勝ち気なアテナの愛逢軌 序
漆黒の闇の中、上も下も分からない。
それでも、地に足が付いている感覚だけは保っている。
「ミーニャ、あたしよ!
迎えに来たわよ!!」
ミーニャがレーヌへと覚醒し、あたし達はミーニャを取り戻す為に奔走すると、死をもってして冥界の奥地へ辿り着ける事を知った。
そうして、ここまで来ることが出来た。
あたしの叫びは、この冥府においてどこまで届いているのかは分からない。
響き渡るでもなく、生きていた頃の感じとは違い、口から言葉が出たようには感じなかった。
「やっと来たのよ!
さっさと出て来なさいミーニャ……いや、冥府王レーヌ!!」
姿を現さないことに若干の苛立ちを込め、全方位に向かって投げ掛ける。
すると、目の前の暗闇が揺らぎ初め、白い外套の様な物を纏った巨大な人影が姿を現した。
「ミーニャと呼んでも応じないわけね。
レーヌ!!」
「よくぞ今まで隠れていたな、アテナ。
貴女の方から姿を見せるとは、この上なく嬉しいぞ。
ようやく決心がついたのか?」
暗闇の中でも輝きを放つ漆黒の長髪をなびかせ、この冥府の女王にふさわしいかのように、威圧的に宙に漂っていた。
「決心?
ええ、変わらぬ決心がね!
ミーニャの人格、返してもらうわよ!!」
「ふんっ!
何度言ったら分かる。
あれは模擬人格だと。
そんなことよりも、無限地獄になってしまった別次元の世界を救いたいとは思わないのか?」
「あたしにしたら別次元なんて、人間界以外とさほど変わらないわ!
そんな大それたことよりも、目の前の大切な人と一緒に居たいのよ」
初めてレーヌが現れた時、死んだ後の理を聞かされた。
冥界に留まることになるのか、人間界に戻るのか、冥界神が造り出した別の次元にある人間界へ送られるのかを。
「本来であれば、我が神が造り出した世界こそが楽園になるはずだった。
魔者も魔法もない人間だけの世界。
それこそが、人間達が望んでいたことだろうに」
「そうでしょうね。
そうだったらと思うことだってあると思うわ。
けど、あたしには違うのよ。
色々な亜人や魔人と関わったことで、人間にはない魅力も苦悩も知った。
だから、あの世界が好きなのよ。
人間だけではなし得ないあの世界がね」
「聞き入っては貰えぬということか。
ダルクやボナパルトといった英雄すら駆逐されたあの世界、新たな英雄が必要だと言っているのに」
怒りと悲しみが入り交じったような険しい顔で話すと同時に、レーヌから強い圧力があたしに襲いかかる。
負けじと前のめりになると、あたしはあたしの想いを吐き出した。
「それはその人達が望み、なし得なかっただけでしょ!?
だからと言って、あたしに頼むなんて筋違いってもんよ!
あたしはミーニャの人格を取り戻す!
それだけが望みなの。
貴方が持つ世界への愛は、あたしの愛で超えてみせるわ!!」
「そうか……。
ならば、魂の輪廻も捨て去り消滅を受け入れるのだな。
なんと悲しいことだ。
……ならば!
やってみるがいい、冥府王レーヌに歯向かう者よ!!」
冥界へ持ち込んだ愛剣を鞘から抜く。
それは人間界では決して見ることの出来ない、白く輝く神秘術で創られた神なる剣。
あたしは眼前に構えると、凄まじい圧力の中をレーヌに向かい走り出した。
初めましての方、以前から読んで頂いている方、七海玲也と申します。
自身では二作目となる物語がスタート致しました。
今作もCROSS×OVERシリーズにはなりますが、ネコ耳とはまた別の物語になります。
ですので、ネコ耳を読んでいなくてもなんら問題はございませんし、読んでいる方は別の面白さがあるかも知れません。
この物語はクロスオーバー作品であり
『connected adventure storys』=繋がる冒険物語
と題して各地・各年代の英雄や主人公、果ては首謀者などが出てきます。
それは、世界に英雄や物語の主人公となる者は一人や二人ではなく、今読んでいる方々もそれぞれ人生の主人公なのだと思っています。
ですので、この物語に出る人物は重要な役割を担っていますし、それぞれに背景も決まっております。
この物語=アテナの物語では少しの出番ながらも、他作品では主人公であり、ストーリーや設定などもしっかりありますので、重要でないなら出す必要がないなどは一切ないのです。
出すからには意味がありますし、いわゆる伏線として回収は別作品になるというだけのことだと理解して頂けたらと思います。
後にイロモノキャラも出て来ますが彼は短編でも出て来ますし、プロローグタイトルの男性は……と実はしっかりと意味を持って登場していますので、その辺りも想像を膨らませつつ読んで頂けたら面白いかと思っております。
人生においてもゲーム一つとっても全て知ってしまったらつまらなくなる、全て説明したら面白味が無くなる、その思いで一人称であり他作品への伏線になっているのでどうか宜しくお願い致します。
もう少し「愛」について言及したかったのは心残りですが、世界観やテーマに沿った形で描けたのは良かったのかなと。
ただ単に面白いではなく、皆様の周りにも沢山の愛があるというのが伝わればとの思いです。
隣人愛や家族愛、思いやりなどそういった愛をアテナと共に感じて頂けていたら嬉しく思っております。
これで一応の完結ではありますが、伏線などを回収していないのはアテナの物語は終わっていないからでして、本当の終わりはまだまだ先で構想の半分も描けてないのが実状なのです。
とは言うものの、ネコ耳の方も実際に一割~二割しか描けてないので次回作はどうするか分からないのが本音です。。
大まかな構想はどちらも出来上がってはいるので、次回どうなるかもお楽しみということで。
長くなりましたが、後書きを含め読んで下さった方、ありがとうございました。
宜しければお友達などに薦めて頂けたら……というのは図々しいですが、楽しんで頂けたなら嬉しく思います。
では、またimaginationの世界でお逢い致しましょう!
七海玲也でした。




