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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第34話:蒼絞殺刑




「エナジーキャノン!!」


 暗闇を蒼の白色光線が眩く照らす。

 隣り合った二つの影。カライン・黒の魔法少女と、カラノイド・藍色の魔法少女へ放たれたそれは、いとも容易く回避され、闇に解けるように消えていった。


「今日こそあなたを殺すわ」


 魔弾を放ちながら、蒼に迫るカライン。


「それはこっちのセリフだ!!」


 ブレードを展開し、迎え撃つ蒼。




「アハハハハハハ!!」

「くっ……!! どこまでも私たちをコケにしてくれるわね!!」

「ここで決着をつけてやりましょう!!」


 詩織、香子もまた、カラノイドと戦闘を開始した。




■ ■ ■ ■ ■




「何!? どういうこと!」

「分かりません……何らかの妨害か、機器の故障か……」


 一方。地上でも異変が起きていた。

 これまではっきりと交信できていた無線が、激しいノイズによって途絶えたのだ。

 同時に、大城市の、丁度三人が潜っている地点を含む、辺り一帯に巨大なマイナスエネルギー反応が検出され、ゼルロイド警報が作動したのだ。


「地下で戦闘が始まったんだわ!」


 強力なマイナスエネルギーは、時として精密機器に影響を与える。

 しかし、ゼルロイド監視システムには現在、地下のゼルロイドを検知できた実績はない。

それが今回、ここまでに激しく反応したとなると、よほど強力なエネルギーを持ったゼルロイドである。


「この反応は異常よ! このエリアの住民を早急に避難させて!」

「街の地下河川で、照明を点けられる箇所があるなら、全部点けるように言って! あの子たちの戦闘をサポートするのよ!」


 御崎が同乗する部下たちに鋭く指示を飛ばす。

 すぐさま警察、水道局へ連絡が飛び、町中に緊急サイレンが鳴り響いた。


「御崎さん! あれは!?」


 運転席の部下が指さした先、どこから来たのかも分からない巨大な触手が何本も、まるで茨の如く地を這い、マンホールを突き破って地中へ潜り込んでいくではないか。


「きゃあ!」


 横合いの路地裏から現れた触手が、邪魔だとばかりに、御崎達の乗った車を跳ね除け、車は勢いよく横転。通りの廃店舗に突き刺さり、大破した。




■ ■ ■ ■ ■




「御崎先生! カライン、カラノイドと遭遇、交戦中です! 駄目だ! 通じてない!」

「アハハハハ! 死になさい!」


 鎖、魔弾、そして新技と思われる剣を乱れ撃ちしつつ襲い来るカラインを、センサーとサブブースタを駆使して、避け、受け流し、ブレードで反撃しながら、無線に叫ぶ蒼。

 しかし、ザーザーといったノイズしか聞こえず、相手にこちらの声が届いているかも分からない。


「カラインのエネルギー場がマイナスエネルギーに変質してる……?」


 初めて交戦した時はプラスエネルギーで形成されていたカラインの黒いエネルギー場。

 しかし、今、辺りを黒く覆っているのは、マイナスエネルギーなのだ。

 詩織と香子は、コンバータースーツに守られているとはいえ、体力を激しく消耗し、二対一ながら、有利な戦いを展開できずにいる。


「出て来る度に迷惑な能力身に着けやがる……! 本当に訳の分からない生態しやがって……! このっ!!」


 ひたすらに食い、マイナスエネルギーを吸収し、増殖する。そんなシンプルなゼルロイドのそれとは違い、カラインの生態は謎が多すぎる。

 そもそも生態以前に、何者なのかさえ分からない。

 しかし、戦うたびに新たな能力を手に入れ、蒼達を苦しめる。


「アハハハハハ! 捕まえた! 死んで!」


 地上から伸びた黒い鎖が、蒼の四肢を拘束した。

彼を串刺しにするべく、剣を片手に飛びかかるカライン。


「でもな! こっちだって装備のアップデートしてんだよ!!」


 蒼の叫びと共に、彼の両腕を白い光が稲妻の如く走り抜ける。

 その光が黒い鎖に達した瞬間、「バチッ!」っという快音が響き、彼の腕を戒める鎖が弾け飛んだ。


「アームブレード!!」


 飛来するカライン目掛け、蒼は力任せに両腕のブレードを突き出した。


「アギャアアアアアア!!」


 光の剣がカラインの腕を、肩を、腹を貫き、激しいスパークと共に、その身体が3つに切断される。


「エナジーキャノン!」


 間髪入れずに放たれた光線が、その身を焼き尽くす。かに思えたその時、堰の先に広がる闇の先から溢れ出てきた無数の赤い球体が、カラインを幾重にも覆い、盾となってその攻撃を防いだ。


