かってにココロの師
いちばん好き……と断言していいのか、将来またかわることもあるのかわかりませんが、現時点で、当方がいちばん好きな童話作家は佐藤さとるさんです。
そもそも当方が童話のようなものを書きはじめるきっかけになった作家さんでもあり、仰げば尊しココロの師といっても過言ではありません(もちろん一面識もありませんが)。
さいわい、文庫版の作品集なども(版元品切れですが)充実していたため、いま現在入手可能な作品のかなりの部分は、読んだのではないか、と思います。
佐藤さとるさんの何がよいといって、児童文学だからといって、子どものために~だとか、思想だとか、教訓だとか、そういうおしつけがましさがない。すくなくとも当方はあまり感じなかった、というところでしょうか。
純粋に「物語」そのものの、たのしさ、おもしろさ、に特化している――ような気がしたわけです。
もちろん、たんに当方の読解力が低すぎて誤解・誤読してるだけという可能性もありますが……
ただ、この場合にかぎっていえば、たんなる一方的なカンチガイ、思い込みかというと、かならずしもそういうわけではないのではないか?などと、おそるおそる自負してみたい気もしないではありません。
というのも、佐藤さとるさんご本人の弁として、以下のような文章が残されているからです。
――――(引用ここから)――――
近ごろ、道徳講話まがいのうすっぺらな教訓童話は、さすがに影をひそめているが、それと同程度のうすっぺらな公害童話や平和童話やイデオロギー少年小説がはびこっているように見える。文学だから何を書いたっていいが、文学どころか、文献的価値もないようなものは、どう考えたっていただけない。
(佐藤さとる「ファンタジーの世界――6児童文学について」(講談社『佐藤さとるファンタジー全集15』所収)より)
――――(引用ここまで)――――
ブンケンテキカチ、というのもなかなかすごいものいいですが……
イデオロギー小説ってどんなんだ、などと、深くツッコみだすともめそうですが……
(たとえばアレなんか~というのは、いくつか思い浮かばないこともありませんが、佐藤さんご自身がどういう作品を念頭においてらしゃったかは、当方ごときには、永遠の謎ですね。それとも、児童文学界隈では、わりと知られていたりするのかしら?)
ともあれ、そうした教訓童話やイデオロギー小説、環境童話や反戦童話などにも背を向けて、では、佐藤さん自身はどこへ向かったのか。
別のエッセイでは、ご自身の子ども時代の読書傾向の回想として、「おもしろさ」が唯一の基準だったともおっしゃっている氏のことですから、書くがわにまわったときにも、やはり、おのずから……と、推測してみたくもなるわけです。
だとしたら……
やは当方ごとき一寸のムシケラであっても、仰げば尊いココロの師のひそみにくらいはならいたい。実力さておき五分のオココロザシとしては、そういう「文献的価値もないようなもの」ではなく、佐藤童話に感じた、物語そのもののおもしろさ、のようなものを、目指したくはあるわけです。
言うは易し……ですけどね。
それに、そもそも、「物語そのもののおもしろさ」って何でしょうね?
そこからして議論百出どうにもこうにもなわけですが……
ただ、先述のように、佐藤さとるさんご自身が、子どものころに読んだ本の「おもしろさ」について語ってらっしゃるエッセイなども(数は少ないかもしれませんが)あるにはあるので……範囲のひろすぎる一般論ではなく、ピンポイントに佐藤さん的なおもしろさについてなら、手がかりのひとつやふたつは、見つけることができるのではないかなーなどとも、思わないではないのです。
思ったからといって、深く語れるわけでもありませんが(汗




