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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第三章

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第9話:最後の戦い




「死ねやオラァーーー!!」


「スラッシュアロー!」


「ゼータ・スピンソー……!」


「ピュアハートレーザー!」



 次々に放たれる魔法少女達の大技。

 色とりどりの閃光が飛び交う度、カオスノイドが蒸発していく。



「なんで……?」



 その光景に蒼が唖然と呟いた。

 驚くのも当然だ。

 マイナスエネルギーに満たされたこの世界の大気は、魔法少女のコスチュームを含めてあらゆる能力を分解してしまう。

 変身の維持だけで精いっぱいで、あんな大技を連発など出来るはずが無いのだ。



『驚いたかい、異世界のわが子よ。君のテクノロジーを少しばかり拝借させてもらったよ』



 デバイスから得意げな博士の声が聞こえる。



「もしかして……マジックコンバータースーツのですか?」


『ああ! そうとも! 君から貰った情報の中で数少ない、有益な技術だったのでね』


「か……数少ない……」



 異世界の……とはいえ、父親から自分の技術をコケにされたのは蒼でもショックらしい。

 ただ、マジックコンバータースーツの技術を使い、マイナスエネルギーを遮断して尚且つ、魔法少女としての能力をフルに使用できるシステムを開発したと言われては、彼は最早何も言えない。

 親子の技術力は、埋めようがないほどに差が開いているようだ。



『もうじき施設の電源が満充電になる。その場は彼女達に任せて、君たちは戻りたまえ』


「そんなこと出来るわけないじゃないですか!」



 蒼の左腕を掴み、詩織がデバイスに吠えた。



「あんなデッカい敵が来てるのに、皆さんを置いて行くなんて出来ませんよ!!」



 魔法少女の能力をフルに使えるとはいえ、マイナスエネルギー満ちる大気は、彼女達の攻撃を減衰させる。

 事実、オーシャン・カオスノイドを相手に戦う魔法少女達は、削っても削っても次々に分裂する敵を相手に、苦しい消耗戦を強いられていた。



『では言い方を変えよう。早急に帰投するんだ。カオス骸体が予想よりも早くこの上空に迫っている。次元転送は到底間に合わないので、一旦これを防ぎ、再度エネルギーの充填を行いたい。力を貸してほしい』



 詩織と蒼が顔を見合わせた直後、大地が激しく揺れた。



『始まった……。恐らく今、カオス骸体は台湾のあたりを通過中だ。ここへの到達まで、あと2時間程度しかない。既に発電設備の一時停止を開始しているから、あと少しでカオスノイド達は去って行くだろう』


「いや……でも!」


「行ってください」



 博士の要求を改めて拒もうとした二人だが、目の前に舞い降りてきた桃色の魔法少女が、彼らに撤収を促す。



「私達はまだ大丈夫です。どうか……」



 増援に来た魔法少女達も、口々に蒼と詩織を説得する。

 確かに、押し寄せるカオスノイド達に対して、魔法少女達はまだ優勢だ。

 あと2時間以内に発電機が止まり、敵が去るのなら、絶望的ではない。



「先輩……」



 詩織が不安そうな目で蒼を見上げる。

 蒼は悩みに悩んだが、桃色の魔法少女が言った「私達の希望を守ってください!」という言葉に突き動かされ、決断を下した。



「了解しました。俺と新里で帰投します」



 「これでよかったか?」と詩織に聞くと、彼女は一瞬難しそうな顔をしたが、「私は先輩についていきますから」と、彼の決断を支持した。




////////////////




「蒼くん! 怪我はない!?」



 タカセベースに戻ると、香子が蒼の元へ駆け寄ってきた。

 どうやら、彼女だけは残っていたらしい。



「大丈夫だ。カオス骸体は!?」


『もう1時間半程度でこの上空に来る。猶予はない。すぐに君のG-プラズマエネルギーと、Xクリスタルエネルギーを可能な限り防御システムに注入してくれ』


「了解しました」



 ベースの防御システムと自身を繋ぎ、エネルギーを送り込む蒼。

 「私のも使ってください」と、詩織も蒼を介して、エネルギーを譲渡し始めた。

 カオスノイドに特効となる蒼のXクリスタルエネルギーや、G-プラズマエネルギーは、カオス骸体の攻撃をも極めて効率的に防御できるだろうと、AIタカセ博士は自身げに語る。


 カオス骸体の到達があと1時間以内に迫り、地鳴りが遠雷のように聞こえ始めた頃、二人のエネルギーはそのほぼ全てを防御システムへと譲渡し終えた。

 残っていたエネルギーの殆どを失った既に二人はフラフラだ。



『ありがとう。これなら何とかいけそうだ……。あとは個室で休憩を……と、言いたいところだが、済まない、シールドシステムの管制を手伝ってもらえないだろうか』


「はぁ……はぁ……いいですよ。任せてください」


「こんな時ですもんね……。私もお手伝いします」



 人使いが荒いAIだが、この非常事態ともなれば致し方ないことだ。

 二人は、香子に案内されるまま、防御システム管制室へと向かう。

 その途中、基地内のほぼすべての電気が消えた。



「大丈夫。シールドに全エネルギーを回すために、必要な電気以外は消しただけよ」



 香子はそう言いながら、二人を先導して歩いていく。

 僅かに残った充電式の避難誘導灯が、彼らの行く先をぼんやりと照らしていた。



「ここの奥が管制室よ」



 彼らが案内されたのは、暗闇に包まれた一室。

 蒼がデバイスのライトで照らしてみると、部屋の天井は妙に高く、中心へ向かって半球状のカーブを描いていた。



「えらく変わった作りしてる……な!?」



 突然、蒼の横にいた詩織が踵を返し、部屋の出入り口目がけて勢いよく走り出した。

 その行動の意図を蒼が推し量るよりも先に、「ガン!」という音が彼の背後で聞こえる。



「どうして……!? 何を考えてるんですか!?」



 蒼が振り向くと、固く閉ざされた扉に、詩織が縋りつきながら叫んでいた。

 扉に開いた丸い覗き窓から、香子がこちらをじっと覗いている。

 突然、部屋に電気が灯り、その全容を照らし出した。

 防御システム管制室と言われたその部屋は、入口以外何もない、球形の密室だったのだ。



『これより、二名の超次元転移を開始する』



 AIの機械音が、無機質な声で告げた。


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