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昼休み

眠気を恐怖心で抑えつつ、授業を終えてようやく昼休みになった。

「死ぬかと思った・・・」

俺は弁当を食べながら、2人に言った。

「まあ、まあ。・・ドンマイとクジ運が悪かったな、ぐらいしかかける言葉がない・・」

旋理は購買で買ってきたパンを食べながらいった。

「いい教育になっていいんじゃない?」

ヒスイも購買で買ってきたサンドイッチを食べている。

「そうかもな・・・」

ここは天校の食堂である。生徒はここで昼食をとる規則になっているため、結構混んでいる。

ふと出入り口を見ると波月が出ていくところだった。

(どこ行くんだろ?)

なんとなく行き先が気になった。うん、なんとなくだよ。

決してストーカーとかじゃなくて、

隣の席のヤツだから親睦を深めようとしているだけだよ。

そんなふうに自分に言い訳をして、俺は「悪い。用事を思い出した。」というベタな理由を

旋理達にいって席を立ち、波月を追った。

そのときのヒスイがやけにニヤニヤしていたのはきっと気のせいだろう。

食堂を出ると、波月の後姿が見えたのでそれを追った。

(・・・ストーカーじゃないんだからね!)

追っていくとそこは図書館だった。俺にはまったく縁がない場所だった。理由は本を読んでいるとすぐ飽きてしまい、寝てしまうからだ。

でも波月が入っていったので俺も入る。

入ってみると本独特の紙の匂いが鼻腔をくすぐった。

中は結構広く、本棚にはぎっしりと本が詰まっていた。

波月を見ると本棚から小説を取り、席に座ってから開いていた。

俺もここにはたしか親睦を深めるために来たので、まず声をかけることからしようと思う。

(でも俺、ヒスイ以外女子とまともに話したことないんだよな・・・)

そんなことを思いながら適当に小説を取って波月に近づいた。

(さあ、俺。名前の通り勇気を出すんだ!!!)

心を決めて話しかけようとすると

「あぁ。神凪くんじゃない!」

と波月から話しかけてきた。

(俺の決意は!?)

そう思ったが返事を先にすることにした。

「ああ! 波月さん、こんにちは」

「こんにちは。ここで会うなんて偶然ね。」

(ぐうぜんじゃないだけど・・・)

「う、うん。ちょっと図書館がどんな感じか知りたくなったんで。」

「あのさ・・・」

波月が渋い顔する。

「はい?」

(まずい! つけてきたのがばれていたか?)

と警戒した。が、波月は

「敬語、やめてくれないかしら。クラスメイトで席も隣同士なんだから」

心配は不要だった。むしろ今回の目的らしきものをいきなり達成させた一言だった。

でも俺にはハードルが高すぎだった。いきなり「ため口でいいですよ」なんていわれても

女子とあまり接触したことのない俺には恥ずかしすぎた。

だがこれはチャンスだ。そう思ってさっき使い損ねた決意を使った。

「わ、わかった・・・。 あっあのさ、波月は何の本読んでるの?」

といいながら、波月の横に座った。

「えっ? ああ、私はこれ。」

といって表紙を見せてくれた。

ノンフィクション小説。現実に起きたことをもとにしたっていうやつだ。

「あの、波月・・・さん。」

「ああ。波月でいいわよ。」

またハードルがあがってしまった。だが今の俺は無敵だぜ!

「・・・じゃ、じゃあ。 波月はいつもそんな字ばっかりのやつ読んでるのか?」

「うん、そうかな。基本的に挿絵の入っているやつは読まないから・・・」

「なんで?」

「ああいうめっちゃうまい絵をみるとすんごい腹立つんだよね。マジで。

 なんであんなのかけんの?私と違って、って。」

波月はふてくされたような顔をした。

「もしかして、波月って・・・」

『絵下手なの?』と言おうとすると、弁慶の泣き所に激痛がはしった。

「うぐっ!?」

どうやら波月が蹴ったようだ。

やった犯人を見ると、静かに本を読んでいた。波月は絵が下手という俺の仮説は正しいようだ。

ほかにもなにかないかと思い、話しかけたが無視された。

よっぽど弱点を知られたのが悔しいんだろう。

(・・・・・・・・まあ、いいや。 俺も本を読もう。)

と読書に入った。

が、文字の羅列を見た瞬間一気に眠気が襲ってきた。

(このままだと眠気に支配される!)

