第3章 王都③
ギルドの奥から戻ってきた受付の女性は、
書類を机に置くと、事務的に告げた。
「依頼完了。近隣住民の証言により、
荒野の魔物の鎮圧が確認され、討伐済みです」
その言葉に、周囲が一瞬ざわつく。
「……一人で?」
「何か裏があるんだろ?」
ひそひそとした声。
アガトは、黙って立っていた。
「報酬はこちらです」
差し出されたのは、
決して少なくない金額だった。
「ありがとうございます」
素直に頭を下げる。
だが――
それで話は終わらなかった。
「ただし」
受付は、視線を上げずに続ける。
「あなたの件については、
功績として正式に認めるには不十分
という判断が出ています」
「……不十分、ですか?」
思わず聞き返す。
「はい」
冷たい声。
「初心者である以上、
“偶然”や“偽装”の可能性も否定できません」
周囲から、納得したような頷きが起こる。
「次に――」
受付は一枚のクエストを取り出した。
「Aランク相当の依頼です。
これを達成できれば、
あなたの功績を正式に記録します」
「A……?」
アガトは言葉を失う。
「条件は以上です」
顔を上げた受付の目には、
疑いと、わずかな苛立ちが混じっていた。
「それができないなら、
今後も“保留”扱いになります」
(……ずいぶん、厳しいな)
そう思ったが、
抗議の言葉は出なかった。
「分かりました」
そう答えると、
受付はそれ以上何も言わず、
次の冒険者を呼んだ。
まるで――
最初から、そこにいなかったかのように。
(……信用か)
(印象として見た目が重要って聞くしな…)
ギルドを出たアガトは、
王都の大通りを歩きながら考えていた。
「山では、
身なりに気を使っていなかったし…。」
まずは――
準備を整えることにした。
武具店。
「……剣を見せてほしい」
そう言うと、
店主は一瞬アガトを見て、
無言で棚を指さした。
説明はない。
おすすめもない。
(……気のせい、か)
防具屋でも同じだった。
「これ、サイズ合いますか?」
「……たぶん」
短い返事。
値段は正当。
だが、そこに会話はなかった。
宿屋では、
鍵を置かれるだけ。
「食事は?」
「……裏」
それだけ。
誰も怒鳴らない。
誰も罵らない。
ただ――
距離を置かれる。
(……王都って、こんな場所なのか)
新しい装備を身につけ、
鏡に映る自分を見る。
少しは冒険者らしくなった。
それでも、胸の奥は冷えたままだった。
「……まあ、いいか」
小さく呟く。
あのような態度をとられる理由が分からなくても、
やることは変わらない。
英雄になりたい。
「見返りは求めないか…」
湿っぽい感情を振り払うように一歩踏み出し、アガトは前を向いた。
「次は……Aランク、頑張ろう」
アガトは、
再びギルドの方向を見た。




