表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/161

第34話:赤の大牢獄




赤い、ただひたすらに赤い空間。


「ハァ!! アハハ……アハハハハハ!! 美味しくない人殺せた!」


 腹に刺さったアームブレードを無理やり引き抜き、歓喜の雄叫びを上げるカライン。

 放り棄てられたブレードが赤い地面に、まるで墓標のように突き立っている。

 その墓標のちょうど正面。赤い壁に埋め込まれた二つの透明な球体カプセルの中に、詩織と香子が捕らえられていた。


「先輩……私……また……! ごめんなさい……ごめんなさい……!」

「よくも!! よくも蒼を!!」


 カラインと初めて遭遇した時と同じく、蒼を助けることが出来なかった自分を責め続ける詩織。

 友を目の前で遊ぶように殺されたことへの怒りを露にし、カプセルを内側から力の限り叩き続ける香子。


 カラインはそんな二人の様子を満足そうに眺めると、香子を閉じ込めてあるカプセルの前まで、滑るように移動してきた。


「アハハハハ…… あなたのお友達殺してしまったわ。残念ね」

「ふざけるな!! 殺す! 殺してやる!!」


 香子は手に血が滲むのも構わず、怒りに身を任せ、カプセルを幾度も殴る。


「アハハハハ! あなたはいいご飯になりそうね」

「何ですって!?」

「はい! やっちゃって!」


 カラインが指を鳴らすと、香子のカプセル内に赤いガスが噴出した。


「うああああ!!」


コンバータースーツが激しくスパークし、バチバチと音を立てながら分解していく。

その全身が焼けるような痛みに悶絶する香子。


(苦しい……! 体が……溶かされてる……!?)


「アハハハハ! 始まったわ!」


 香子の全身から、赤黒い、血のようなものが滲み出たかと思うと、赤いガスと共にカプセルの上に付いた穴から吸い出されていった。


「くっ……! はぁ……はぁ……! アタシに……何をしたの!?」

「何って? ご飯よ。この子の。そしてこれからは私のご飯」


 そう言いながら、カラインは香子のカプセルに手を当てる。


「何をするつもり……!!」

「だから、私のご飯よ」

「ひっ……! い、嫌っ!!」


 カプセル内に、今度は黒いガスが充満したかと思うと、香子の青いエネルギーが、カラインの掌に吸い上げられ始めた。


「きゃああああ!!」


 再び、カプセルの中がバチバチとスパークし、香子の悲鳴が響き渡った。

 詩織はその様を、震えながら見ていることしか出来なかった。




■ ■ ■ ■ ■




「先輩! 先輩!!」

「蒼……助けて……蒼……」


 カラインによる「ご飯」が終わる頃には、香子のコンバータースーツは殆どが分解し、彼女は足腰立たない程衰弱していた。

 カラインは香子のエネルギーを吸った後、満足げにどこかへ去った。

 その隙に何とか脱出の策を練ろうと思ったが、香子は意識が朦朧としているのか、虚ろな目で蒼に助けを求めるのみとなってしまっている。

 幸いにも、宝玉は破壊されていないようだが、再び香子が満足に戦える状態になるまで、どれほどかかるか分かったものではない。


(ここが……カラインの巣……)


 香子の他にも、助けを求める声、苦しそうなうめき声が、微かではあるが聞こえてくる。

 天井や、壁、地面から生えたカプセルに、自分たちと同じ、魔法少女が閉じ込められているのだ。

 詩織はその誰かに協力を求めようとしたが、自分より体力の残っている者がいるようにも思えない。


(餌場……いえ、まるで牧場か養鶏場……。酷い……)


 この空間では、変身も、能力の使用も出来ず、捕えられた魔法少女は、彼女や、この空間の餌として、エネルギーを奪われ続けるのだ。

 マジックコンバータースーツの機能は僅かに使え、ライトニングナイフは恐らく使用可能だ。

しかし、それでカプセルを破壊できたとして、現状では脱出は困難。敵に見つかれば、すぐに力を吸われ、逃れる術は永遠に失われてしまうだろう。


「おい……。そこのお前……」


 ふと、頭上から誰かの声が聞こえた。




■ ■ ■ ■ ■




『蒼……助けて……助けて……』


地下水路に横たわる、全身が抉れ、潰された蒼の肉体。

その腕に付けられたデバイスから、香子の助けを呼ぶ声が聞こえる。

 閉鎖された地下空間。その声は水音に混じり、幾重にも反響した。

 その反響に、風を切る音が混じったかと思うと、その音はやがて大気を震わせる轟音に代わり、やがて銀色の輝きとなって蒼の下へ飛来した。


 「エナジーシャワー」


 蒼のデバイスから発せられた機械的な音声に呼応し、ブレイブウィングからエナジーシャワーが照射される。

 その眩い輝きの中で、捻じれた胴体が、手足が、首が、粉砕された骨、内臓も、見る見るうちに再生されていく。


「く……おぉ……」


 体内で発生した白い再生エネルギーを口から漏らしながら、蒼は目を覚ます。


「死ぬかと思った……!」


 奇跡か、それとも彼の特異な性質が生んだ必然か、蒼はよろけながらも再び立ち上がった。

 香子からの通信が、彼の意識を完全に覚醒させる。

 彼女からの悲痛な声に混じり、詩織の声も聞こえる。詩織はまだ無事なようだが、いつ彼女が敵の手にかかるか分かったものではない。


「笠原……! 新里! 絶対助ける! ウィング合体!」


 ブレイブウィングと合体し、蒼は地上へと飛び上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