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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第19話:警察からの呼び出し!?




「へ!? 警察に呼び出された!?」


「うん、何か魔法少女とゼルロイドの情報提供してほしいって。御崎先生から連絡来たんだよね」


「なんか怪しくないですか? 私たちの正体がバレたとか……。それで私たちを捕まえて……」


 「大丈夫だろ~」と気楽に構えている蒼。しかし、突然舞い降りた国家権力からの依頼に香子と詩織は疑心暗鬼だ。

 普通、部員3人の零細部活に警察から指名が入るなどあり得ない話で、怪しむのが道理だろう。何かの疑いがかけられているというのは想像に難くない。


「カラインの件もあるし、ある程度口裏合わせて行った方がいいわね。あくまでもアタシたちは魔法少女の助けになる活動をしてるだけですって」


「まあそこは適当にごまかしとけば何とかなるよ。約束の時間まであと20分ちょいしかないし、御崎先生が先に警察署行って待ってるから早く行こう」


「え!? なんでそんな余裕ないんですか!」


「えって言われても……。俺もさっき連絡されたばっかりだし」


「絶対それ怪しいですよ!」


「でも御崎先生はもう警察署行っちゃってるわけでしょ……。はぁ……。アタシたちどうなっちゃうんだろ……」


 顧問が既に相手先にいるとあれば、香子も詩織も折れざるを得なかった。

 もはや人質まがいの手口に、二人はますます警察への不信感と、嫌な予感を募らせていたが、蒼は「部のサイトのアクセスが増える」だの「アプリ利用者増える」だのとはしゃいでいた。



 警察署に入り、学生証を見せると、3階の応接室に通された。

 魔法少女二人は、いつ特殊部隊が現れて拘束されるのかヒヤヒヤしていたが、幸いにも襲ってくる者はいなかった。

 そして、応接室にも妙な仕掛けがあるでもなく、顧問の御崎先生が待っていた。

 その横には若い、それこそ御崎先生と同じくらいの年の男性がおり、3人を笑顔で迎えた。


「いきなり呼んで3人ともごめんなさい! 先生一人で済む話だと思ったんだけど……」


 普段から下がりがちな眉毛をいつになくハの字に曲げ、特徴的な糸目も同じくハの字にしながら謝る御崎先生。

 聞けば、昨日警察から魔法少女部のサイト、アプリに関して問い合わせがあり、課外活動に精を出している3人の邪魔をしないように、自分だけで応対しようと考えたのだが、活動内容に警察の人が大層感心し、何としても3人と会って話がしたいと頼まれたそうだ。


「突然呼び出して申し訳ない! 自分、宮野 彰って言います。この街で怪事件……主にゼルロイドに関する事件を担当してるんですが、魔法少女部の皆さんの活動に心を打たれまして、無理を言って呼んでもらったんです!」


 やけに威勢よく3人に迫ってくる宮野。

 「笑顔がまぶしい」という形容がそのまま当てはまるような、魔法少女でもないのにプラスエネルギーが発せられていそうな顔でグイグイと握手を求めてくる。

 詩織も香子もその勢いに圧倒されてしまい、明らかに一歩、二歩と後ずさりしている。


「ありがとうございます! やっとウチの部の活動が評価される時がきたんですね!」


 一方の蒼は宮野に負けないくらいの満面の笑みで握手を返し、激しく上下に振り合っている。

 ひとしきり蒼との握手を交わした後、彼は詩織と香子に向き直り、少し真剣そうな表情をしたかと思うと、こう言った。


「それで、君たちは魔法少女なんですか?」


 宮野の勢いに押されながらも、裏表のなさそうな彼の様子に警戒心を解きつつあった詩織と香子の背中を一瞬で冷たい汗が走った。


「何言ってんですか宮野さん! この部に魔法少女はいないですよ! 大体、正体隠して戦う連中が魔法少女部なんか入るわけないじゃないですか~」


 二人の表情が凍り付くより、慌てて言葉を発するより早く、笑いながら蒼は言い切った。


「えっ! そうなんですか? てっきり君たちは魔法少女なのかと……」


「二人は魔法少女になることが叶わなかったけれど、せめて彼女たちを支援したいと思って入ってきた真面目な奴らなんです。冗談でもそういうことを言ってやらないでください」


