表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/161

第24話:台湾編4 妖狐巫女の魔法少女 王紅琳!




「お! 意識が戻ったみたいだ!」


「う……うぁ……。はっ!? こ……これは!?」



 意識を取り戻した妖狐巫女の魔法少女が真っ先に目にしたのは、自分を包む半透明の膜のようなもの。

 そして、その向こうから覗くメガネの青年。



「やめろ! 私をどうする気だ! さては魔法少女を利用する悪の科学者だな!?」


「ふっふっふ……バレてしまっては仕方があるまい」


「ふっふっふ……君は私達の従順な下僕に……あ痛!!」


「こんな状況でふざけてんじゃねぇ!」


「ごめんなさい! この2人ちょっと悪ノリが過ぎるの!」



 ツインテールの少女が出てきたかと思うと、青年と一緒に張り倒され、今度は話が通じそうな長髪の少女が現れて謝罪してくる。

 訳が分からない状況ではあったが、以前遊んだゲームに出てきたような、変身ヒロインを捕らえ、悪堕ち洗脳調教してくる悪の組織の類ではなさそうだ。

 冷静になって状況を再確認してみると、敵に撃ちぬかれた両肩の傷が消え、へし折られた右足も元通りになっている。

 それらの情報を頭の中で整理した結果、妖狐巫女の魔法少女はある結論に行きついた。



「私を……助けてくれたのですか……?」


「そうよ。あなたが今入っているそれは、魔法少女用の緊急回復カプセルよ。治療が終わったら勝手に開くから、もう少し安静にしていてね」


「は……はい……」



 彼女を包んでいるのは、香子が言った通り、蒼が開発した新型携行型回復カプセルだ。

 車両での運搬を必要とした前モデルと異なり、手乗りサイズの圧縮ボンベに収納できるため、誰もが持ち運び、必要に応じて即座に展開、使用が出来るのがメリットだ。

 蒼のブレイブウィングV3に増設されたポッドキャリアには、これが常時8本格納されている。


 妖狐巫女の魔法少女が、そのカプセルによって与えられる温かく、心地のよい感覚に身を任せていると、「ピピピッ」という音が鳴り、彼女を包んでいたカプセル状の膜がパリンと割れた。

 同時に、彼女の変身が解除され、黒髪ショートの少女の姿が現れた。


「大丈夫かい? 君の戦いに少々助太刀させてもらったが」


「あ……貴方達は一体……?」



 彼女からの問いに、蒼は顎に手を置いて一瞬目を逸らし、詩織に視線を送った。

 詩織はしばし考えた後、「フッ……」と鼻を鳴らし、前に出る。

 そしてポーズを取り……「魔法少女戦た……」。



「日本から来た旅人だ。訳あって世界旅行中なのさ」


「驚かせてごめんなさい。私達も魔法少女なの。あなたのことは誰にも話さないから安心してね」



 響と香子が詩織たちの前に出て、少女の手を握り、起き上がらせた。

 少女は「日本の……魔法……少女?」と、呟きながら、4人の顔をまじまじと見つめる。

 そして、叫んだ。



「凄い!! 本物ですか!? 魔法少女の本場の人と会えるなんて光栄です!!!」



 目を輝かせながら、響と香子の手をガッチリと握り、上下に激しく振る少女。

 「ほ……本場って……」

 「そんな言われるとなんか照れちまうな……」

 と、頬を赤くする二人。



「やっぱり本場は違いますか!? リョジョクチョウキョウとか! センノウアクオチとか!」


「「は!?」」



 彼女の口から飛び出してきた下品な言葉に、今度は二人が目を丸くする。



「凄いんですよね!? 悪の組織とかのショクシュゼメとかニクカベとか!」



 少女は唖然として固まる二人から目を離し、今度は詩織に目を向ける。



「凄いんですか!? セキカとか! バイヨウカプセルとか! 皆さん経験されてるんですよね!?」


「い……いや……そういうのはゲームとかアダルト小説の話だと……」



 地味にそういう知識がある詩織ですら、大っぴらに口にする彼女の姿勢に引き気味だ。

 そして少女は蒼に目を向け、息を荒らげながら言った。



「やっぱり……ティーエスですか? メスオチなんですか?」




////////////////////




「そんな……日本の魔法少女のスケベゲームやスケベピクチャーがフィクションだったなんて……」



 地面を叩きながら、慟哭する妖狐巫女の魔法少女:王 紅琳(ワン ホンリン)

 日本の魔法少女に抱いていたロマンは完全に粉砕されたらしい。

 蒼に至っては「男子はティーエス変身するって最近やったゲームで見ました! 本当なんですよね!?」と、どこまでも食い下がられていた。

 無論、蒼にそんな能力はない。

 それを知った時の彼女の絶望顔たるや、カオスゼルロイド戦で足を折られた時よりも重度だった。



「な……なんか悪いね……? お詫びと言っちゃアレだけど、何か困ってることがあったら手助けさせてくれるかい? 俺達ちょっと暇な時間が出来ちゃってさ」



 蒼の問いかけにも、彼女の慟哭は止まらない。

 どうにも話が進まないので、「仕掛け」だけを施してホテルに帰ろうかと思った蒼が、その胸に手を当てた時、「居た!! 紅琳!!」という大声が、廃墟の路地に木魂した。


 蒼達が声の方に目を向けると、先ほど瓦礫の下から救出したあの少女が、息を切らして立っている。

 少女はハァハァと咳き込みながら、紅琳の元に歩いてくると、「また……犠牲者が出たの……!」と嗚咽交じりに言った。

 それを聞いた紅琳は、泣き叫ぶのを止め、涙で腫れた目を見開きながら蒼に詰め寄る。



「ティーエスはしなくて構いません! ちょっと私達に手を貸してくれませんか!?」



 蒼は一瞬面食らったが、すぐに笑顔になり、「ああ、もちろん」と言って手を差し出した。

 紅琳の表情がパッと明るくなり、蒼の差し出した手を握り返す。


 直後。


 蒼の胸から発された光線が、紅琳の胸を貫いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