「なっ!?」


「きゃあ!!」

「うああ!」


 思わぬ乱入に蒼が驚いている間に、詩織と香子の戦いにも乱入者が襲い掛かっていた。

 カラノイドに意識を取られていた二人は、背後から現れたあの巨大触手に隙を突かれ、捕えられてしまったのだ。


「新里! 笠原! 今助ける! エナジーキャノン!」


 二人を助けるべく、蒼は触手目がけて光線を放つ。

 しかし、ウネウネと動き回る触手は、その攻撃をヒラリと躱してのけた。


「くそっ! この! この!!」


 次々と光線を発射し、二人を助け出そうとする蒼だが、如何せん、当たらない。

 先読みセンサーが、その変則的な動きを計算できないのだ。


「アハハハハハハ!!」

「よくもやってくれたわ! 殺す!!」

「うおっ! くっ……」


 それどころか、カラノイドが蒼に狙いを定め、切り刻んだはずのカラインも再生し、戦況が彼にとって圧倒的不利に傾いた。


「先輩! 逃げてください! ああっ!」

「くぅ!! はぁ……はぁ……! 早く逃げて!」


 後ろから悲鳴が聞こえるが、蒼は黙殺した。

 もとより、二人を助けず逃げるなどという選択肢は存在しない。


「死んで! やってしまいなさい!」

「アハハハ!」


 勢いを取り戻した二体の挟み撃ちを素早く回避し、詩織と香子を捕える触手を攻撃。さらに、触手、無数の赤玉の攻撃をも避け、再び二人を救うべく攻撃を放つ。

 センサーは周辺にいる敵を捕捉し、攻撃を回避する補助を行ってくれ、理論上その全てを回避できるが、それはあくまでも机上の空論。

 相手の先の行動を読む計算があっさりと狂わされたのと同じく、刻一刻とパターンを変えて襲い来る複数の敵を全て捌くなど、到底不可能なことである。


「でりゃああああ!!」

「アハハハハハハ! ハハハハ……」


 しかし、それでも蒼は死力を尽くし、カラノイドを両断。そのままエナジーキャノンで焼き尽くした。

 襲い来る触手を次々切り捌き、カラインの放つ魔弾をも防ぎ、避け続けた。


「うぐああああああ!!」


 だが、それも数分が限度であった。

 堰の向こうから伸びてきた新手の触手に挟み撃ちにされ、とうとう彼も捕えられてしまったのだ。


「やっと殺せるのね」


 蒼の鬼気迫る戦闘に、恐怖を抱いたのか、一歩下がったところから魔弾を連射していたカラインが、ゆっくりと彼に迫る。


「やめて! 蒼に手を出さないで!!」


 香子が懇願するように叫ぶ。しかし、カラインはそれを気にも留めず、締め上げられる蒼を楽しそうに見上げている。


「あなたは切ると痛いの出すから、ねじって潰すのよ」


 彼女がにっこりと笑うと同時に、蒼を拘束する触手が、強く捻じれ始めた


「お……ぁあ……」


 蒼の身体がミシミシと軋みを上げ、あらぬ方向へと捩られていく。

 既に、触手の毒に神経を侵された彼は、抵抗もできないまま、敵の為すがままに破壊され始める。

 ゴキ……ゴキ……と、骨が折れ、砕ける音がするたび、蒼の口から大量の血が噴き出す。

 もはや声を出すことも出来ない。


「アハハハハハハハハ!!」


 そして、カラインの思惑通り、かつて彼女を退けた白く激しい光が、蒼の身体から噴き出すこともなかった。


「せん……ぱい……! ううっ……うぅ……」


 詩織は、そのあまりに残酷な姿を直視できず、目を瞑ったが、ゴキゴキという音が聞こえるたび、溢れ出る涙と嗚咽を抑えられなかった。


「……ド……ト」


 闇に包まれた視界の中、骨が砕ける音に混じり、蒼の声が聞こえた気がした。

 直後、軽い衝撃が彼女の身を揺すった。




「あえ? あぐああ!!」


 完全に勝った気で、蒼を嬲って楽しんでいたカラインの腹に深々と刺さるアームブレード。

 そして、詩織を捕えた触手にも、それが突き立っていた。


「せ……先輩……?」


「アハハハハハハハハハ!! もう殺す! 殺す!殺す殺す殺す!!」


 怒り狂ったカラインの声に呼応し、触手がひと際強く、勢いよく、蒼の身体を締め付けた。


「……ぉ」


 グキッ……。

 一際大きな音が響くと同時に、蒼を締め上げていた触手がニョロニョロと離れていく。

 ガコン! という音と共に蒼の背に合体していたテリトリアルユニットが外れ、落ちた。

 装着していたライトは、電力を喪失し、消え、辺りは完全な闇に包まれた。


「いやああああああああああ!! 蒼! 蒼!!」


 香子が半狂乱になりながら、身を振り、彼の下へ向かおうとする。

 しかし、彼女を戒める赤い触手はその力を増し、毒による痺れも相成って、香子もまた、意識を失いつつあったのだ。


「嫌だよ……蒼……蒼……」


 うわ言のように蒼の名を呼びながら、香子はガクリと首を垂れた。


「アハハハハハハハハハハ!!」


 勝利の雄叫びを上げ、ながら、カラインは堰の向こうへとゆっくりと消えていった。

 捕えられた二人もまた、触手に巻き取られ、水路の闇へ引きずり込まれていった。


 その後、御崎の指示を受けた大城市水道局によって、ようやく地下水路に照明が点灯したが、それが映し出したのは静かな川の流れと、およそ人型とは言えない形状まで破壊された蒼の無残な姿だけだった。


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