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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第10話:青蒼! 腐れ縁タッグ 対 テナガゼルロイド 〈上〉




「さて、我らが魔法少女部も3人になったことだし、俺から一つ提案がある!」



 金曜日、早くも休日ムードで誰もがダラダラと過ごしている放課後。

 一人やる気満々で机を叩く蒼。



「はーい。なんでしょう」


「んー」



 肝心の魔法少女二人は方やソファーでゴロゴロしながら雑誌をパラパラと捲り、方やテーブルでチョコレート菓子をつついている。

 それもそのはず。詩織と蒼が謎の怪物に襲われた先々週、蒼がビネガロンゼルロイドに溶かされた先週に比べると今週はゼルロイドとの会敵もなく、街のゼルロイド被害も殆ど無いという極めて平和な週だったのだ。

 町の見回りも毎日何事もなく終わり、残るのは足の疲労感だけ。

 二人がダレるのも無理はない。



「せっかく3人になったんだし、データ整理とかネットの情報更新とかの活動と、街の平和を守る見回り活動を交代でやらないか?」



 想像以上に真っ当な提案に却って面食らう二人。



「俺と君らどっちか片方がコンビで街をぐるっと見回り、その間残った一人が前日の見回りで得た情報やゼルロイドの仕業と思われる事件や魔法少女出現情報をピックアップして、部のサイトに載せる。これなら君らのコンディションもキープしやすいし、俺はゼルロイドや魔法少女のデータ収集もできて一挙両得ってわけよ」



「えー……手分けして見回りした方が効率よくないですか?」



 詩織の言い分は最もである。大城市は意外と広い。

 それこそ栄えているエリアは小さいが、寂れた地域、森林部等の人が少ないエリアはその数倍にも及び、とても徒歩で放課後に見回りきるのは困難だ。



「いや、ゼルロイドの出現マップを作ってて思ったんだけど、あいつらって出現に周期があるんだよ」



 蒼も主張に見合ったデータを用意していた。



「ゼルロイドが出現して、それを俺達やこの街の他の魔法少女達が倒す。そうするとその場所に再び出現して、増殖し始めるまでに大体4~7日かかるみたいなんだよ」



 蒼の持つタブレットの画面に表示された大城市の地図。そこに点がポツポツと表示されている。



「例えばここ。亀崎工業跡地って言うんだけど、ここはゼルロイドがよく出現して、増殖する場所なんだよね。」



 詩織と蒼がサソリ型ゼルロイドと戦い、その数日後に香子と蒼がビネガロンゼルロイドと戦った場所、亀崎工業跡地。

 その周辺には大型ゼルロイドの出現を表す赤い点。

 小型、中型ゼルロイドの出現を表す黄色い点、そして魔法少女の出現を示す青い点が複数個点滅していた。


「俺と新里が戦った日の5日前に桃色の魔法少女の目撃情報が、その4日前にゼルロイドと思われる奇妙な蛇の目撃情報。そしてその1週間前には緑の魔法少女と大型虫型ゼルロイドの戦闘が撮影されてるんだ」



 データを時系列で並べて見せる蒼。

 ダラダラとしていた二人は姿勢こそそのままだが、蒼の持つタブレットの画面に見入っている。

 だらけてはいるが、ゼルロイド退治の専門家たる魔法少女である。

 ゼルロイドの情報には興味を示す性分らしい。



「そんで、サソリ型ゼルロイドの出現から6日後、ビネガロンゼルロイドが出現。そしてその4日後の昨日の夜、赤い魔法少女の目撃情報が同じ場所で出たわけ」


「魔法少女が来たってことは……。ゼルロイドが出現してたんでしょうね」


「この日数がゼルロイドの体を構築できるだけのエネルギーが溜まるまでのクールタイムってことなのかな? 空いた日数によって敵のサイズが大きくなってる?」



 二人はもうすっかり姿勢を直し、タブレットを真剣な表情で覗き込んでいる。



「他の場所でも大方こんな感じの出現周期なんだよ。もちろんノーマークの場所から突然出現することもあるけどね。」


「なるほど。この出現周期に合わせてこの箇所を見回りすれば最短移動距離で効果的にゼルロイドを叩けるってことね」



 香子が顎に指を置き、ふんふんと頷きながら呟く。



「見回りをするコンビがそうやって敵が大型化する前に倒して、情報整理する人が街の魔法少女やゼルロイドの情報を収集、蓄積して新しい出現場所を見つけ出す。確かに理にかなってますね……」



