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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第14話:旋風! アリゲーターゼルロイド 対 ブレードホーク




「よし! 組み立て完了!」


 魔法少女部室にレイズイーグル、ブレードホークの雄姿が並ぶ。

 部品が揃ってから実に一週間。たっぷりと時間をかけて組み立てられた二機は美しい金属光沢を放つ。

 レイズイーグルは青を、ブレードホークは黄色を基調として、パートナーとなる魔法少女のイメージで塗装されている。


「わー! カッコいいです! この子私でも使えるんですよね?」


 詩織がブレードホークに食いつき、各部をパシャパシャとスマホ写真に収めている。


「レイズイーグル……。これはレイズイーグル……」


 香子はレイズイーグルを見つめ、ブツブツと名前を繰り返し呼び続けている。

 一週間ずっと、名前がしっくりこない。だの、英語で直球な名前はどうかと思う。だのと小言を言っていたのだが、昨日、蒼が


「これを一般公開した時、お前のネーミングセンスではウケない」


 と口走ってしまい、それ以降ずっとこの調子である。


「高瀬先輩……。謝って名前変えてあげた方がいいですよ……。笠原先輩滅茶苦茶落ち込んでますよ?」


「うーん……。あんまり呼称ばらけさせるの良くないと思うんだけどなぁ……」


 そう言いながらも、香子に歩み寄る蒼。

 彼も自分が人の気持ちを察するのが苦手と理解している手前、対人アドバイスは極力聞き入れるようにしている。面と向かって頭おかしいだの、サイコだのと言ってくれる詩織のアドバイスとあらば特に、である。


「あー……。悪かったよ。そいつは試作機だから、お前が使う分には好きに呼んでくれて構わんから、元気出してくれよ」


 香子の肩をトントンと叩きながら、折れる蒼。

 香子は死んだような目で蒼に振り返り。


「いいのよ……。アタシのセンスは一般的じゃないって分かってるから……。」


 いつになく弱気な言葉を吐き出した。


「昔からそうよね……。小学校の頃のお遊戯会でも、中学校の文化祭でも、高校に入ってからでもアンタの意見の方がみんなのウケよかったもの……」


「それはいつの、どれのこと言ってんだよ……。お前が俺よりウケが悪いのそれくらいだろ」


「まあ、それは当然だけどね……」


 なんか今日お前いつにも増してトゲがあるぞ……と、少ししゅんとする蒼。

 詩織は内心、そりゃあんたが笠原先輩の癇に障るようなこと言ったからだよ……。と突っ込みを入れた。

 「そういうヤツ」とは香子が蒼の言動を説明するときよく使う言葉だが、そこには香子の蒼に対するコンプレックスが関わっている。と詩織は思っている。

 ただの腐れ縁と香子は言うが、彼女の蒼への感情はその一言で表現できるものではない。蒼からすれば香子は親友だそうだが、多分こっちは本心だろう……。

 そんなことを考えながら、詩織は日課の基礎トレーニングに向かった。




「とりあえず、今日は新里と俺で見回り行くから、笠原は昨日のデータ入力頼む」


 本来、今回は香子と蒼での見回りなのだが、香子のメンタル面の不調から、今日は蒼と詩織のコンビで見回ることとなった。

 その提案を蒼が切り出した時、シャワー室帰りの詩織は


「何言ってんのこのサイコ!? ここは二人で見回りに行って、戦闘で庇いあって仲直りするのが定石でしょうが!」


 と思ったが、香子がそれに同意したこと、明らかに「行って」と目配せされたことから、交代に応じたのだった。


「名前の件は言ってくれたらサブ名称で登録しとくから、気兼ねなく言ってくれよ? お前にあんまり落ち込まれると俺も何か心苦しいから」


「あー……ハイハイ分かったわよ。気をつけて行ってきなさいよね。 新里さん。そいつをよろしく」


「えっ! あ、はい」


「新里……何ニヤニヤしてんの……?」


 詩織は、多分「そういうヤツ」にはこういう所も含まれているんだろうなぁ。と思いながら、「何でもないですよ~」と笑って答えた。




■ ■ ■ ■ ■




 ここ数日、蒼の発見したゼルロイドの「出現周期」をベースとした見回りを行い、ゼルロイドが成長しきる前に撃破できることが多かったため、危険な戦闘には遭遇していない。

 他の魔法少女の活動も活発で、直近一週間、市民のゼルロイドによるケガ人は殆ど出ていなかった。

 しかし、敵もさるもの。魔法少女部の目を欺くかのように、巡回コース上にあった「出現場所」からの出現率が徐々に下がり、その周辺への出現場所の移動が僅かながら確認され始めたのだ。


「うげぇ……。これはデカいぞ……」

「最近小型も出ないと思っていましたが……。巣が移動してたんですね……」


 かつて蒼と詩織がカニ型ゼルロイドと戦ったアーケード。そこから500mほど離れた林にある沼地を巨大なアリゲーター型ゼルロイドが悠然と泳いでいた。


「全長は……10……。いや、多分15m近くはあるな。何喰ってこんなサイズになったんだ?」


 通常、ゼルロイドは人々の負の感情によるマイナスエネルギーを糧とする。そのため、マイナスエネルギーの溜まりやすい人工物、特に寂れた街の傍に潜むものだが、ここはそういったものとは無縁の自然の中である。


