表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

忘却の街

もうすでに「これは詩なのか?」と疑問が残ります。もろもろと若干後悔と投稿して良いのかと不安が……。

わたしはとある街に辿りついた。

その街は「忘却の街」。

「今日」という一日だけが存在し、次の日も次の日も「今日」という一日しか存在しない街。


「今日」の夜明けとともにすべて始まり、「今日」の終わりとともにすべてが消えた。

同じ繰り返し繰り返し。

何をしても何が起こっても、始まりが一緒だから結末もみな同じだった。

この街の誰もが終わった「今日」が渇かないうちに、また前の「今日」と同じことを繰り返しているのだ。



「今日」、街のどこかで戦争が終わった。

お互いに戦いつくして、もう何も残らなくなってしまったからだ。

みんな傷ついた。みんな苦しんで悲しんでいた。

荒れ果てたこの街に、幸せな人なんて誰もいなかった。


ガレキの山、ところどころ火が燻ぶる街で誰かが言った。

彼は誰かの死体を胸に抱き、燃えるような夕日を背にして言った。

「なんと愚かなことをわたし達はしていたのか」

彼の言葉にみんなが立ち上がり、その言葉にみんなが賛同の声をあげた。

「そうだ、なんと馬鹿なことを……っ」

「あんなことの為に、どれだけの尊い命が失われたのか」

消えてしまった命にみんなが嘆いた。

その戦争を街のみんなが悔いて、誰もが心を一つに思った。

『もう二度と、このような悲惨なことが起きてはならない』

そして街の人々は、過ちを二度と起こさない証として、平和のモニュメントを中心に建てた。

さっきまでいがみ合い憎しみ合っていた人々が手を取り合い、みんなが協力して。

出来上がったモニュメントの前で人々は、「この街が永遠に平和であるように」と祈った。


だが次の「今日」、また戦争が始まった。


建てなおした家は砲弾で崩れ、整備しなおした石畳は戦車が通ることで剥がれた。

親を探して子供は泣き、女は犯され、男は殺された。

人々はいがみ合い憎しみ合った。

みんなで建てた平和のモニュメントも粉々に壊れてしまった。

でも人々は気にしない。

家が燃え人が死に平和がバラバラに崩れ去っても。

人々は「今日」の日暮れまで戦争を止めないのだ。



別のどこかの街のタヌキが笑う。

「あいつらはなんて忘れっぽいのだ。毎日毎日同じことしかしないぞ!」


また別の街のクマが笑う。

「彼らは過去を振り返って悔やむ。でもまた同じことを繰り返すなんて、、、彼らの行為に意味はあるのか?」


そしてまた別の街のカラスが笑った。

「いいや意味なんて無いさ!アレは馬鹿だから、同じことしか知らないのだろうよ」



わたしは街の人々に「どうして同じことを繰り返すのか?」と聞いた。

でも彼らはみな、わたしが何を言っているのか分らないと首をかしげた。

「同じこと?何を言っているんだ。私達はいつも前に進み、いつも私達には幸せな将来みらいがある!」

と、とても満足そうに胸をはった。

そしてわたしはその街から去った。



あの街は忘却の街。

目の前のことしか知らない人々が住む、同じ「今日」が続く街。

“先へ、先へ”と急ぐあまりに過去のことをいつの間にか忘れていく。

だからきっと同じことを繰り返しているんだ。

そこには意味なんて何もないのさ。


街を「忘却の街」と誰もが呼んだ。

でもこの街は本当は、「人間」という街だった。




(ああ。今日も平和の証はは壊されて、また新しく建てられていく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