1/7
1
十月のとある土曜日の夕方。
学校からの帰り道を、佐々木健太は白泉雫と肩を並べて歩いていた。
健太が言う。
「白泉が俺のことを待つ必要はなかったのに。生徒会で遅くなったのは俺だけなわけだしさ」
「そんなに待っていませんよ。私も弓道部の部室の掃除などをしていましたから。それに一人で帰るよりも佐々木くんと一緒に帰る方が楽しいですから」
「白泉がそう言うならいいけど」
雫は少し黙ってから言う。
「あの……生徒会の方はどうでしたか?」
「ま、いつもどうりだな。何でも出来る副会長さんが俺の仕事を片っ端からやってくれるから、俺はいてもいなくても同じようなものだ」
「そんなことは……。生徒会長に何かされたりしていませんか?」
「イリス会長?何かって何?」
「いじめられたりだとか……」
「いじめ?!ないない、あるわけないって。いじめなんてあの清廉潔白な会長が最も嫌うことだろう?イリス会長は要領の悪い俺なんかにも優しく接してくれるよ」
健太は照れた様子でぽりぽりと鼻をかく。
それを雫はじっと見つめて。
「そう、ですか。それならいいんです……」