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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第27話:罠に落ちた藍色




「くっ……。あなた達は一体……!」


 大城市の外れにある旧道トンネル。

 昼間でも薄暗い不気味なそこに対峙する3つの人影。そして漂う無数の楕円。


「コバルト・アロー!」


 藍色の粒子を纏った矢が宙を泳ぐクラゲ型ゼルロイドを次々と粉砕する。

 その様子をニヤニヤと笑みを浮かべながら眺めるのは、あの黒の魔法少女であった。

 そしてその傍には、緑の魔法少女が無表情で佇んでいる。


(今のところあの二人が手を出してくる様子はない……。でも魔法少女がどうしてゼルロイドと一緒にいるの……!?)


 次々と飛びかかってくるゼルロイドを撃破しながら、黒、緑の動向を警戒する藍色の魔法少女。

 最近、よくゼルロイドに襲われた、追いかけられた、という情報が多発するここへゼルロイド退治に来たのだが、これは魔法少女を誘い込むための罠だったのだ。

 未だ侵生対がカライン、黒の魔法少女、及び魔法少女に化ける謎の敵に関する情報をいかに扱うべきか決めかねている中で、それらと遭遇してしまった彼女はあまりに不幸だったと言えよう。


「これで最後! トリニティ・アロー!」


 3つに連なる青い矢が、群がるゼルロイドをまとめて屠り、文字通り無数に漂っていたクラゲ型ゼルロイドは全滅した。


「はぁ……はぁ……。さあ……次はどう出るの!?」


 トンネルの奥に陣取る二人の魔法少女を睨み、弓矢を構えて威圧する藍色の魔法少女。

 その様子を見て、黒の魔法少女は満足げに笑い、傍らの緑の魔法少女に目配せをし、


「アハハハハ……たたかって見せて?」


 と声をかけた。

 その、少女のように清らかで、化け物のように野太い、異質な声はトンネルに木魂し、藍色の魔法少女はやや後ずさりしながら、戦闘の構えをとった。




■ ■ ■ ■ ■




「カラインは人間の頭部に寄生し、その人間を自由に操ります。魔法少女に寄生した場合、変身していない姿で、その能力が使用できるようです。寄生された頭部は内部を激しく損壊されるため、もう助けることは出来ません。また、逃走する際に頭部を自切し、狭い隙間へ逃げていく特性があるので、遺体も五体満足で回収できない場合が殆どです」

 

所変わって侵生対本部。

蒼が宮野、御崎を含む職員に、魔法少女部が持つ情報のプレゼンを行っていた。

 ゼルロイドとの戦闘記録や、ウィングシステム、魔法少女二人のデータ等を次々と公開したが、タイムリーなこともあり、カラインに関する情報が最も職員の関心を集めていた。


「独特の、不快感を覚える笑い声のような鳴き声を発します。同時に言語のような声も発しますが、その意味を理解して使っているかは不明です」


「先日襲撃してきた黒の魔法少女は、カラインと思われますが、我々と戦った個体と同一なのかは不明です。ただ、言語を的確に用いていた点、頭部が全く変形していなかった点を見るに、進化している可能性があります。加えて、魔法少女のエネルギー場を使用できるという点でも、極めて異質な存在です」


「ゼルロイドを使役する能力があるようで、多くの場合、ゼルロイドと共に現れます。ゼルロイドの上位種なのか、それとも共生関係にある別種なのかは不明です」


 職員達の質問に、真剣に答えていく蒼。

 蒼も、侵生対の研究者たちも答弁にも力が入る。


「高瀬くん、私からあなたの見解を聞きたいのだけれど、魔法少女保管庫に現れた黒いスライム状の敵。アレは何だと思う?」


 御崎も熱心に挙手をし、蒼の意見を求める。


「エネミースキャナからは、ゼルロイド、カライン両方の反応が出ていました。また、スライム状から、データを取り込んだ対象の姿に化けるという点でゼルロイド。独特の鳴き声と、魔法少女の能力を扱うという点でカラインの特性を持っています。これらの点から、ゼルロイドとカラインのハイブリッド種であると私は考えています。カラノイドとでも言ったところでしょうか」


 職員達がメモを取る音が一層大きくなる。

 「カラノイド……?」「カラノイドはどうだろう……」等、疑問形のざわめきも起きたが、蒼は特に気に留めていなかった。


「魔法少女の姿になると、魔法少女由来のエネルギーの効果が希薄になるという厄介な特性もあるので、私のウィングシステムの一般化と、強化も急ぐ必要があると考えます」


「それに関してなのだけど」


 御崎が蒼の言葉に重ねるように口を開いた。


「さっきまで装備研究班にデータを見てもらったんだけど、正直、当分モノにはならないと思うわ。現状では高瀬くんだけがあの敵に対する対抗策と考えていい。だから、皆、あの敵の早急な根絶のために、監視システムの充足と、敵の根拠地の発見を急いでほしいの。増殖されたらゼルロイドなんて比じゃないほどの脅威よ」


