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旅人
初めての投稿でものすごい緊張しています。
以前から書き溜めていたものを放出したいと思います。だいぶ自己満足なものがありますが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。
彼は旅人であった。
どこから来てどこへ行くのか、彼自身すら知らなかった。
彼は旅をする。
どこへ行くために旅をするのでも、なにかをするために旅をしている訳でもない。
彼は旅をするために旅していた。
彼はいつ生まれ、彼はいつから旅を始めたのか。
そして彼はいつ死に、いつ彼の旅は終わるのか。
旅の目的は?行く先は?
その何ひとつ、彼は知らない。
彼は旅をする。
帰る場所を知らぬ彼は行くあてもなく、道しるべのない彼は闇雲に進むしかない。
どこへたどり着くのか誰に出逢うのか、知らない彼はただ旅を続ける。
彼は幾人の人と出逢い、幾何の土地へ行き、幾度の時を歩くのか。
だが例えどれ程のことに出逢っても、彼に立ち止まる地はどこにもないのだ。
人に出逢い土地に出逢い、例えその場に愛着が湧こうとも。
彼は旅人であるから、旅を続けていくのだ。