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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第二章:魔法少女 対 異次元軍ウボーム 編

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第57話:体育祭開幕!




「おい蒼! もっとしっかり掴んでろよ!」


「お前基準で考えんなよ! このパイプめっちゃ重たいじゃねぇか!」



 あれよあれよと時は過ぎ、早くも体育祭初日がやって来た。

 途中、多少のゴタゴタやゼルロイド襲来はあったが、無事、蒼達は魔法少女コスプレ給水所を設営するに至った。

 蒼達が設営中の給水屋台の周りには、似たようなテントが軒を連ねている。

 もはや給水所村の様相だ。



「先輩~……今年給水所やるとこ14部もあるみたいっすよ~……」


「これ絶対ロクな点にならないわ……」



 敵情視察……ではないが、隣近所の出しものテントを見て回っていた詩織と香子が戻ってきた。

 年々増えていた出店だが、今年は過去最多のエントリーである。

 逆に、グラウンド発表部門は着実にそのエントリー数を減らし、今年は吹奏楽部やダンス部、演劇部の3つだけだ。


 毎年の定番だった球技系の部は部活参加を取りやめ、柔剣道部は屋台村の片隅で給水所をやっている。

 ここ数年の異常な暑さもそうだが、ゼルロイドの跳梁により普段の練習さえままならない多くの部活動には、出しものの準備に割く時間など無いのだ。

 かく言う魔法少女部も、ゼルロイド戦にリソースを割かれた結果がコレである。


 蒼とSST、魔法少女部の尽力で、大城市の対ゼルロイド戦力は世界最高峰に達し、大型ゼルロイドの被害はゼロ、中型のそれもほぼゼロを維持し、小型ゼルロイドさえも早期に始末出来ている。

 その反面、これまでは感知できなかったようなサイズのゼルロイドにまで警報が動作するようになったため、結果として出現頻度が激増し、市民生活が今まで以上に緊張感あふれるものになってしまうという本末転倒な現状を招いている。

 これについては、目下SSTと市政が協議の上、改善を検討中だ。



「みんなー! 早く準備終わらせないと開会式もうすぐよー!」



 御崎がジャージ姿で走ってきた。

 やることが少ないとはいえ、生徒の引率は教員の役割。

 体育祭開催中は彼女も教師としての仕事が優先だ。



「うわ大変! ダラダラしてたらもう8時半じゃない! もう1時間無いわよ!」



 香子の指導の元、大急ぎでテントを組み上げる5人。

折り畳み机を並べ、飲料水タンクを並べれば、とりあえず給水所の形は完成である。

 後は女子組がコスプレをすれば万事OKだ。



「ところで、私達コスプレするのよね? 衣装がどこにもないけど……」



 香子が肝心なことに気付く。

 コスチュームは蒼が準備すると言っていたのだが、彼の持ち物にそれらしきものは無い。



「ああ、それはね、この腕時計デバイスあるだろ? これの“スーパーオミットモード”っていうのを選んで……」


「ちょちょちょちょい待て! そのモードって前使ったアレだろ? エネルギー場展開せずに変身維持する奴だろ!?」


「いや、あれはオミットモード。これはスーパーオミットモードだから、コスチュームだけ変わって身体能力はそのままで……」


「いや、そういう問題じゃないでしょ!?」


「私達まさか自分のコスプレするんすか!?」


「あれ? マズかった?」



 久々に牙をむいたサイコ眼鏡。

 青くなる3人を尻目に、「いや、誰も気づきやしないって、みんな魔法少女の顔知らないんだから。それにドリンクも赤、青、黄、緑で揃えちゃったし~」などと笑っていた。




/////////////////




「わっ! 詩織可愛いー!」


「香子凄い似合ってるよ! 本物みたい!」


「響大胆な恰好してるね……」


「ティナちゃん可愛いよぉ~! スリスリさせてぇ!」


 開会式を終えると、給水所村には人が押し掛ける。

 午前の競技が始まる前に、ドリンクを買っておくのが体育祭の鉄則だ。

 無論、その中には皆のクラスメイトも多数……。


 ドリンク大を買うと、その色に対応した魔法少女と記念写真が撮れるサービスがこの給水所の最大の売りなので、4人は引っ張りだこ。

 いい感じに映えるドリンクと、これまたいい感じに映える魔法少女たちが需要にガッチリとハマった形だ。

 リアルだの、まるで本物だのと言われるたびに、魔法少女たちはヒヤヒヤである。


 ただ、蒼の言う通り、彼女達が魔法少女だと気づく者はいないようで、本当にただのコスプレと認識されているらしい。

 時間が経つにつれ、彼女達も安堵するとともに段々とノッてきたのか、写真サービスで希望されたポーズを取ったり、道行く生徒や一般観覧客に声掛けをしはじめた。

 チャラそうな大学生くらいの男やら、息子の様子を見に来たおじさんなど、絵面的に危険な写真もいくつか発生したが、基本的には何の問題もなくイベントは進行していった。



「ほう、楽しそうじゃないか」



 聞き覚えのある声がしたかと思えば、天色の魔法少女こと小宮山氷華が立っていた。

 「ボクもいるよー!」

 「ウチもきたで!」

 と、その後ろからヒョコヒョコと顔を出す街の魔法少女達。



「氷華さん! お久しぶりです!」



 香子が駆け寄り、握手を交わす。

 助けられて以来、香子は氷華に強い憧れを抱いているようだ。

 香子が目指していた凛々しくて強い魔法少女を体現したような姿を見せられたのだから、



「写真撮りましょうよ写真! ドリンク代は私がサービスしますから!」


「あ……ああ。それともう一つ……緑の……青汁も貰えるかな? こっちは自分で出させてもらうよ」



 必要以上にキョロキョロしながら、青汁タンクを指さす氷華。

 その様子を不思議に思いつつも、ティナに青汁をオーダーする香子。

頼まれたティナは、「はーい! 皆さんに幸せが訪れますように、コスモス様のご加護をお祈りしながら注がせていただきます!」と言いつつ、聞いたこともないような言語を呟き、青汁を大ぶりなプラカップに注ぐ。



「はぁ……はぁぁ……!」



 その姿を、同じく妙な言葉を上げて見つめる氷華。



「お待たせしました。青の魔法少女のブルーハワイソーダです。氷華さん……?」


「あ! ああ! ありがとう!」



 香子が持って来た500ccコップから、ソーダをグイっと飲み干す氷華。

 「わあ! いい飲みっぷりです!」と喜ぶ香子。

 込み上げる炭酸を堪えつつ、香子との一枚を撮ると、今度はティナが運んできた青汁500ccコップを受け取り、再び一気に飲み干す氷華。



(氷華さん喉乾いてたのかな……? 変身した後氷の特性が発現してるから熱さに弱いとか……?)



 と、香子はまともな感覚で分析をするが、氷華は明らかにまともな様子ではなかった。

 ティナと撮影用書き割りの前に立つと、そっと彼女の肩に手を回し、「はぁぁぁぁ……!」と恍惚の表情を浮かべている。

 ティナがそれに応えるように尻尾をクルリと氷華の腰に回すと、彼女は「ひゃああああ!!」と奇声を上げた。



「えーっと……撮りますよ?」


「ひゃ……ひゃいぃ……」



 蒼が軽く引きながら撮った一枚には、ティナの恐怖に引きつった笑顔と、トロンと呆けた表情の氷華が映っていた。


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