結局、5秒という過去最短記録をたたき出して俺の読書は終わった。

そんな自分にあきれていると、携帯の着信音が鳴った。

その着信音は俺のではなく波月のものだった。

「誰からだ?」

無視されるのを承知で聞いてみた。

「中学の友達からよ、この子用事がないのにいつもメールしてくるのよね。」

「ああ、わかる。そういうメール中毒みたいな子、結構居るんだよね。」

・・・なぜかちゃんと返事をしてくれた。それになんか弾んだ感じの声だった。

波月は携帯を取り出して、返信しようとしていた。

(きっと、委員長を進んでやるようなマジメちゃんだし、

 メールも用件だけの短いメールなんだろうな・・・)

そんなことを思ってみていると、

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・・・・・・・・・

ものすごい勢いで波月はメールを打ち出した。

「うお!?」

びっくりしすぎて、声が出でしまった。

片手で打っているにもかかわらず、常人の5倍ぐらいのスピードでメールを作成している。なんか残像が見えそうだ。

さらに・・・・・

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・・・・・・・・・

長い!

携帯の画面はここから見えないが、かなりの長文だと予想される。

だってさっき5000文字以上打つと鳴る警告音が聞こえもん。

少し削って直しているらしいが、それもまた早い!

30秒ぐらいで音は止み、波月はわざわざ

「送信」

といってメールを送った。

・・・あまりの出来事に、頭がついていかない。

かろうじて1つの質問がうかんだ。

「もしかして・・・波月って・・・」

その問いに波月が答える。

「そう、私、メール中毒なの。」

「えーーーーーー!!!」

めっちゃ大声を出してしまった。

「ちょ、図書館で大きな声を出さない!」

「あ、ああ。ゴメン・・・ あまりにイメージと違うものでつい・・・」

だって、委員長がメール中毒だなんて誰が思うだろう。 おとなしそうな見た目なのに・・・

でもなんか

「おもしろいな・・・」

「神凪くん。なんか失礼なこと考えてるでしょ。あと最後の、口に出てる。」

「えっ? あっ、こっ、これはべつに波月が面白いヤツだなー、だなんて

 思ってたわけでは、って激痛!?」

アタマがクラクラするぐらい強烈なチョップを脳天に食らった。

「なーに変なこといってんだ、オメー」

その声は波月ではなくヒスイのものだった。

「あら、ヒスイさん、こんにちは。あとありがとう。」

「いえいえ、波月さん。こちらこそウチのミジンコが失礼なことを・・・」

二人はなんか頭を下げあっている。

ヒスイはさりげなく俺のことミジンコ扱いしてるし・・・

「というか!ヒスイなんでここに!?」

「オメーが波月さんが出て行くところを見てから、『俺、用事あるから』

 なんていって出ていったら、ストーカーすると思ったんだよ

 ほら、お前変態だから。」

ヒスイは呆れ顔でいった。

「神凪くんって・・・ストーカーで変態なんだ・・・」

見ると波月がつぶやいていた。

「まて、まて。俺はそんなヤツじゃない!」

「そうか、俺はミジンコだと。」

「ヒスイ、お前は何でそこまで俺をミジンコにしたがる?」

「えっ、なんとなく勇気のオーラがミジンコに似てるから。」

ヒスイの俺をミジンコ扱いする動機がわかったが、

波月がまだ「神凪くんって・・・・・・きもっ。」とつぶやいていたので

その誤解を解くことにした。

そして、それが終わるころには、昼休みが終わっていた。


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