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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第60話:救出! 魔法少女部 対 肉塊キメラ




「あ……あぁ……助けて……誰か……助けて……。キャアアアアア!!」



 初めは肉の球体だったソレは、やがて6足歩行の動物のように変化し、さらに人の胴体のような器官が縦に伸び上がり、4つの腕を生やした異形となった。

 腕には鎌、鞭、ハサミ、そして人のような手が形成されつつある。

 出来の悪い粘土細工のようだ。

 その胴体部には少女の顔が浮かび上がり、助けを求める悲鳴を上げている。



「会長! 会長――――――!!」


「やめなさい! 早く避難を!」



 校庭に飛び出そうとする生徒会役員の少女を、御崎が必死で引き留めている。

 無論、その声は化け物と対峙する詩織、響の元にも届いていた。



「どうすんだよ! あの顔……確かに生徒会長だぜ……!?」


「ど……どうすんだよって言われましても! あっ! 先輩危ない!」



 突如として数十mまで伸長した怪物の腕鞭が響に迫る。

 詩織が気付き、一瞬にしてそれを切断した。

 切り落とされた触手がビタンビタンと跳ね、動かなくなる。



「キャアアア!! 痛い! 痛いいいい!!」



 化け物の胸に埋め込まれた生徒会長、小森由梨花が絶叫する。



「なっ!?」


「あの体全部……会長の神経と繋がってるぜ……! こんなん手出し出来ねえじゃねぇか!」


「……仕方ありません。あの顔が浮かび上がってる胴体以外全部切り落としましょう……!」



 詩織がライトニングダガーを構え、敵に切りかかろうとする。

 その肩を響が掴み、すんでのところで制止した。



「ちょちょちょちょ!! 待てや! 死んじまったらどうするんだよ!」


「じゃあどうするんですか! このままじゃ被害広がりますよ!」



 狂ったように校庭の中央で暴れまわる怪物の攻撃を回避しつつ、二人が言い争っている間にも、怪物はさらなる変態を始めた。

 ギチギチと音を立て、足が増える、腕が増える、その度に由梨花は悲鳴を上げる。



「ぐあぁ!!」



 次々襲い来る腕を前に、攻撃することも、弾き飛ばすこともできず、攻めあぐねていた響を腕の一本が捕らえた。

 そこ目がけて次々に触手が巻き付き、響の身体を逃がすまいとギチギチと締め上げていく。



「くっ……そぉ……!」



 響が全力を出せば、この程度容易に引きちぎれるだろう。

 だが、それをやれば会長が再び苦しむ。

 その事実が響から反撃の意志を奪っていた。



「先輩! はっ!? 何!? きゃあああ!!」



 響が捕らわれたのに気を取られた詩織を襲ったのは、先ほど彼女が切り落とした怪物の腕であった。

 両足に巻き付いたそれを切り払おうと振り上げられた詩織の両腕を、怪物が伸ばした新しい触手が捕らえる。


 乱雑に巻き付く触手たちが二人を一纏めに縛り上げ、肉の繭のような形状へ固められていく魔法少女たち。

 響と詩織が身じろぎし、触手の一本でも千切れようものなら「イヤアアアアア! 助けて! 助けてえええ!!」と悲鳴を上げる由梨花。



「くっそぉ!! どうすりゃいいんだよ! あいつらは……あいつらは何やってんだ!?」


「先輩……助けて……!」



 いよいよ2人が肉の中に飲み込まれそうになった時、人影が校庭に駆け込んできた。



「会長―――――!!」


「あっ! 待ちなさい!」



 御崎が引き留めていた生徒会役員の少女である。



「会長! 今……今助けます! やあ! やあ!!」



 少女は手に持ったハサミで、怪物の足をザッ!ザッ!と刺し始めた。

 しかし、か弱い女子高生の腕力では、その肉体に傷一つ付けることができない。



「カレン……ちゃん……」



 だが、怪物の動きには明らかな変化が見られた。

 振り乱していた手足を止め、顔のついた胴体を屈めて、カレンと呼ばれた少女を見おろし始めたのだ。



「会長! 会長! 私です……! 今……今助けますから!」


「カレンちゃん……」



 ゆっくりと身体を屈め、怪物の胴体部、すなわち会長の顔はカレンの眼前へ近づいた。

 その肉の一部から人の形が浮き出始め、カレンへ手を伸ばす。

 まるで会長が怪物の肉体から解放されつつあるかのようだ。


 人間の情が為した奇跡か……!

