scp短編集 scp-249 どこだかドア①
土曜日の午前9時、20代の会社員、竜一は小さなアパートの1室で目を覚ました。面倒な人間関係から
解放された休日。竜一は何をして過ごそうかと考えたが、予定が無い&出掛ける事が面倒くさい為、結局
部屋で1日過ごす事にした。ベッドから起き上がりジャムパンを食べながらテレビの電源を入れた。
しばらくボーッとテレビを見ているとインターホンが鳴り、ドアをノックする音が聞こえた。
「竜一君、いるー?」
このアパートの大家さんの声だ。なんだろう。はーい、と返事をして竜一はドアを開けた。大家さんが
立っていた。小柄で品のいいオバサンだ。若い頃は美人だったんだろう。
「どうしたんですか。」竜一は尋ねた。
「今暇かしら。ちょっとお願いしたいことがあるのよ。」頼み事か。断る理由も無いので、いいですよと答えた。
「で、何を手伝えばいいんです?」
「それがね、アパートの横にドアがあるのよ。」
「ドア?」それがどうしたんだ。
「白いドアなんだけどね、何のドアか分からないのよ。」え?なんだそりゃ。
「記憶に無いって…非常口とかじゃないんですか?」竜一が訊ねると大家さんは首を横に振った。
「てか、大家さんが思い出せないって…」
「んー、もう20年以上このアパートの管理してるけどね、何のドアかもいつからあるのかもハッキリ
しないのよ。今ドアのあるところでで草抜きしようとしたら、その白いドアが目に入ったの。その時は
何も感じなかったんだけど、ふとあんな扉あったかしらって思って。」
「…なんか不気味ですね。ドアは開けてないんですか?」
「それがね、鍵が掛かってるみたいで開かないの。」
「じゃあ鍵を見つけないと。」
「でもそのドア鍵穴が無いのよね。」
「え。」意味が分からない。
「とにかく、僕が開けてみましょう。」竜一と大家さんは例のドアへ向かった。