 笑いながらではあるが、宮野の発言を蒼がきっぱりと否定し、咎める。

 その迷いのない言葉に宮野も「失礼しました」と引き下がり「では本題を……」と言いながらノートパソコンを取り出す。同時に部屋の電気を消し、天井から吊られたプロジェクターから、スクリーン一体型の壁に画面を投影し始めた。


「ここ数か月、この街で魔法少女が行方不明になる事態が相次いでいます。そしてゼルロイドの犯行とは全く異なる、首が捩じ切られた被害者の多発。その遺体から謎の生物の細胞が検出される。ゼルロイド出現からこれまでに無かった事例が同時に発生しており、我々も警戒を強めています」


 スクリーンに今現在警察が存在を掴んでいると思われる街の魔法少女たちの写真が並ぶ。

 遠方から高性能望遠カメラで撮影したと思しき高精細な写真だが、エネルギー場の特性のため、魔法少女の周りにモザイクのような靄がかかっており、顔は判別できない。ただ、髪の色、コスチュームの大まかな形状程度は識別できる。

 

「我々が自力で把握できた魔法少女はこれ限りです。あなた方の部のHPに掲載されている数に比べるとかなり見劣りしてしまいますね……」


 事実、その数は蒼が収集したデータに比べるとだいぶ少ない。

 先日カラインによって殺害されてしまったオレンジの魔法少女や、最近出現した黄緑の魔法少女の写真が無く、さらに、香子のコンバータースーツ姿を別の魔法少女と認識しているようで、魔法少女部が認識している数の実質半分程度しかデータがないのだ。


「市と協力して監視カメラを増設しつつゼルロイドや魔法少女のデータ収集を強化しているんですが……。監視カメラを徹底的に避けて動いている魔法少女も多いようで……」


「エメラルドグリーン、赤、黄緑、オレンジの子なんかはそのパターンです。逆に青とか紫の子は頻繁に各所の監視カメラに映ってますね」


 蒼の情報に宮野はふんふんと頷きながら、メモを取っている。

 「青の子」と言われたとき、香子は一瞬ドキッとしたが、どうやら蒼は自分たちの情報も混ぜて話すことで、疑いの目を避けようという魂胆らしい。


「緑、桃色の子は最近全く姿を現しません。恐らくゼルロイドか、ここ数日紙面を賑わせている新手に殺されてしまったのではないかと思います。」


「ええ、緑の魔法少女は彼女と思しき遺体が見つかってますし、桃色の魔法少女は、その失踪と同日に行方不明になった女の子の髪の毛と血痕が発見されているので、おそらくは……。あ、これ秘密っすよ?」


 そこは流石の警察。魔法少女部では追いきることが出来ない死亡後の魔法少女の個人特定程度は出来ているようだ。

 公表しない理由を尋ねると、魔法少女に対するマイナスイメージが生じたり、または、その正体や素性を悪意をもって拡散する者が現れ、彼女たちの尊厳が踏みにじられる可能性に考慮した結果だそうだ。


「不甲斐ない我々に代わって、戦ってくれている彼女たちが生き辛い世の中にしたら駄目だと思うんです」

 

 宮野は険しい表情で続ける。


「日本やアメリカなんかは、彼女たちの存在を受け入れる社会基盤があるんですが……。国によっては迫害されたり、内紛に駆り出されたり、酷い場合だと人身売買の憂き目に遭っている子もいるらしいんです。この人類の危機に何をやっているんだか……!」


 膝の上で拳を握り、熱く語る宮野。

 香子と詩織はその話に大層深く頷いていた。


 蒼の話は意外にも危うげがなく進み、魔法少女部が集めた魔法少女のデータとゼルロイド頻出マップ、連続頭部損壊犯(カラインの警察呼称)などの資料を宮野に渡し、蒼のゼルロイド監視AIシステムを警察が増設した監視カメラ群に入れるのを条件に、現在の活動を大城警察署が表彰し、撮影機材などを支援する等の、魔法少女部にとって非常に有益なものに纏まっていった。。





