表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われる勇者 ~報われない英雄譚~  作者: 善屋
第3章 王都ルミナス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/43

第3章 王都⑤

紅角の地走竜(クリムゾン・ホーン)は、完全に沈黙していた。


アガトは剣を収め、紅角の地走竜に近づく。

硬質な鱗。焼け焦げた角。

それらを確かめ、討伐証明として必要な素材を丁寧に採取していった。


(……これで、証明にはなるはずだ)


そう信じていた。



王都へ戻る頃には、空はすっかり夕暮れに染まっていた。


初めて見る王都の喧騒も、

石造りの高い建物も、

行き交う人々の多さも――


今は、どこか遠く感じられる。


ギルドの扉を押し開くと、

中の視線が一斉にこちらへ向いた。


――また、だ。


理由は分からない。

だが、慣れ始めている自分がいることが、少し怖かった。


「……討伐報告です」


アガトは受付カウンターに素材を並べた。


紅角の地走竜の角。

鱗。

そして、血の痕が残る討伐部位。


受付嬢は一瞬、それらを見て目を細めた。


「……少し、お待ちください」


素材を持って奥へ下がる。

周囲から、ひそひそと声が漏れる。


「嘘だろ……ソロで、あれを?」

「どうせ、横取りじゃないか?」

「偽装だろ」


アガトは黙って立っていた。


しばらくして、受付嬢が戻ってくる。

その表情は、硬かった。


「確認しました」


そして、はっきりと告げる。


「――ですが、この討伐は認められません」


「……え?」


「Aランク相当の魔物を、Eランク冒険者が単独討伐。

 証言者なし。

 信頼性に欠けます」


素材に、もう一度視線が落とされる。


「偽装、もしくは不正取得と判断します」


言葉が、胸に突き刺さった。


「そんな……俺は……」


言いかけて、止まる。


説明しても、

信じてもらえない。


それは、もう何度も経験してきたことだった。


「……他に証明は?」


「ありません……」


受付嬢は、小さく息を吐いた。


「では――」


その時。


「――その討伐、偽装ではありませんよ。」


澄んだ声が、ギルド内に通る。


人垣の向こうから、白を基調とした装束の女性が歩み出てきた。

清潔で、無駄のない佇まい。

その存在だけで、場の空気が僅かに整う。


受付が言葉を失い、周囲がざわめく。


女性はアガトを一度だけ見て、静かに告げた。


「――私が保証します」


それが、

清廉の騎士団・Sランク冒険者:序列3位、聖女シエラ

との、最初の出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