 御崎の結びの言葉を最後に、魔法少女、及びゼルロイド、カライン監視システムの拡充予算を割り振り、会議は一旦お開きとなった。




■ ■ ■ ■ ■




「くぅっ!」


 緑色に光る剣が、藍色の魔法少女の左腕を切りつけた。

 切られた二の腕から血がダラダラと流れ、苦悶の表情を浮かべながら距離を取る藍色の魔法少女。


「私の攻撃が……効かない!?」


「アハハ……アハハハ……」


 腹に突き立った光の矢を握りつぶし、無表情のまま、気味の悪い笑い声をあげて襲い掛かってくる緑の魔法少女に、藍色の魔法少女は戦慄を覚える。

 これまで戦ってきた敵は、魔法少女の力が覿面に効くゼルロイドばかりだったのだから、面食らうのも無理はない。


「それなら……これはどう!? コバルト・アロー!」


 まるで操り人形の如く意志を感じない緑の魔法少女ではなく、先ほどから楽しそうに笑っている、黒の魔法少女に矢の照準を合わせ、放つ。


「グガッ!! い…たイ!!」


 全くの想定外だったのか、青い矢を無防備で胸に受けた黒の魔法少女。

 膝をつき、矢を必死で抜こうとしている。


「油断したわね! コバルト・アロー!」


 二の矢を放つが、緑の魔法少女が間に入り、身を挺して黒の魔法少女を守った。

 その行動に怯むことなく、素早く回り込んだ藍色の魔法少女は、三の矢を黒の魔法少女に打ち込もうとした。

 直後。


「ウオオオオオオ!! アハハハハハハ!!」


 黒の魔法少女が獣のような声で吠えた。

 同時に、辺りに黒い粒子が広がり、藍色の魔法少女のエネルギー場をかき乱し始める。


「なっ!! なにこれ!?」


 藍色の魔法少女は、エネルギー場にエネルギー場を重ねられるという、全く未経験の事態に、思わずたじろいでしまう。


「ち……力が……入らない……!!」


 それだけではない。

エネルギー場からのエネルギー供給が激しく乱れ、光の弓矢を維持出来なくなってしまったのだ。


「あなた! いまここで食べる! いじめて殺す!」


 激昂する黒の魔法少女の手から、黒い鎖が幾重にも放たれた。




■ ■ ■ ■ ■




「!! 黒のエネルギー場反応が出た! 大城市郊外の旧道からだ!」


 既存の監視システムが、黒いエネルギー場の反応を微かに検知し、蒼のデバイスに転送してきた。


「しかも藍色のエネルギー反応も出てる! 藍色の子が危ない!」


 ブレイブウィングとサポートバードを大至急呼び出す蒼。

 前回の反省から、緊急時に備えて三機とも近辺を飛行させていたのだ。


「事態は急を要する。俺と新里で先に飛ぶから、笠原は御崎先生と一緒に来てくれ。救急搬送車両の手配も頼む!」

「分かった! 気をつけて!」

「おう! 合体!」

「任せてください! 変身!」


 詩織と、詩織のエネルギー場に乗り、速度を増したブレイブウィング×ブレードホークは、地下の特殊トンネルを超高速で飛び去って行った。




■ ■ ■ ■ ■




「あっ! うああ!!」


 黒い魔法陣に磔られた藍色の魔法少女。

 黒い鎖でその全身を激しく打ち据える黒の魔法少女。


「痛いことをしたのだから……アハハ……いっぱい痛い思いしてから死んでよ」


 黒の魔法少女が指を鳴らすと、緑の魔法少女が前に出る。そして、緑色に光る剣を、藍色の魔法少女の右掌にざっくりと刺し通した


「ぎゃああああ!!」


 悲鳴を上げ、泣き喚く藍色の魔法少女。

 しかし、それだけでは黒の魔法少女の怒りは収まらない。


「次は反対、その次は足、後いっぱい」

「いや……もう……やめ……いぎゃああああ!!」


 緑の魔法少女、いや、カラノイドは、淡々と藍色の魔法少女の掌に、足の甲に、脇腹に、太ももに、次々と剣を刺していく。

 魔法少女の治癒力が傷口を塞いでいくが、今は苦痛を長引かせるものでしかない。


「ほら、口開けるの」


 突然、黒の魔法少女が藍色の魔法少女の頬を強く掴み、開いた口に無理やり接吻をしかける。


「んんん!! んんんん!!!」


 口から流れこむ、恐ろしく冷たい何か。

 その感触に恐れをなし、藍色の魔法少女は全身を揺すって抵抗するが、鎖で磔られた体はビクともしない。


「アハハハハ……たっぷり苦しんで死んでね」

「うあああああ!! ああっ!! ああああああ!!」


 黒の魔法少女が口を離すと同時に、激しい絶叫と共に、藍色の魔法少女の全身が痙攣を始め、口から泡を吹きながら苦しみだしたのだ。

 そして、胸のブローチの藍色の宝玉がバキバキとひび割れ、中から藍色のエネルギーが漏れ出し始めた。


「いただきまーす……アハハハハハハハ!!」


 勝ち誇ったような笑い声をあげ、その宝玉に食らいつく黒の魔法少女。


「ああああああ!!」


 一際大きな悲鳴をあげる藍色の魔法少女。

 その衣装が見る見るうちに分解されていく。

 やがて、宝玉は徐々に色を失い、溢れ出るエネルギーの粒子も、その量を減らしていった。

 魔法陣の下から、黒いスライムが這い登り、藍色の魔法少女の肉体を徐々に包み込んでいく。


「ああ……あ……」

 

 エネルギーを吸い尽くされ、悲鳴さえ上げられない程衰弱した藍色の魔法少女。

 黒の魔法少女は、トドメとばかりに、無色透明になった宝玉を強く握った。

 最期の抵抗と言うべきか、藍色の魔法少女は体を揺すり、逃れようとしている。


「さよなら、私の下僕に生まれ変わってね。アハハハハハハ!!」


 そう言いながら、宝玉を握りつぶそうとした、その腕が宙を舞った。


「どうだ!アームブレードV2の切れ味は!!」


 目にもとまらぬ速度で飛来した蒼が、黒の魔法少女の腕を切り飛ばしていた。


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