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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第63話:薄紫の目覚め




「結局初日で中止になっちまったか~! 結局部の得点は稼げねぇし……不完全燃焼だぜ!」


「戦ったこと含めたら私達一番活躍したんですけどね~」


「まあ、それが変身ヒーローの宿命よ。この光景を守れただけでも良しとしなきゃ」



 魔法少女部の給水テントを片付けつつ、忙しそうに走り回る生徒たちと、校舎にデカデカとかかる「生徒会長おかえり」という垂れ幕を見つめる魔法少女達。

 様々な事情を考慮し、1日の終日休暇を挟んで、体育祭は中止となった。

 その代わり、文化祭の日程を2日増やし、体育祭の続きをする計画が上がっているそうだ。


 目撃者の中には、響や詩織の正体に勘付く者もいたらしいが、お馴染み、SSTの記憶喪失プログラムにて洩れなく忘却させられた。

「会長はウボームに捕まっていて、それを魔法少女が救出した」というフワッとした記憶してである。



「都合のいい記憶だけ残して消去って、地味に怖いわよね」


「普通に悪の組織の所業だよなぁ……」



 彼女たちの活動においてはこの上なく有用なものではあるのだが、香子と響はどうも腑に落ちないようだ。



「何言ってんすか! 『ぐへへへ……正体をバラされたくなければ脱げ……ぐへへ……』みたいな人に目つけられて、高瀬先輩のことを想いながらも香子先輩は上着に手をかけ……。みたいな事態になったら大変じゃないですか!」


「新里さんなんでニヤニヤしてんのよ……」


「時々お前のことが分からなくなるぜウチ……」



 詩織の妄想癖は危険な領域に到達しつつあるようだ。

 だがその時、一人それに似たシチュエーションに晒されそうになっている者がいるなどと、誰が想像しえただろうか。




////////////////////////




「先輩が……魔法少女……」



 詩織が男子中学生のような妄想でニヤニヤしている頃、不純な動機で街の裏道をコソコソと走る人影があった。

 その視線の先を、つい先日救出された魔法少女にして、光風高校の生徒会長、由梨花が歩いている。

 ビルの隙間や、廃屋等をしきりに覗き込み、何かを探している様子だ。


 詩織達がよくやっていた、ゼルロイドの見回りである。

 既にその意義は殆ど失われているのだが、監視システムが高度な運用に達する前に拉致されてしまった由梨花は、足で稼ぐ営業マンスタイルのゼルロイド対策を未だに実践していた。


 無論、マジフォンを始めとする魔法少女支援グッズは貸与されているのだが、街の魔法少女達がそれに慣れるまでに時間がかかったのと同じく、彼女もまた、SSTや支援システムを信じ切れずにいた。



「うーん……やっぱりマジフォンのレーダーと同じ……。凄いなぁ……高瀬君は……」



 少し寂しそうに呟く由梨花。

 そんな彼女の様子を、物陰から覗く生徒会の少女「カレン」。



(会長……。やっぱり魔法少女なんですか……?)



 その目にうかぶのは、悲しさとも、怒りともとれる色。

 誰よりも由梨花になつき、彼女不在の生徒会を支え続けていたカレンは、自分と共に救出されてなお、自分にそのことを黙っている由梨花に、歯がゆさを覚えていた。


 ところで、なぜカレンは魔法少女に関する記憶を持っているのか。

 答えは簡単。

 記憶措置を受けていないからである。


 灯台下暗しとはよく言ったもので、SSTの記憶措置班が“SST本部で治療を受けている彼女が記憶措置を受けていないはずがない”などという誤解をしてしまい、ただでさえ怪我をして眠っている彼女に無駄な負荷をかけるべきではないという判断から、確認作業を行わなかったのが原因だ。