 当初は難色を示していた詩織も、実際のデータから見える理屈を説明されると頻りに頷いている。



「効率的に敵を倒すことも出来るし、出現周期を元に注意情報を掲載すれば街の安全にも繋がるだろ? だからしばらくこの方式やってみようよ」



 蒼が再び二人に提案する。



「アタシは賛成。それに……」



 データを真剣に見つめていた香子が蒼に向き直る。



「3人で手分けしてたら、この間みたくアンタ一人が敵に遭遇した時のリスクが大きいからね」



 蒼を指で突きながら意地悪く言ってみせる香子。

 その二人を友情フェチの詩織が瞳を輝かせながら見ていた。




■ ■ ■ ■ ■




「よし!行くか!」


「ゼルロイド見つけたり、危険な状況になったらすぐにメッセージ飛ばしてくださいね」



 蒼の提案通り、今日は香子と蒼が街のゼルロイド出現スポットを見回り、その間に詩織がニュースやSNSからゼルロイド、魔法少女の情報を集め、マップにデータを入力することとなった。



「大丈夫、大丈夫。 よっぽどヤバい敵でもない限りはアタシ一人で何とか出来るから」



 香子の言い方に少しムッとする蒼。



「お前そんなこと言ってるとヤバいの出たとき助けてやらねぇぞ」


「そんなに強いゼルロイドだったらアンタはアタシが危なくなる前にやられてるでしょ」


「はいはい!私たちが喧嘩してもしょうがないじゃないですか!行ってらっしゃい!」



 あわやまたしても大喧嘩かというところで詩織が止めに入り、二人はガミガミと言い合いながら出かけて行った。



■ ■ ■ ■ ■




「いる!……けど弱そうだな……」


「そうね……。弱そうというか美味しそうというか……」


 以前蒼と詩織が少女の姿をした謎の化け物と戦った廃ホテル。

 崩落し、崖下にめり込んだエントランス大広間跡地に巨大な手の長いエビがいた。

 ゼルロイドの見た目は基本的に捕食し、DNAを読み取った生物そっくりになる。

 このゼルロイドは見ての通りテナガエビを捕食し、その姿を得たのだろう。

 テナガエビはハサミの付いた前肢が大きく成長するユニークなエビで、食べて美味な他、そのユニークな腕と円な目が可愛らしいと飼育する愛好家も多い。

 大城市ではメジャーな食材で、スーパーの総菜コーナー等には必ず唐揚げが並ぶ。

 この街出身の二人には馴染み深い美味しいエビだ。



「ゼルロイドを食用にする技術ってないのかしらね……。メタモルフォーゼ!! アクエリアス!」


「あいつら死んだら粒子になって消えるから無理だろ。合体!! ブレイブウィング!」



 香子のエネルギー場が青い光を放ち、蒼、香子タッグの初戦闘が幕を開けた。



「シュトゥルム・シュヴェルト!!」



 青い光の剣が上空から放たれ、ゼルロイドに突き立つ…かに思えたが、ゼルロイドはエビ特有の高速キックバックでそれを軽やかに躱してみせる。



「アームブレード!おりゃあああああ!!」



 間髪入れずにブレイブウィングのブースターから青い粒子を噴射し、手首から伸びるエネルギー刀で切りかかる蒼。しかし、敵は横飛びで回避する。



「ちょっと!なに外してるのよ!」


「お前もだろ! ていうか……なんというか……妙な感じがするんだが……?」



 手足を振ってみたり、肩、腰をぐりぐりと動かしながら首を傾げる蒼。



「何ごちゃごちゃ言ってんの!来るわよ!」



 突如、ゼルロイドの右前肢が勢いよく伸び、香子を捕らえんと掴みかかってきた。



「キャッ!! っと!!」



 間一髪回避する香子、続けざまに左前肢が迫るが、それも身を捻り、回避する。



「そこだあああ!!」



 敵の意識が香子に向いている隙に、横合いから切りかかる蒼。

 青く輝く剣が敵の甲殻に一閃の光の線を描く。

 が、その甲殻には傷一つ入らない。

 蒼に気付いた敵の歩脚が彼に襲い掛かる。



「おっと…痛!!痛っ!!レーザーシールド!!」



 歩脚のハサミに肩を切られながら、反射的にシールドを張り、追撃を防ぐ。



「おかしい!やっぱりおかしい!」



 ブースターで後退し、敵と距離を取る蒼。香子も同じく宙を舞い、蒼のすぐ傍に着地する。



「アンタどうしたのよさっきから! アタシまで気が散るじゃない!!」



 捲し立てる香子。それに蒼は酷く困惑した様子で応えた。



「俺のスピードとブレードの切れ味が……異常に落ちてる……!」


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