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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第三章

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第46話:走れイカロス




「シャイニングゲート!オープン!」



 蒼の左腕のコンドルキャリバーから光のリングが射出される。

 それに呼応して、大城市山中にあるSST基地のシステムが勝手に稼働し、超小型のシャイニングゲートが開いた。

 大城市への直通回廊だ。

 例によって、こんなシステムなど御崎は承知していない。



「しゃあ! いっちょブチかましてやるか!」



 響がそう言うと、瞬く間に魔法少女に姿を変えゲートに飛び込もうとした。

 しかし、ガゴン!という音と共にゲートに弾き飛ばされてしまう。



「なんだよこれ!?」



 響が顔面を押さえながら叫ぶ。



「ごめん、国を跨ぐ長さのマイクロシャイニングゲートはまだ俺以外は使えないようロックしてあるんだ。迷子になった時帰ってこれなくなる可能性があるからさ」


「先に言えや!」


「じゃあ蒼一人でテラーゼルロイドに挑むの!? 無茶よ!」


『笠原さん! 高瀬くんは私達が支援するよ!』



 香子の声に、画面の向こうから食い気味音割れ気味の声が応えた。

 見れば、由梨花は既に魔法少女の姿になっている。

 そのコスチュームはただのX化とは少し異なり、かといってSXほど劇的なパワーアップを感じさせるほどではない。

 現在彼女にのみ発現している独特な形態だ。


「大丈夫? 強いわよ? テラーゼルロイド」


『大丈夫。私も貴方達ほどじゃないけど、高瀬くんのおかげで皆より少しだけ強くなれたから』


「……」


『……』


「もー!! 先輩達やめてくださいよぉ!! あと高瀬先輩もう行っちゃいましたよ!」



 詩織が指さす方を見ると、ドリルコンドルを纏った蒼は既に豆粒のような大きさになり、ゲートの彼方に飛び去っていた。



『みんな! 行くよ!』



 由梨花に引き連れられ、バーに隠されたSST基地直通路に駆けこんでいく大城市の魔法少女達。

 最後に店をサッと片づけた後、カナタは『悪いけど彼ピ借りてくで!』と、ウィンクをしつつ、通路の扉をバタンと閉めた。

「ぐぬぬぬぬ……」と、照れと独占欲に唸る香子に、台湾勢の画面から『ネトラレデスか!ドロドロデスか!?ヌレヌレデスか!?』という興奮しきった声が飛んできた。




////////////////////




「高瀬くん! 待ってたよ! 行こう!」



 蒼がSSTのドラゴンライナー用プラットフォームに降り立つと、既に魔法少女達はスタンバイしていた。

 X化した魔法少女はエネルギー場が共通のものとなり、同一の空間に立ち入ることが出来る。

 カラフルな魔法少女が無機質で巨大な駅に並んでいる様子は、ややシュールな光景だ。



「高瀬くん。まだドラゴンライナーは修理中ですが……。まあ、恐らくここに来るんですね? 件のメカが……」



 目の下のクマを増大させた宮野が駅の末端、ドラゴンライナー格納庫の方から歩いてきた。

 見れば、格納庫の方では無数の溶接火花が散っているのが見え、相当大規模な修理が進行中と見える。



「しかし……このプラットフォームは現在どの線路とも接続していませんが」


「大丈夫です! 既に繋いでますから。」



 蒼が何かを察知したかのように駅の壁面を見つめる。



「来ましたよ。勇気を運ぶ特急が」



 ゴゴゴゴゴゴゴ……。

 轟音と共にプラットフォームの壁面の岩盤が開き、トンネルと線路が出現した。

 線路の分岐ポイントが接続され、トンネルの闇の向こうから、二つの光点が現れる。

そして、轟音と共に巨大な列車が現れ、けたたましいブレーキ音を響かせながら停止した。

紺色と青を基調とした、ドラゴンライナーに勝るとも劣らない勇壮たる姿だ。



「これは……。輸送列車……?」



 もはや基地が勝手に改造されていることには驚かず、機体の装備をまじまじと見つめる宮野。