 響と詩織が唖然として見つめる中、カレンの手が、怪物の手と触れ合い、固く結ばれた。



「カレンちゃん……一緒に行こう?」



 一瞬だった。

 化け物の胴体から無数の触手が飛び出し、カレンを飲み込んだのだ。



「「キャアアアアアア!!」」



 その直後から、化け物の咆哮が二人の少女が奏でる悲鳴に変わる。

 同時に激しいマイナスエネルギーを伴った電流が、眼前で起きた惨劇に呆然とする響と詩織目がけて放たれた。



「ぐあああああ!!」


「きゃああああ!!」



 閃光が走り、響き渡る魔法少女二人の悲鳴。

 カレンの絶望が、苦痛が、怪物に強いマイナスエネルギーを生じさせたのである。

 脱出しようともがく響と詩織だが、魔法少女の力を分解され、身じろぎするのがやっとだ。



「エナジースライサー!!」



 その声と共に、周囲の大気が白い輝きを纏い、一陣の風が吹いた。



「「キャアアアアアア! 痛い! 痛い!!」」



 怪物の悲鳴。

 同時に止む電撃の閃き。



「すまん! 部室棟の出入り口が人で塞がれて出てこれなかった!」


「2人とも大丈夫!?」



 切断された肉繭を受け止めたのは、参戦が盛大に遅れていた遅れ蒼と香子であった。

 人ごみに部室棟を塞がれてしまったため、遮二無二魔法少女部部室の換気口を這い出てきたのである。



「おせーよ!」



 マイナスエネルギーから解放された響が、自力で肉繭を引き裂いて出てくる。

 詩織も「なんかデジャブですよこの感じ……」と呟きながら這い出してきた。



『皆さんご無事ですか! 見えましたよ! あの怪物に取り込まれたお二人の心の位置が!』



 皆のデバイスにティナの通信が入る。

 詩織と響が飛び出していった後、彼女は物陰から怪物の様子を伺い、読心能力を応用した能力を駆使して、会長の囚われた位置をサーチしていたのだ。



「心の位置?」



 蒼が悶絶する怪物と、デバイスを交互に見つめながら聞く。



『はい! アレは私が竜化したのと似た状況……。融合された獣の肉体が暴走している状態です。 体内にエネルギー体となった元の肉体が封じ込められているので、それを解放すれば、あのお二人を救出できます!』



「マジか! 良かった!」


「で……でも肉体削らなきゃ駄目だろ!? あいつら2人痛みで死んじまわねぇのか?」


『あ、そのことなんですけど、あの怪物の身体とお二人の魂はリンクしていないので、痛みとかは感じないはずですよ。ただの人質兼生体エネルギーとして閉じ込めてるだけですねアレは。すごく出来の悪い、急ごしらえな融合術です。無論、顔も声もダミーです』



 その言葉で響と詩織の表情が変わる。



「「キャアアアアアアア! 怖いいいいい! 助けてええええ!!」」



 怪物が悲鳴を上げながら突っ込んできた。

 無数の触手を伸ばし、魔法少女部を捕らえようとする。

 しかし、そのどれも彼女達に到達する前に、細切れになって地面へ散らばった。

 詩織のライトニングミラージュの乱れ斬撃である。


 「キャアアアアア!」と、怪物が絶叫してもだえ苦しみ始める。

 だが、今度は響がその巨体へ飛びかかった。



「よくも騙しやがったなあああああ!!!」



 怒りに任せて振り落ろされる拳。

 再び、拳、拳、拳、拳……。

 泣き叫ぶ怪物を気にも留めず、燃える拳の乱打を叩き込む。

 向かってくる触手はむしり取り、無表情で叫び声を上げる由梨花の顔を殴打し、飛び出た胴体や手足を次々に引きちぎる響。



『お二人が封じられているのは、体の中心部です! そのまま掘り進んでください!』



 ティナの指示に従い、ドタドタともがく怪物の身体を切り、抉り、焼き、千切り取っていく魔法少女部員たち。

 傍から見れば凶悪な集団リンチ現場である。

 幸運なことに、カレンが取り込まれたことに恐怖した観衆は、御崎達の指示のもと、体育館へ残らず避難していた。

 これが見られていたら、人々への無用なトラウマを招いていたに違いない。


 怪物が元の肉塊に戻った頃、肉の間から二つの光り輝く小さな球体が姿を現した。

 ビー玉サイズのそれは、弱々しい点滅を繰り返している。



「あとはコレを、復元術で元に戻します」



 竜のエネルギーを纏ったティナが飛んできた。

 彼女は二つのエネルギー球を地面に置くと、不思議な文様を描き始める。



「後はマナ結晶を……」



 そう言いながら左右を見回したティナの動きが固まる。



「どうしたの? 何か必要な機材とかある?」



 と、蒼に話しかけられ、振り返った彼女の顔は、真っ青に染まっていた。



「ここ……マナ結晶無いんでした……。アレが無いと再生できません……」


「「「「ええええええ!!」」」」



 悲鳴のような声を上げる魔法少女部一同。



「ヤバい! ヤバいっすよ!」


「ウチらガチで人殺しになっちまうぞオイ!」


「ノリノリで生身の人殺したって……うっ……!」



 瞬く間に魔法少女達の顔は真っ青だ。

 だが、蒼はまだ辛うじて冷静だった。



「マナ結晶ってどんな感じの物? 代替できそうなものはある?」



 何とか二人のエネルギーを再生しようと、ティナに必要な物の詳細を尋ねる。



「えっと……マナが大量に蓄えられた魔結晶です。 マナに似た特性があって、高エネルギーを秘めた物があれば代替できると思うんですけど……」



 二人の視線が、蒼の左腕のデバイスに向いた。



「「これだあああ!!」」



 大急ぎでデバイスをティナの魔法陣に接続する蒼。



「ものすごいエネルギー消耗するかもしれませんが、いいですか?」



 すぐにでもエネルギーの再生を行おうとしていたティナだが、ハッと我に返り、蒼の顔を見上げて尋ねた。

 マナ結晶の秘めるエネルギーが、蒼のエネルギー換算でどれだけの量になるのかが分からないのだ。



「全然いいよ」


「……分かりました。始めます」



 ケロッと言う蒼の様子に安堵の表情を浮かべ、ティナは魔法陣を起動した。


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