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プロローグ

 それは圧倒的な存在であった。

 禍々しいという言葉さえ生ぬるく感じるほどの黒いオーラ、眼前にいる敵の姿はそれに包まれて視界に入れることすらままならない。

 背中に冷たい汗が下たる、喉が緊張で渇き、その渇きを潤そうと唾液があふれだしてくる。

 強い、目の前の敵を倒すためにここまで旅を続けて来たが勝てる気がしない。

 それどころか、勝負にすらならないのでは?

 そんな不安な気持ちが堰を切って溢れ出してくる。

「不安になることはありません。これまでも、5人で強敵に立ち向かってきたはずです」 

 自分の隣に並び立つ、精悍な顔つきの戦士が落ち着いた口調で告げる。

 彼を見れば、顔には冷や汗が現れており、彼もまた恐怖と戦っているのであろう。

 それでも、俺を、仲間を信じてさきの言葉を紡ぎ、手にした名剣を力強く握っている。

 ああ、このパーティーを率いているはずの俺が何を弱気になっていたのだろうか?

 自然と、こちらも聖剣を握る右手に力がこもる。

「後方支援は任せて。敵の魔術なんて、貴方たちに当てさせなんかしない」

 俺の後ろで身の丈もある杖を構えた、無口な魔術師の少女が告げる。

 普段の彼女を考えれば、多すぎるといってもいいほどの言葉、それは不安の表れでもあり、俺たちへの宣言でもあるのだろう。 宣言したからには、俺らに掛かる補助魔法は途切れることはなく、後方から放たれる幾多もの攻撃魔法は敵を痛めつけるであろう。

 何とも頼もしい、男として女性にそこまで言われて、逃げ腰になっている場合ではありはしない。

「皆さんが傷ついたならば、すぐさま癒しますよ。だから、何も心配ありません」

 戦士の後ろに付いた僧侶である妙齢の女性も宣言する。

 普段のおっとりとした彼女の口調を考えれば、幾分か語調の強い言葉は覚悟の現れ。

 戦闘に参加せず、自分たちにまかせているのが心苦しいと言っていた彼女が出来る戦闘、それに全力そそぐということ。

 なれば、俺たちが負った傷などはたちどころに回復していってしまうであろう。

 ゆえに、俺は敵の攻撃を恐れることなく、ただ剣を振るうことが出来る。

「アタシのことも忘れないでよね。ザコどもになんて、キミの戦いの邪魔なんてさせないんだから」

 魔術師と僧侶の更に後方、俺たちが開けて入ってきた扉の外で警戒をしている長い耳と黒い肌を持った ダークエルフの少女が軽い口調で告げる。

 いつもと変わらぬ底抜けに明るい口調であるが、盗賊である彼女に任された仕事を考えれば不安も恐怖も含まれているのであろう。

 俺らが目の前の敵に専念するために、後方からやってくる多数の魔物達の牽制、それは明らかなまでの貧乏くじだ。

 それでも、彼女は進んで手を挙げ、笑って任せてみろと言って見せた。

 彼女が稼いでくれる時間、たった1秒だって、刹那だって無駄になんてして見せるものか。

 共に戦う仲間たちの言葉によって、気づけば恐怖や不安は消えうせていた。

 手にした聖剣の切っ先を目の前の存在に、魔王に突き付けて俺は口を開く。

「魔王、貴様の野望もここで終わりを迎える。貴様にも守りたい物や国があったやもしれない。それでも、俺は、俺たちは自分たちの守りたい物のために貴様を倒す!」

 こうして、俺たちの長い長い冒険を締めくくる、短い戦いの火ぶたが切って落とされた。

※注……このプロローグはイメージです。本編とは一切合財、万に一つも関係ない可能性がございます。

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