 巨大なバルカン砲塔2基がグイングインと稼働し、試運転をしている様子だ。

 その中央部には、コクピットを挟んで2か所の大型輸送ラックが装備されていて、コンテナを思わせる積載物が4機積まれている。



「これこそが、超次元輸送特急イカロスライナーです。さあ! 行きましょう! 会長たちはあそこのコンテナに乗ってください!」



 蒼は車体中心部にある操縦席へ走る。

 由梨花たちは誘導光が光っている、扉のあるコンテナへ走った。



「イカロスライナー! 発進!」



 蒼は各種車体ステータスに目を通した後、イカロスライナーの発進ボタンをタッチした。

 初めはゆっくりと、そして力強く加速していくイカロスライナー。

 長いSST秘密基地のトンネルを抜け、夕闇迫る街中の高架に接続する。

 大城市の全ての駅のモニターが「臨時運行 超次元輸送特急イカロスライナー」に切り替わり『超次元輸送特急イカロスライナーが通過致します。白線の内側までお下がりください』という、アナウンスまで流れている。



「これは……えらいけったいな……」


「公共機関のシステム勝手に弄っていいんですかね……?」



 あまりの用意周到ぶりに、コンテナから外を見ていた魔法少女達は軽く引いている。

 驚きの表情が並ぶ駅を3駅過ぎたところで、イカロスライナーはふわりと空中に浮いた。



『飛行システムが未調整なので多分揺れます! しっかり掴まっていてください!』



 蒼の声と共に、早速激しい揺れが襲って来た。

 魔法少女達は各々掴めるところを掴み、衝撃に備える。

 驚愕の表情で人々が見上げる茜色の空に、長大な列車のシルエットが北東の空へ飛び去って行った。




////////////////////




『着陸します!つかまって!』



 蒼のアナウンスとほぼ同時に、激しい振動が伝わる。



「これはひどい……」



 窓の外を見ていた氷華が呟く。

 出現の報から1時間と経っていないが、多数の火の手が上がり、逃げ惑う人々や緊急車両、自衛隊の戦闘車両が走り回っている。

 街は大混乱の様相だ。



『イカロススプリンクラー!』



 イカロスライナー上部の砲塔が回転し、街に特殊消火液を噴霧する。

 瞬く間に、車両周辺の火の手が弱まっていく。

 同時に、異常な被害状況が明らかになった。

 建物や車両が捻じれるようにひしゃげ、燃え上がっていたのだ。



『コンテナマシンを発進させます! 降りてください!』



 蒼からのアナウンスに、コンテナから飛び出す魔法少女達。

 見れば、積載されていた4機のコンテナのうち3機がジェット噴射で飛び上がり、変形を始めている。

 1機はモグラのようなメカ「グランドモグラー」に、1機は消防車を思わせる小型のロボット「ファイヤーガーダー」に、もう1機はコウモリ型のメカ「バリバット」に変形した。

 そして、由梨花たちが乗っていたコンテナは、壁面がせり出して4本の足が伸び、亀を思わせるメディカルセンター「メディカルトータス」となる。



『イカロスライナーを敵予測位置まで前進させます! 会長は随伴してください! 皆さんは散会して小型の敵の撃破と、怪我人、魔法少女の救助を行ってください! 重傷者はメディカルトータスへ搬入をお願いします!』



「よっしゃ任された!」



『会長、行きますよ』


「うん……!」



 由梨花がイカロスライナーのコクピット上に着地したことを確認すると、蒼はイカロススプリンクラーを噴射しながら、ゆっくりとイカロスライナーを前進させる。

 同時に、グランドモグラーは地中へ潜行し、バリバットはメディカルトータスのいる一角にXエネルギーの防御力場を発生させ、ファイヤーガーダーは燃え盛る街の中へ走っていった。



////////////////////



「あぐっ……あ……!」



 一関市の魔法少女、星川 真姫は空中に持ち上げられ、凄まじい力で体を捻じり上げられていた。

 彼女以外にも、複数の魔法少女が謎の力に囚われている。



「どう……して……」



 霞む視界の向こうに、美しい模様の着物を纏った蝶のような巨体が舞っている。

 その身体からは純白の糸が振りまかれ、振れたものをバキバキと捻じり、破壊している。

挿絵(By みてみん)


