フェイク
掲載日:2025/10/17
強くてやさしい男になりたかった。
「今夜もきてくれますか?」
仕事が終わる間際に、携帯の画面が光る。
(断らなければいけない)
私の頭の中の声が体の中で空しく響いていたが、
華やかな衣装に包まれた可憐な女に会うために、闇が溜まっている夜の街に降りていった。
甘い光に誘われる夜光虫のように。迎えるはずだった明日は幻に消えていく。
私の中にある理想や正義ですら、私の手足を絡めとる蜘蛛の巣となっている。
甘くて酔いしれてしまうこの『見栄』こそが毒だということに、
朝起きたときに女の横でうっすらと気づいていた。




