。

 コンバータースーツとデバイスがバチバチと火花を散らし、システムに致命的な損傷を受けているのが見て取れた。

 彼女を背負い、響の言うギミックを乗り越えて逃げるのは不可能だろう。

それだけではない、響や、他の魔法少女達も連れて脱出しなければならないのだ。


「何か策があるなら、ウチも出来る範囲で協力するぜ。脱出にせよ、黒い奴に一矢報いるにせよ」

「脱出……反撃……」


 響の言葉に、思わず考え込む詩織。

 

(私一人で脱出するわけにはいかない……。むしろカラインを倒して、ここにいる魔法少女みんなの回復を待てば、脱出の可能性はあるかも……)


 自分が使える駒は手首から出る超短刀、ライトニングナイフのみ。使えて数分。

 ブレードホークには先ほどから信号を送っているが、飛来しないあたり、電波が通じていないか、またはよほどの障害があるかのどちらかだろう。


「あとは……」


 ちょうど響と詩織の間の床に突き立った蒼の形見のアームブレードくらいだろうか。

 蒼が最期に放った一撃で、あの刀身がカラインを切り裂くのに十分な威力があることは分かっている。

 半端な傷では再生してしまうカラインを倒せる武器は、この現状においてアレしかない。

 詩織はデバイスを操作し、コンバータースーツの維持、そして攻撃エネルギー充填機能以外のシステムを強制停止した。


「先輩……。最後にもう一度、頼らせてもらいます……」


 詩織はそう言って、ブレードに手を合わせると、響にある作戦を告げた。




■ ■ ■ ■ ■




「高瀬くん……無事だったのね……」

「御崎先生! 大丈夫ですか!?」


 燃える家屋、砕けた道路、そして炎上する侵生対のバン。

 部下たちに肩を借りながら、御崎が這う這うの体で歩いてくる。


「二人は……どうしたの?」

「カラインと赤い触手に攫われました。さっきまでは二人のデバイスと通信できたんで、まだ無事だとは思うんですけど、今は全く受信できません。下手にカラインを刺激するとまずいので、こっちからの音声通信は止めてあります」

「そんな……!」


 御崎の目がかっと見開かれる。


「ただ、敵の本拠地は分かりました。問題はどう侵入するか、そしてどうやって二人を救出して脱出するか、または、敵を殲滅するかです」


 蒼はあくまでも冷静に、デバイスから飛ばしたデータをスマートフォンに送り、マップを展開する。


「敵の殲滅は正直、相手のサイズ、そして地形的に困難です。ただ、カラインを潰せば脅威度は大幅に減ると思われます。ですから、奇襲で突入し、素早くカラインを撃破し、二人を助け、離脱。その後準備を整えた上で、俺と笠原の集中砲火であの敵、超巨大ウメボシイソギンチャク型ゼルロイドを破壊すべきかと」


 押し寄せる情報に、御崎がキョトンとしているのを見ると、蒼は


「侵生体の機材で、高速で穴を掘れるもの貸してください」


 と、極めてシンプルに言い換えた。



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