「バイオレットプラズマシューター!! 」



 由梨花の放った紫色のレーザー光線が敵の巨体を貫き、激しく炎上させる。

 同時に、空中に囚われていた魔法少女達が解放され、次々に落下してきた。



『キャッチャーネット!』



 イカロスライナーの砲塔が旋回して蜘蛛の巣状のネットが放たれると、魔法少女達を受け止めた。



「大丈夫!? 今治療するから!」



 由梨花が胸から放つXエネルギーで、魔法少女達を治療する。

 皆体が180度近く捻じられ、体中の骨や内臓に大きなダメージを負っていたが、命を落としていない限り、Xクリスタルからのエネルギー供給で回復が可能だ。

 回復に合わせ、彼女達の胸のクリスタルもX型になっていく。

 先ほどまで死に瀕していた真姫も持ち直した。



「ありがとう……貴方達は……」


「私は魔法少女由梨花。そしてこれはイカロスライナー。この街に希望を、勝利を届けに来たの」



 そう言って見上げる空に、テラーコアが出現し、テラーゼルロイドが再生を始める。



「あれは一体何なの……? あんな物の怪知らない……」



 困惑する由梨花に、真姫が立ち上がりながら応える。



「あれは……恐らくオシラサマよ……。でも……守り神のはずなのに……どうして……」


「オシラサマ……」



 首をかしげる由梨花のマジフォンに、オシラサマに関するデータが飛んできた。

 オシラサマとは、東北地方を中心に祀られる守り神の一つで、養蚕や農業を司るとされている。

 蚕の餌である桑の木に馬、もしくは女性の顔を刻み、美しい和紋の布を被せたものを御神体としている。

 守り神であるが、同時に呪い、祟りの伝説もあり、禁忌を犯した者は大病を患ったり、顔が曲がったりするという。



『伝承と敵の姿や能力に一定の合致があるな……テラーオシラサマとでも言うべきか……。それなら……会長! お願いします!』


「了解! ブレイブブースター!!」



 由梨花がマジウォッチに叫ぶと、空から白銀のマシンが飛来する。



「みんな! 協力お願い!」



 由梨花はブレイブブースターをキャッチすると、助け出した魔法少女達にそれを担ぎ上げるよう促す。



「皆の勇気をぶつけるのよ! それが恐ろしい怪物の姿でも、神聖な守り神の姿でも、私達の命を、暮らしを脅かすのなら、立ち向かうしかないわ! データインポート!!」



 由梨花がマジウォッチを掲げると、高速でオシラサマに関するデータが集積、分析されていく。

 由梨花の口上に勇気づけられた魔法少女達のエネルギーがブレイブブースターに注入されていく。



「テラーコア粉砕弾頭! 腐った卵!! ブレイブ!! ボンバー!!」



 由梨花がブレイブブースターにマジウォッチを嵌め込み、トリガーを引く。

 すると砲身から5色のエネルギー光線が放たれ、それはみるみるうちに卵の形になり、テラーオシラサマのテラーコアに命中し、猛烈な刺激臭を放ちながら大爆発した。

 刹那、「ヒヒィィィィィィンン!!」という絶叫と共に、敵はのたうち回りながらエネルギーを集中し、ファイナルフェーズに移行した。

 猛烈な勢いで噴射される呪いの生糸。

 由梨花たちに迫る霧のような糸の群れを、イカロスライナーのイカロスバルカンが焼き尽くした。



『ここからは俺の出番です! イカロスライナー! ライズアップ!!』



 長大なイカロスライナーが二つ折りのように立ち上がり、巨体から想像もつかないほどの高速で変形していく。

 やがてそれは、巨大な人型ロボットとなった。

挿絵(By みてみん)


『カーゴイカロス! 戦闘開始!!』



 蒼はレバーを勢いよく倒し、両腕のイカロスバルカンの斉射を開始した。


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