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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第三章

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第14話:悪夢再び




「なんでアタシに真っ先に連絡入れねぇんだ!」


「佐山さん落ち着いて! あなた最近戦い詰めだったじゃない!」



 SST指令室で宮野の胸倉を掴む響。

 御崎が彼女を止めようとしたが、その怪力にあっさりと振り払われてしまう。

 彼女の怒りの理由はもっともだ。

 氷華の身に起きたことも、SSTが展開していた作戦も、彼女の耳には入っていなかったのだから。


 ただ、SSTは魔法少女の負担軽減のため、何度か戦闘を行った魔法少女には、一定期間緊急要請を出さないようにしている。

 御崎の言う通り、ここのところ連続で戦闘に参加していた響に要請が飛ばないのは異常でも何でもないのだ。



「蒼にだったらすぐ連絡するんだろ……!」


「それは……」



 響の怒声に、御崎は目を背ける。

 その様子に、響は歯をギリッと鳴らした。

 魔法少女部部長代行として、蒼の居ない穴を埋められるよう努めてきた彼女にとっては、あまり直視したくない現実であった。


 無論、響もそれは理解している。

 単純な力の強さだけでは全く埋めることの出来ない、彼の存在の大きさは何度も痛感させられた。

 そして、今この瞬間も、心のどこかで蒼に助力を求めている自分に、彼女はどうしようもない無力感を覚えるのだ。


 蒼は人類の災厄を振り払う希望であり、替えの効かない切り札。

 自分はその元で戦う戦力……駒の一つに過ぎない……。

 そんな、心の中に灯った後ろ暗い感情を振り払うように首を振り、響は指令室のモニターに目を移した。



「チッ……! アタシは何すりゃいいんだ!? あのデカい奴叩きゃいいのか!?」



 彼女の指さす先のモニター映し出されているのは、大城市街の至る所に突き出た巨大なキヌガサタケの子実体。

 キヌガサタケ型カオスゼルロイドである。

 氷華が救出され、彼女の示した大城市郊外の丘陵地帯へAZOT調査小隊が派遣され、それからものの数時間としないうちに、この惨状は展開された。


 街には火の手が上がり、電気、水道、通信網が寸断され、被害の全容は把握しきれない状態だ。

 待機していたAZOT部隊、及びSST特殊車両全てを動員し、人命救助と事態の収拾に当たっているが、次々に張り巡らされる“網”が彼らの行動を妨げ、子実体を守るように出現したイノシシ型のカオスゼルロイドによって人的被害がかえって拡大している。


 無論、街の魔法少女達もAZOTと共に戦っている。

 しかし、その殆どが子実体からまき散らされるカオススモッグの胞子と、プラスエネルギーに反応して、檻のように連結、変形する網を前に、苦戦を強いられていた。


 香子に次ぐ大火力を誇る緋色の魔法少女や、パッション☆ビートのようにスモッグを払って攻撃できる者が、数本の子実体を焼き払う戦果を挙げたが、その程度では網の拡散は留まることを知らない。



「ゲホッ……ゲホッ……響さんには……この敵の本体を撃破していただきたいです……」


「本体……! その山にいる奴か!?」


「いえ。郊外の丘陵部には、朽ちかけた子実体群しかありませんでした。本体が動いたのか……。それとも元から街に潜んでいたのか……。現状そこまでは分かっていません……ゲホッ!!」



 ようやく響のネックハンギングから解放された宮野が、咳き込みながら大城市のデジタルマップをモニターの一つに表示した。

 そこに映る輝点は、今分かっている限りの子実体の発生個所だ。

 同時に表示される数値は、カオススモッグの濃度である。


 似た数値を線で結び、色分けしていくと、ある地点を中心に、放射線状に広がる等高線が浮かび上がってくる。



「大城市駅前……」


「はい。恐らくここに、この子実体群……つまりキノコの本体、菌糸体のゼルロイドが居るはずです……。それさえ叩くことが出来れば、恐らくこの事態は収拾……最悪でも子実体の拡散は止まるかと思います」


「分かった。アタシに任せな」



 響は不確実性にまみれた作戦を、即座に了承する。

 蒼の不在も、戦力の不足も致し方のないことだ。

今の自分に出来ることを、全力でやるという決意の元、彼女は魔法少女へと変身した。




////////////////




「チッ……。やっぱパワーもスピードも上がらねぇ……!」



 炎とカオススモッグに包まれた大城市の中心街を、ビークルモードのパワードディアトリマが駆ける。

 魔法少女を封じ込める網も、AZOTを苦戦させるイノシシ型カオスゼルロイドの群れも、パワードディアトリマと響の拳にかかれば易々とぶち破ることが出来る。

 立ち往生する彼、彼女らを驚愕させる光景だが、使い慣れた響には、そのパワーの減衰が手に取るように分かった。


 G-プラズマコアエネルギーによる代替の補助炉心を装着されてはいるものの、主燃料たる蒼のエネルギーを半分も抜かれてしまっては、普段通りのパワー、スピードには全く及ばない。



(頼みの綱は、香子のヤツだな……)



 響は自分の後ろを飛ぶ2機のサポートバードに目をやる。

 今万全なのはレイズイーグルだけだ。

 使い手は避難所に押し込んできたが、単体でも十分すぎる火力を持つレイズイーグルは、今回の作戦の要ともいえる存在である。



「……! 見えた!」



 子実体が森のように広がり、網が蜘蛛の巣の如く広げられたアーケードを突っ切った彼女の眼前に、異様な光景が現れた。

 駅前のロータリーだった場所には大穴が空き、底から覗く土中には、白い根のようなものが無数に走っている。

 ロータリーの路面はブヨブヨのゲルのようになっていて、地中にはその白い根が恐ろしいほどの量をもって広がっているのがよく分かった。



「これが菌糸体……!」



 想像を絶する禍々しい光景に、思わず立ちすくむ響。

 しかし、すぐに自分の使命を思い出すと、パワードディアトリマと合体し、鋼鉄の拳を地面に叩きつけた。

 響の剛力で地表が抉れ、菌糸体がブチブチと裂けていく。

 大穴に向かって穿たれた裂け目から、茶色い球体が覗いている。



「アレが本体か……!? レイズイーグル!!」



 響が本体を焼き払おうと、即座にレイズイーグルに指示を出す。

 これでこの大惨事は終わる……!

 響が安堵した次の瞬間、球体の上に黒いもやが現れたかと思うと、放たれた光芒を拡散し、その球体を守って見せた。



「な!?」


「久しぶりね。またボクの邪魔に来たの? アハハハハハ!!」



 ロータリーに響き渡る不快な笑い声。

 その声の主を視界にとらえた響は、思わず叫んだ。



「カライン!!」


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