「自然はマイナスエネルギーをある程度分解する効果があるから、これはちょっと問題だぞ」


 ゼルロイドが進化し、ごく少量のマイナスエネルギーで大型化できるようになったのなら、それは由々しき問題である。

 それ即ち、マイナスエネルギーが豊富な都市部では、今までより早く大型化できるようになったということであり、魔法少女による迎撃が間に合わなくなってしまう。

 目下、人型ゼルロイドという問題を抱える中で新たに浮上した頭痛の種。

 蒼は香子に大型ゼルロイド出現のメッセージを飛ばし、ウィングを、そしてブレードホークを呼び出した。


「変身!」

「合体! ブレイブウィング・ブレードフォーメーション!」


 詩織の変身と共に周辺に黄色の粒子が舞う。

 飛来したブレイブウィングが蒼と合体し、同時にブレードホークが複数のパーツに分離。蒼の手足に、肩に、背に、新たな武装として装着されていく。


挿絵(By みてみん)


「行くぞ!新里!」

「はい!!」

 

 ここに、ブレイブウィング・ブレードフォームの初陣の幕が切って落とされた。




■ ■ ■ ■ ■




「スライサーキャノン!!」


 エナジーキャノンと換装されたブレードフォーム用新武装が火を噴く。

 詩織のエネルギー短刀から着想したエネルギーの刃が連射され、アリゲーターゼルロイドに直撃する。

 固い鱗がそれを弾くが、腹部や顔、口内等装甲の薄い部分には小さいながらも深い裂傷が刻まれていく。


「ゴオオオオオオオオオオオ!!」

 

 その気道を震わせ、咆哮を上げるゼルロイド。

 

「ライトニングアンカー!!」


 その僅かな隙をつき、口内に炸裂するエネルギー刀を打ち込む詩織。

 敵の体内でエネルギーが炸裂し、腹の一部を突き破って光が漏れ出る。


「この敵デカくてちょっと固いけど、ノロくてそんなに強くないぞ……」

「何か隠し玉も……無さそうですね」


 大口を開けて突進してくるが、その速度は決して早くはなく、蒼ですら軽く回避することができる。

 さらに、上空への攻撃手段が無いようなので、二人は上から攻撃し放題である。


「よし……アームブレードV2を試す! アームブレード!!」


 これ以上の反撃が無さそうなので、新装備の実験台にはもってこいの相手だ。

 折りたたまれていたスペースチタニウムブレードがせり出し、金色の粒子がその刃を包む。

 粒子は刃の表面で超高速振動し、切れ味を格段に高める。


「うりゃあああああ!!」


 急降下し、敵の横合いから切りかかる蒼。

 それを察知した敵は反射的に食らいつきにかかるが、蒼の背の旋回ブースターが的確に動作し、噛みつきを素早く回避する。

 その急角度の回避動作により乱れた姿勢をブースターファンとウィングスラスターが素早く立て直し、今度は逆の側面から切りかかる。


「どりゃああ!!」

 

 身体を捻って回避行動をとりながら、尾で蒼を迎え撃つゼルロイドだが、刃は迫る尾を一閃のもとに切り落とした。


「グオオオオオオオオオオオ!!」


 痛みからか、それとも威嚇か、激しい雄たけびを上げ、再び蒼に食らいつかんと迫るゼルロイド。


「ライトニングミラージュ!!」


 蒼に意識が釘付けになった敵の尾の切断面に、無数の光の刃が殺到する。

 背後からの激しい乱撃にもんどりうって倒れるゼルロイド。


「新里! 今だ! ブレードイジェクト!」


 蒼の両腕の刃が背中の旋回ブースター、ウィングスラスターと共に射出され、詩織の両腕と背中に合体する。


挿絵(By みてみん)


「切り刻め!!」


「はい!!」


 詩織の背に合体した旋回ブースターが周囲のエネルギーを取り込み、横向きの噴流を吐き出す。

 その噴流が詩織の身体を激しく回転させ、両腕の刃が一層激しい輝きを放ち、詩織は竜巻のごとき風を纏い、敵に突進する。


「ライトニング・ブレードゲイル!! はああああああ!!」


 回転により破壊力を格段に増したアームブレードが敵の装甲を紙のように切り刻み、ミキサーに投げ込まれた鶏肉の如くゼルロイドは頭から切り刻まれていく。

 その旋風が過ぎ去った時、ゼルロイドの肉体はほんのひとかけらも残ることなく、漆黒の粒子と化して雲散していた。



「よしっ!!」


 詩織とウィングの合体技が決まり、歓喜の声を上げる蒼。そのまま詩織に駆け寄る。


「やったぞ新里! 完璧な必殺技だ!」


 しかし、詩織は片膝を付いたまま微動だにしない。

 新里……? と蒼が肩を叩くと、そのままパタリと倒れた。


「!! おい!!新里!大丈夫か!!」


 詩織を抱きかかえ、揺さぶり起こそうとする蒼。


「う…うぅ…」


 詩織は苦しそうな声を上げ、うっすらと目を開ける。そして


「ぜん゛ばい゛……ぎもじ…わるいでずううう……。 うぇっ…うぇええええええ!!」


「おわああああああああ!!」


 主の消えた沼に激しい水音と、悲鳴が響いた。


 どこからともなく「アハハハハ」と、誰かの笑い声が聞こえたが、それは風にかき消されていった。


設定解説のコーナー


・詩織・ブレードフォーム

 ブレードホークのアームブレードV2、旋回ブースター、ウィングスラスターが詩織に合体した状態。

 旋回ブースターとウィングスラスターにより、魔法少女としての身体能力をさらに超えるスピードと機動力を手に入れている。


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