「なんだか良い人だったね。心配して損した」


「警察から表彰されるなんて中学以来ですよ! 部員増えるかもしれませんね! 部の予算も増えるかも……」


 警戒していた事態は何も起こらず、宮野の熱い正義感を目にし、二人はすっかり意気揚々である。

 しかし、蒼はさっきまでと一転して、難しい表情を浮かべていた。


「怪しい……。宮野って人もだが……。御崎先生怪しくないか?」


「アンタ……。無理やり顧問にしておいて酷いでしょそれは」


「いや、だって宮野って人が話してる最中、先生ずっと君らの方見てたんだよ。普通、相手が資料出したらそっち見るだろ」


 意外な事実に顔を見合わせる魔法少女二人。


「それと、気づいたか? あのパソコン……」

『ビービービービー!!』


 蒼の言葉を遮り、3人の腕時計型デバイスがけたたましいアラームを発し、ゼルロイドの出現を告げた。


「うわっ! 出現場所近い! 行くぞ! ブレイブウィング発進!」


「これ御崎先生や宮野さんの手引きだったら私たち思う壺ですよね!」


「その時はその時よ!」


 デバイスに記憶されている監視カメラの死角を走り、3人は示された座標へ急行した。





「きゃあああああ!!」


 沢蟹を彷彿させる赤い甲殻を持つ大型ゼルロイドに足を掴まれ、悲鳴を上げる少女。

 ゼルロイドの出現場所は、よりによって学生がよく利用する林道であった。

 山に隔てられた大城市の南側と北側を繋ぐ道の中で、最も短いそこは、ゼルロイド出現の危険が叫ばれてなお利用者が多い要注意エリアである。


「シュトライフリヒト!!」


 香子の光線がゼルロイドのハサミを的確に打ち抜く。

 放り出された彼女を、マジックコンバータースーツに身を包んだ詩織が見事にキャッチした。


「さあ! 早く逃げて!」


 詩織は少女を下ろし、今なお逃げ遅れている市民に退避を促す。

 それを逃がすまいと、沢蟹型ゼルロイドは口から勢いよく泡を吐き出した。


「おっと! そうはさせん!」


 レーザーシールド全開でゼルロイドの眼前に躍り出た蒼が、市民の盾となる。

 シールドにボコボコと白い泡が立ち、直後。バン!と炸裂した。

 飛散した泡がさらに小さな爆発を生み、蒼の周囲が花火の如き閃光に包まれる。


「うおっ! この泡爆発する! 二人とも気をつけろ!」


 彼はシールドを全面に展開し、それを耐えしのぐ。

 2度、3度と連続して炸裂した後、泡は白煙と化して霧散していった。

 そのまま蒼は白煙に紛れレイズイーグルと合体、アームレーザーで敵の右目を狙撃、破壊する。


「ブレードラッシュ!」

 

 そこへ市民を避難させ終えた詩織がブレードホークと合体。回転しながら飛び込み、右側の足を次々と切り落としていく。

 バランスを崩され、たまらず倒れるゼルロイド。しかし、身動きを封じられてなお怯むことなく炸裂泡を連続して吹き出す。同時に腹を開き、無数の子ガニを射出する。


「エナジートルネード! サイドバルカン!」


それに即応する蒼。

炸裂泡を青い旋風が消し飛ばし、撃ち出された子ガニを、雨のように放たれる青い弾幕が絡めとる。

そのまま二つの青の奔流はゼルロイドを直撃。頑丈な甲殻をバキバキと砕いていく。


「笠原! 威力絞ってくれ! キャノンイジェクト!」


「うん! ゲフェセルト・ポリアミトゥル!」


 威力を落としてなお眩い閃光がゼルロイドを包み込み、跡形もなく焼き尽くした。



「よし! お見事」


「私たちにかかればこんなものですよね!」


「じゃあさっさと撤収しましょ。学校戻ったらシャワー室行きたい気分」


もはやこの場に長居は無用である。変身とウィングを解除し、3人が光風高校に向けて歩き出したその時。


「シャワー室ならウチでいかがでしょうか?」


 驚いて振り返った3人の目線の先に、宮野と御崎先生が立っていた。


 蒼は思わず


「早くない?」


 と、呟いた。

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