 そうして無事、記憶を持ったまま自宅へ帰された彼女は、それ以降、由梨花のストーカーと化していた。

彼女が魔法少女である証拠をつかみ、それによって由梨花に交渉を仕掛けようとしていたのである。



「はぁ……みんなを手助けするなんて言ってしまったけど、私ができることなんてもう無いのかしら……」



 そう言って、大通りに戻ろうとする由梨花。

 彼女のあとをつけようと、こっそりと物陰を這い出そうとするカレン。

 その真横を、異形の人影が勢いよく駆け抜けた。




/////////////////////////////




「い……いやぁ……! 来ないで……来ないでええええ!!」



 紫のエネルギー場の中、腰を抜かしながら後ずさりする由梨花。

 その眼前には、異形のトカゲ人間。

 街に放たれたリザリオス斥候部隊の生き残りだ。

 街の影で泥水をすすり、生ごみを食らいながら、彼らはしぶとく生き延びていたのだ。



「ゲゲゲゲゲゲ……ナンダコイツ。マホウショウジョカトオモエバ、テンデヨワイゾ」


「コレハコウツゴウ。ホシヲアゲルコウキダ」



 そう言いながら、湾曲した剣を構え、由梨花に飛び掛かるリザリオス。

 前線基地を失い、本拠地も崩壊寸前となった今、もはや魔法少女と戦い、勝ち星を上げたところで、ほぼ無意味なのだが、彼らはそれを知るすべもない。



「いやあああああああ!!」



 由梨花は咄嗟に紫の長刀を出現させ、その斬撃を受け止めるが、徐々に力負けし、眼前に剣の切っ先が迫る。



「やだ! やだやだやだ!! 許して! 許してください!!」



 まるで幼子が駄々をこねるように泣き叫ぶ由梨花。

 長い監禁生活の間、リザリオスらに昼夜を問わず徹底的に虐げられたトラウマが、由梨花から闘志も、勇気も奪っていた。

 やがて、彼女の心とリンクするように、エネルギー場の輝きが薄れ、変身コスチュームが溶けていく。

 長刀も消滅し、振り下ろされた斬撃が彼女を撫で斬りにした。



「きゃあああああ!!」



 蹴り飛ばされ、力なく横たわる由梨花。

 彼女に迫るリザリオス。



「やだ……誰か! 誰か助けて……!」



 これまで見たこともない由梨花の姿を物陰から唖然と見つめていたカレンは、その悲鳴で我に返る。

 そして、由梨花の元へと駆け出していた。

 不思議と恐怖はなかった。

 

 憧れの会長が変身した魔法少女が、手も足もでないなのに。

 自分なんかが、勝てるはずもないのに。

 それでも、自分が行かなければと思ったのだ。

 敬愛する人を守るために……。


 彼女の眼前に、温かな光が灯った。

 咄嗟に彼女はそれを握りしめる。

 何がなにやら分からない。

 しかし、不思議とその言葉が口をついて出た。



「変身!!」




///////////////////////////




「え!? あの子は!」



 街に突然出現した由梨花のエネルギー場。

 蒼がそれを見落とすはずもなかった。

 部長会議を「ちょっと腹痛が……!」などというありふれた文句で抜け出すと、香子に代打を頼みつつ、エネルギー場の展開地点へ急行した。


 しかし、彼がそこへ向かっている最中、エネルギー場が急速に薄れ始めたのだ。

 焦る蒼だったが、今度はそれを覆うように、新たなエネルギー場が形成され始めた。

 

 色は、紫。

 いや、細かく言うならば薄紫。

 「藤色」というやつだろう。

 そして、そのエネルギーの中で戦っていたのは、あの時、蒼が由梨花と共に救出した少女だったのだ。

 その足元で横たわるのは、紫の魔法少女。


挿絵(By みてみん)



「戦闘開始!」



 蒼は腕のデバイスを操作し、戦闘支援AIを起動する。

 『Battle Start!』という音と共に、システムが起動し、翼のスリットが眩く光りだす。

 

 翼を閃かせ、彼女の元へ急降下していく蒼。

 藤色の魔法少女は、リザリオス相手に苦戦している様子だ。

 槍のような武器を振り回しているが、まるで当たらない。

 ガードもままならず、いいように斬られ、蹴られ、それでも尚、由梨花の前に立ち塞がっている。



「アームブレード!」

『Arm Blade Active』



 機械音共に蒼の腕から光の剣が伸びる。

 以前にも増してはっきりと形成された光の刀身で、リザリオス軍団へ急降下攻撃を仕掛けた。



「せやああああ!!」



 まず2体。

 返す刀で3体目の首を斬り飛ばす。



「テ……テキダ!」


「エナジーキャノン!」

『Energy Cannon Active』



 そう叫んだ4体目の上半身がエナジーキャノンのエネルギー光球で吹き飛んだ。

 逃げようとした5体目もまた、白いエネルギーに飲まれ、弾け飛んだ。

 蒼の到着から、わずか20秒にも満たない間の出来事であった。



『Battle Over』



 という機械音が鳴り、蒼の翼が発光を止めた。



「す……すごい……!」



 カレンの目には、光を纏って舞い降りた蒼の姿は、神仏の類に見えた。

 蒼は由梨花とカレンの元にゆっくりと歩み寄る。



「あ……あの……私……!」



 自分に何が起きたのかを離そうとしたカレンの目の前に、透明な何かが立ち塞がった。



「スキャン開始!!」



 自分が空から降ってきたカプセル状のものに閉じ込められていると気づいたときには、彼女は蒼の魔法少女スキャナーにかけられていた。

 例によって彼女もまた、猛烈な不快感に意識を吹き飛ばされてしまったのだった。


挿絵(By みてみん)


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