表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われる勇者 ~報われない英雄譚~  作者: 善屋
第4章 清廉の騎士団

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/42

第4章 清廉の騎士団②

第4章 清廉の騎士団②


Aランク冒険者たちの帰還報告から、半日も経たないうちだった。


清廉の騎士団の屋敷に、正式な使者が訪れた。


封蝋付きの書状。

冒険者ギルド名義。


それを受け取った瞬間、

屋敷の空気が、目に見えて引き締まった。


「……来ましたか」


シエラは、短くそう呟いた。


本件に関し、緊急会議が開かれた。


会議室に集められたのは、清廉の騎士団の上位層のみ。

副団長、分隊長、戦術参謀。


数時間後。

全団員が、訓練所に集められた。


発言権はない。

ただ、聞くだけ。


副団長のマルクスが前に立つ。

細めた目のまま、ひらりと手を振った。


「ほな、静かにしてなー」


どこか気の抜けた声。

だが、その一言で場が整う。


「さっき帰ってきた遠征隊からの情報や」

「順番に話すで」


一拍置いて、ゆっくり続けた。


「観測対象は――単体の魔物や」


一瞬、空気が緩む。


「……ま、そう思うわな」

「俺も報告書見たとき、“楽そうやん”って思たし」


くく、と喉を鳴らす。


「群れ行動は確認されてへん」

「せやけどな、接敵して数分で前線は崩壊や」


空気が、はっきりと変わる。


マルクスは軽く咳払いをした。


「原因は、はっきりしとる」


細い目が、わずかに開く。


「こいつな」

「近づいた瞬間から、"人の感覚"を狂わせよる」


団員たちの視線が集まる。


「足場が不安定に感じる」

「距離感がズレる」

「さっきまで見えとった仲間を、急に見失う」


「派手な魔法やない」

「せやけど、確実に効いてくる」


肩をすくめる。


「陣形組もうとしても、足並みが合わん」

「合図出しても、噛み合わん」

「気ぃ付いた時には――もうバラバラや」


一拍。


「ほんで一番アカンのがな」


声が、少しだけ低くなる。


「逃げよう思た時には、進む方向が分からん」


ざわ、と空気が揺れた。


「前に進んでるつもりで、同じ場所を回っとる」

「横に避けたはずが、敵に近づいとる」


「せやからや」


指を鳴らす。


「要するに――」

「戦いが始まった時点で、もう相手の土俵や」

「“まともに戦わせてくれへん相手”っちゅうことや」


「遠征隊は帰還魔法で、なんとか逃げ切れた」

「せやけど、次も同じ手が使える保証はない」


沈黙。


「結論な」


マルクスは、わずかに真顔になる。


「こいつは放っとかれへん」

「単体やけど、複数騎士隊分の動きを丸ごと潰す能力を持っとる」


「……ほんま、性格悪い魔物やで」


一呼吸。


「ギルドの判断は一つや」


「本件は、魔物討伐依頼」

「難易度は――Sランク相当や」


細い目の奥が、鋭くなる。


「冗談ちゃうで」

「気合とか根性で、どうにかなる相手やない」


「生きて帰るつもりのある奴だけ――」

「この先の話、ちゃんと聞いとき」


話し手が、シエラに変わる。


「詳細な生態情報は、まだ不足しています」


静かだが、芯の通った声。


「敵は、超大型の魔族」

「制圧能力に加え、純粋な膂力も確認されています」


団員たちの表情が引き締まる。


「討伐依頼は、正式に清廉の騎士団への指名」

「期限はありませんが……放置できる状況ではありません」


全員の視線が、自然と彼女へ向く。


「出発は――三日後とします」


シエラは、まっすぐ前を見る。


「私が、誰一人欠けさせません」


そして、はっきりと言い切った。


「皆、私についてきなさい」


『『 はっ! 』』


シエラの言葉に呼応するように、

騎士団の空気が、一つに束ねられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