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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第33話:水路に潜む黒幕




「こんな空間が地下にあったんだな……」

「暗渠があることは知ってましたけど、こんなに大規模なものだったんですね」


 早朝、4時半。大城市の足元を暗渠となって流れる川を、ザブザブと遡っていく魔法少女部三人組。

 魔法少女二人は、コンバータースーツを装着。ブレイブウィング・テリトリアルモードの蒼は、両肩に大型ライトを追加装備し、闇を照らす。

 川の水深はせいぜい10㎝有るか、無いか程度。

 一方で、天井までの高さは優に5mはあり、場所によっては10mを超える高さの場所まである。

 側壁はいつの時代のものとも分からない苔むした石垣と、それを覆うコンクリートが、緑と灰色の不思議な模様となっている。


“大城市はその名の通り、城下町として栄えた地域だから、結構当時の地下水路や地下通路なんかが残ってるのよ。それを利用して、洪水対策用の地下空間が随所に存在するの”


 路上を行く侵生対の車両から、無線で御崎の解説が飛んでくる。

 なんでも、地下と交信するために、下向きの強力なアンテナを搭載した車両らしい。コンクリートに隔てられた地上と地下とは思えない程、くっきりと声が聞こえる。


「ねえ、スキャナはどんな感じ?」

「いや、全く反応がない。ゼルロイドも、カラインもどっちもな」


 蒼が装着するエネミースキャナは、大型ライトの光芒も届かない闇の果てまで緑色の光を飛ばし、敵を探すが、未だ全く反応がない状況だ。


“そろそろ一つ目の分岐点よ。広めの空間があるから、敵の潜伏に注意してね”


 御崎の指示通り、一つの川が堰を跨いで二股に分かれ、流れ下っている地点が現れた。

 ちょうど円柱形の地下空間になっていて、少し水深がある。

 その水底に何か動くものがあり、三人は思わず身構えたが、正体は大きなコイであった。

 分岐点を抜け、さらに上流へ進んでいく。

 

 堰を乗り越えると、水深はさらに浅くなり、1cmもない程度になった。

 しかし、天井の高さは変わらず、川というよりは、地下トンネルに水が流れているような感覚だ。


“そろそろ新里さんが襲われた地点が近いわ。注意して”


 先日、詩織を襲った巨大赤触手が生えてきたマンホールの直下が迫る。

 スキャナを照射し、ライトを最大照度で放ちながら、ゆっくりと前進する。

 緩やかな曲がり角を抜けると、闇の中にポツンと、小さな光が差している箇所が見えた。

 あのマンホールの直下である。


『ピッ!』


 スキャナが一瞬、敵の存在を示す音を発した。

 一同に緊張が走る。

 しかし、その音の後が続くことは無かった。

 蒼が恐る恐るライトを照射してみたが、特に何かがいたような形跡も見当たらない。


「何かしら……?」

「分からん……でも、この先20メートル以内には、現在敵はいない。進もう」


 敵の反応が微かにあったことを御崎に報告し、三人は先ほどよりも注意深く前進を始めた。


『ピッ!』

『ピピッ!』

『ピ……!』


 その反応は、時折強く、時には極めて微弱に、一瞬だけ現れては消え、現れては消えを繰り返した。


「何かが前にいるな……」

「私たちを関知して逃げてるんでしょうか?」

「そうかもしれんし、罠かもしれん。警戒を怠るなよ」


“そろそろまた分岐点が来るわ。今度のはさっきのより小規模よ”


 再び、小さな堰と共に円柱形の分岐点が目の前に現れる。

 蒼は、自分たちが登ってきた方とは異なる、もう片方の水路をスキャンしてみたが、そちらには反応はなかった。


『ピピッ……ピピッ!』


 一方。上流側からは、今までよりも強い反応があった。


「やっぱり上か……」

“この上流には、堰が二つと、結構な規模の地下流量管理設備があるわ。今は殆ど使われてないみたいだけど”

「いかにも怪しいな……。登ろう」


 その後、同じように川を上り、堰を一つ越えた。

 面白いことに、今度は水深が増し、20cm程になった。

 流石にこの水深では、歩くだけで一苦労だ。

 また、小型のゼルロイドの潜伏にも注意しなければならない。

 この状況で例の赤触手が現れたら不利だな。等と蒼が考えながら、カーブを抜けた瞬間。。


『ピピピピピピピピピーーーーーーー』


 突然、スキャナの反応が最大まで振り切れた。


 すわ!敵襲!

 全員が闇の先へ装備を向け、身構える。

 しかし、なおも闇は沈黙を守っている。

 上、下、背後。全方位を眺めても、敵らしきシルエットは見えない。


“みんな大丈夫!? 敵襲!?”


 御崎の取り乱した声が聞こえる。


「いえ、敵は現れません。地上はどうですか?」

“こっちは全く異状なしよ。監視システムも反応してないわ”

「分かりました。前進します」

“もうすぐ最後の堰よ。そこを越えたら水深は一気に浅くなるわ”


 遠くからザバザバと、水が落下する音が聞こえる。

 堰の音、スキャナのアラーム音、気味の悪い二重奏だ。

 徐々にその二つの音は大きくなり、やがて、闇の先に、小さな滝のように流れる、堰が現れた。


「先輩危ない!!」


 突然、何かを察知した詩織が、蒼を蹴り飛ばした。

 蒼の頭があった位置を、藍色の矢が飛び去った。


「これは藍色の魔法少女の!! うわあ!!」


 驚愕する間も与えない。とばかりに、2本、3本と矢が飛来する。


「アハハハハハハハハ……」


 堰の向こうから、三つ目の音が加わり、やがて、それは四重奏となり、辺りに黒い粒子が立ち込め始めた。


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